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40、イーシア湖 〜 整理整頓

「どんだけ飲む気だよ〜」


 僕はいま、イーシア湖で、せっせとリュックに水やりをしている。

 ナタリーさんに連れられて、風使いの妖精さんのタクシーで来たんだけど、ナタリーさんにはここで待っててと言われていた。



 もう充分だろうと思ってから、さらに100回水汲みをした。


 でも1回で1リットルくらいだとすると、ポーションって100ミリくらいだから…1回の水汲みでポーション10本しかできないのかな?なんて考えると、100回でも1,000本…。ポーション1,000本なんてすぐにできてしまうよね、ということは……と、結局なかなか水汲みをやめられない。


 あれこれ考えながらも、ずいぶん長い間、水汲みをしている気がする。


(リュックくん、もういいよって言ってよ)


 もちろん、僕は、リュックが喋らないことを知っている。はぁ…腹筋が限界…。あ!薬草も摘まなきゃ!


 僕は、水汲みをやめ、立ち上がって、う〜んっと、伸びをした。


 湖岸から少し離れ、僕は薬草摘みを始めた。

 こっちの方が僕は楽しい。ぷちぷちと摘んではリュックに入れていく。


(あ、そうだ、同じ場所ばかり摘んだらダメって言われたんだった)


 アトラ様のセリフを思い出し、手を止めて、まわりを見渡してみた。いつの間にか、青い太陽は沈み、赤い太陽が昇っていた。


(うーん…アトラ様、いないなぁ)


 ナタリーさんが言ってたように、アトラ様は この広いイーシアの森を巡回しているのだろう。

 僕は、気持ちを切り替えて、薬草摘みの作業に戻った。


 ぷちぷち、ぷちぷち、ぷちぷち…。はぁー


 薬草もだけど、森の入り口にあった果物も補給する方がいいかなぁ?でも、あれってどこにあったっけ?


 僕は、薬草を摘んでる間に、方向感覚がわからなくなってしまっていた。


 まわりを見渡しても、湖を囲むように高い木々が生い茂っているから、街への道とは反対側だったという記憶はあるけど、そもそもの街への道がわからない…。


 ぷちぷち、ぷちぷち、ぷちぷち…。はぁ〜


(リュックくん、もういいよって言ってよ)


 薬草も、かれこれかなり摘んだと思う。でもこれこそ、ポーション何本分だかさっぱりわからない。


 それに、薬草の種類も、いろいろ適当に摘んでいるから、もしかしたら必要な種類が足りていないかもしれない。


 ぷちぷち、ぷちぷち、ぷちぷち…。うぅ〜ん


(さすがに飽きてきた…。そうだ!気分転換にポーション、売り物の数をチェックしよう。ついでに魔法袋の整理も)


 僕は、魔法袋の中身を出せそうな場所を探した。森に近づくと薬草の数も減って、丈の低い草が多くなる。

 花をつけていない 芝生のような草が密集している場所を見つけた。ここなら出した物で花をつぶさないですみそうだ。


(よし、魔法袋、中身全部出てきて〜…ってうわぁっ!)


 や、やってしまった…。いや、僕の想像力の甘さだ。少し考えればわかるはず…。


 なぜか、僕はテーブルに乗る程度のイメージをしていた。が…いま、直径 3メートルくらいの円形に、ドッチャリと、地面が見えないほどのあれこれが散らばっていた。


(うわぁ〜やばっ。ぶちまけたって感じ…)


 仕方ない…とりあえず、片付けながら数えよう。


 すぐ足元に転がっていた、ギルドの登録者カードと、行商人の登録カードをまず拾って魔法袋に入れた。


 これ、気づかずに踏んで割れたりしたら、また発行してもらいに行かなければならないとこだった。ギルドはいいとしても、商会はできれば行きたくない。アブナイあぶない。


 小物入れのような、魔法袋の中に入れるインバックがあるといいな…。


(あ!昨日、買ったじゃん!)


 僕はベルトに装着した小さいカバンを見た。うーん、これは、ここに付けておく方が便利だよね…。

 でも、ここに入れたものはイメージしても飛び出してこない、普通のカバンだ。

 提示させられるカードは、やっぱ魔法袋が便利だよね。

 街に戻ったら、魔法袋の中に入れるインバックを買おうと心に決めた。すぐに忘れてしまいそうな気もするけど…


 しかし、まぁ派手にぶちまけてしまった…。


 昨日買った服や靴、着替えた冒険者の服もあちこちに散らばり、その上に小瓶も転がっている。商会の旗もあちこちで小瓶の下敷きになっている。


(あ!靴、ブーツの方が良いかも?)


 僕は冒険用のブーツが転がっているところに、他のものを踏まないように移動し、街歩き用の靴と履き替えた。


(うん、草原はこっちの方が歩きやすいな)


 そして、とりあえず近くにあったハデナで摘んだ野菜を魔法袋に、デカイ果物はリュックへと入れた。

 小さい果物はあちこちに散らばってしまっていたから、近くのものだけリュックに入れた。


 そして大量の小瓶だけど…当然のように種類ぐちゃまぜで散らばっている。種類別に分けて数えるのは大変な作業だ…。


(あ!とりあえず、うでわに入れればいいかも?)


 そう!女神のうでわのアイテムボックスは、勝手に数えて中身を頭の中に表示してくれる。僕は手当たり次第、小瓶をうでわに入れていった。


 小瓶がなくなると、スッキリした。散らばってた小さい果物を拾い集め、リュックへと入れていった。


(さて、中身は〜)


 うでわに、中身は?と聞くと頭の中にリストが出てきた。



 金貨 5

 銀貨 200


『M10』 4

『MーI 』 36

『PーI 』 1,681

『F10』 795



 わわっ! 一番上のは女神様と交換した魔ポーションだったよね。カルーアミルク風味、モヒート風味、カシスオレンジ風味の順か。


 固定値1,000のカシスオレンジ風味がいっぱいあると思ってたのに…10%か100回復のモヒート風味の方が圧倒的に多かったんだ!


 在庫がわかっていない行商人って…やばいよね、うぅっ。


 魔ポーションは、僕が使うかもしれない分だけを魔法袋に移そう。他のポーション2種は、500本ずつうでわに残して、あとは魔法袋に移そう。


 魔法袋はもし取られちゃったら売り物なくなるし、うん、ポーションは分けておく方がいいよね。うん!


 僕は、女神様と交換した固定値1,000の魔ポーション1本と、カルーアミルク風味の魔ポーション2本を魔法袋に入れた。


 そして他のポーションは、ちまちま移すのが大変だから、500本ずつ残してそれ以外を、と、うでわに触れてお願いしてみたら、足元にどちゃっと出てきた。


(うわぁ、またぶちまけた感じ…)



 はぁと深いため息をついたとき、あのセリフが…!



「ねぇ、さっきから、何してるの?」


 僕は、パッと振り返った。そこには、僕が会いたかった顔があった!


「アトラ様っ!」


「あはっ。ライト、尻尾ふってるー」


「えっ?しっぽ?」


 僕はあわてて、お尻を触って確認した。もちろん、振り返って、目でも確認した。


(しっぽなんて、生えてないよな、うん)


 その様子を見て、アトラ様は、爆笑していらっしゃる…


「あはははっ! ライトってば、やっぱおもしろい」

 

 からかわれたんだとわかったけど、あまりにも楽しそうに笑うアトラ様を怒る気にはなれない。笑顔のアトラ様は、やっぱかわいい。


「もうっ! びっくりしたじゃないですか〜」


「あー、拗ねちゃった?」


 そう言うと、アトラ様は、僕の頭をなでなでヨシヨシしている…。僕は相変わらずのペット枠…。


「いつから居たんですか?」


「うーん、なんかとっちらかして、靴を履き替えてるあたり、かな?」


「えー、早く声かけてくださいよー」


「片付けに必死みたいだったからさー。片付いたら声をかけようと思ったら、また、とっちらかしてるんだものー」


「あ、ははっ…はぁ」


「ふふっ。もう仕方ないなー、手伝ってあげるよ」


「えっ!」


「ふたりでやる方が早いでしょ。それにライト、あぶなっかしいんだもの、あたしがついててあげないと、またぶちまけちゃいそう〜。ふふふっ」


「もうぶちまけませんからー」


「ほんとかなぁ〜?」


「ほんとですっ」


 アトラ様は、散らばった小瓶を拾い集めて僕の近くに持ってきてくれた。僕は、次々と魔法袋へと収納していった。

 小瓶が片付いたあと、僕の服まで拾ってくれそうになったので、そこは死守した。


「あ、あとは大丈夫です。ありがとうこざいます」


 僕は、服や靴、そして旗を魔法袋へ収納した。

 あたりを見渡し、もう全部片付けたと思ったら、アトラ様が、


「これも、ライトのじゃないの?」


「わっ、財布!ありがとうこざいます」


「もう、ほんと、あぶなっかしいよねー。お財布落として気付かないなんてー。ダメだよー」


「は、はい…」



「ところで、ここまでは、どうやって来たの? あの後は街に行ったんだよね? 歩ける距離じゃないでしょ」


「あ、はい。風使いさんに運んでもらって」


「ん?妖精?えー…ライトそんなお金持ってたの?」


「え…高いんですか?」


「うん、かなり高いらしいよ…って、誰かと一緒だったんだねー」


「あ、はい」


「ん?はぐれちゃったの?」


(こ、今度は、迷い子扱い…)


「いえ、ちょっとここで待つように言われて…」


「ふぅん。そうだ!リュックの使い方、わかった?」


「あ、はい。やはり飲み物を錬金する魔道具でした」


 そう言って、僕は、魔法袋からポーション2種を出した。


「さっきの小瓶ね、これを作ったんだねー」


「はい。よかったら飲んでみてください。普通のポーションよりも飲みやすいので」


「ありがと。ここの水と薬草でできてるのかなー?」


「はい」


 アトラ様は、蓋を開けた。珍しく、カシスオレンジ風味の方からだ。そして、クンクンと匂いを確認し、その後、一気に飲んでくれた。


「これって、果物っぽいね! ハデナの匂いがする」


「あ、はい。ハデナ火山の休憩施設のあたりの、果物を2種類使ってます」


「…もしかして、あの子に会った?」


「ケトラ様ですか?」


「会ったんだ! …で…よく生きていられたね」


「えっ…あの…妹さんなのでは?」


「うん、妹だよ。ずいぶん年は離れてるんだけど…。あの子、処分する方がいいかと迷ってるんだー」


「処分って?」


「守護獣の能力を他の子に移して、ケトラは殺すってこと」


「どうして…そんな…」


「あの子はね…狂っちゃったの。守護獣になったばかりのときに守護しなければならない精霊が殺されてね…」


「でも…」


「あたし達は、精霊を守るためにいるのよ。その任務を失敗したばかりか、あの子は近寄る者を感情のままに虐殺してきたの……この500年ずっと正気に戻らない」


「えっ?僕、ケトラ様に助けてもらいました。敵から庇ってくれて、ふもとまで乗せて運んでもらいました」


「えーーっ? ほ、ほんとに?どうして?」



 そして、アトラ様は、突然固まってしまった…。これは、女神様がスプーンを持って固まってたのと似ている…


(念話かな…)


 僕は、アトラ様が動き出すのを待つことにした。



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