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34、ロバタージュ 〜 行商人の登録

皆様、明けましておめでとうございます。

今年は元号も変わりますね。明治(M)、大正(T)、昭和(S)、平成(H)…次は、Kから始まるのではないかと勝手に予想して楽しみにしております。

ブックマークまたまたありがとうございます!

本年も、どうぞよろしくお願いします。

 僕はギルドを出て、冒険者のリリィさんに教えてもらったとおりに、商会を目指して歩いていた。


 ロバタージュの街は、石造りの建物や、石畳みが異国情緒を感じさせ、歩いていると旅行気分でワクワクする不思議な魅力があるんだな。そう思ったところで、ハッと我に返る。


(異国情緒…じゃなくて異世界情緒だよね)


 初めてこの街に来たときも、似たような旅行気分に浮かれてしまったような記憶がある。あのときは、あの猫っぽいヤツが現れて、邪魔されたんだっけ…


(そういえば、女神様、最近おとなしいな…)



『は?なんか言うたか?』


(わわっ!なんでもありません)


『ライト、寂しいのか?それなら、城に呼んでやってもよいが?』


(ん?なんだか…女神様、元気ないですね。食べすぎですか?)


『な!なんじゃ?その理由は?妾を何だと思っておるのじゃ!』


(あ、なんか調子戻った?)


『意味がわからんのじゃ!いま忙しいのじゃ、またにするのじゃ!』


(は、はぁ)


『………。』


(…はい、圏外、っと)



 なんかまた、どこかで似たような事件が起こってるのかなぁ。


 タイガさん達も、そういえば、転移後は会ってないから、この街には居ないんだろうな。もし居たら、なんだか、わかりそうな気がするもんな…




 しばらく街の景色を楽しみながら歩き、やっと商会の事務所建物を見つけた。


(初めての場所って、ちょっと入るのに勇気いるよね)


 僕は、ふーっと深呼吸をした。よし!

 そして、商会の建物に入っていった。



 中は、なんだか会社というよりは、倉庫のような感じで、通路の両側にたくさんの箱が積んであった。


 そして、案内板に従って、ひとつ上の階へと、階段を上った。すると、ここは、なんというかピカピカした場所だった。


 成金趣味と言ったら失礼かもしれないけど、とてもゴテゴテとした内装は、目に優しくない…軽くめまいすら起こしそうな、ド派手な印象だった。



 僕が呆気にとられていると、僕を見つけた事務所の受付っぽい女性に、事務的に声をかけられた。


「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか」


「あ、あの、行商人の登録をしたいのですが、こちらでよろしいのでしょうか?」


「どなたかのご紹介ですか?当商会での登録は、取り扱われる商品の品質を保証するものになりますので、条件が厳しいかと存じますが」


「僕、登録のことは何も知らなくて…。ギルドで顔見知りの冒険者の方から、こちらの場所を教えてもらってきたのですが」


「少々お待ちくださいませ」



 一応、ここの場所を聞いてきたと答えたからか、門前払いはされなかったけど…絶対、嫌がってるよね。

 彼女はいかにも邪魔くさいという態度で、奥へと入っていった。


 商会が品質の保証をしてくれるなら、行商人を目指す人は、普通みんな来るか…。品質は悪くないという証になるんだろうから。


 たくさんやってくる中で僕みたいな子供が来たら、確かにこういう反応になるんだろうな。


(でも、商売人なら、もう少し愛想よくしてもいいんじゃないのかな。ちょっと感じ悪い…)




 しばらくすると、さっきの女性が若い男性を連れて僕のところへ戻ってきた。


「お待たせいたしました。こちらにどうぞ」


 そう言って、すぐ横の商談に使うような、簡易仕切りのある席へと案内された。

 連れてきた男性も、この女性同様、邪魔くさそうにしている。ここの商会の社風なんだろうか?



「えーと、簡単な質問をいくつかさせてもらうね〜」


「はい」


「行商人したいんだって?何を売るつもり?」


「ポーションです」


「えっ?そんなもの行商する必要ないでしょ?」


「使う人達が必要なときに、近くにいれば買ってくれるんじゃないかと思いまして…。冒険者をしながら行商人をできればいいなって」


「使う人達は、あらかじめ持ってると思うよ〜」


「足りなくて困ってる人がいれば、買ってくれると思うのですが」


「ん〜、甘いよ、君。そんなもんで商売できるわけないじゃない」


「そう…でしょうか」


「あー、売り物、いま、持ってるの? 3,000回復とかなら、まぁ、アリかもだけどさー」


「あ、はい」



 僕は、モヒート風味のポーションと、カシスオレンジ風味のポーションを出した。


 男性は、さっと説明を出して読んでいた。


「うーん。まぁ、思ったほど悪くはないか…」


「飲んでみてください、お代は結構ですから」


「えぇ〜、まぁ、一口だけなら」


 そう言って、瓶の蓋を開けた瞬間、彼の表情は変わる。


「な、何?これ…」


「10%回復のポーションです」


「い、いや、それはわかってんだ〜」


 そして、恐る恐る一口飲んで、さらにもう一口、さらに…結局、1本飲み切ってしまった。


「……これをどこで?数はあるのですか?」


(敬語に変わった…?…なんだかなぁ…)


「入手方法は、今は言えません。数は、僕が行商する程度は、継続的に入手できます」


 彼は、カシスオレンジ風味の方も、開けていた。そして一口飲んで、その後は一気飲みしていた。


 その後、彼は女性に何かを指示した。女性は、うなずき、奥へと入っていった。


「いま、あの2〜3本ずつありますか?」


「ありますが…」


「他の者にも試飲させたいのですが…あ、お代はお支払いしますから」


 そう言うと、彼は少し考え…


「銀貨2枚というところでしょうか?」


「後から飲まれた方は、いまギルドで価格査定をしてもらっているので、わかりません。はじめの方のは、銀貨1枚という価格査定をもらいました」


「はん、ギルドは馬鹿ですからね…。価値を正確に判断出来ないんですよ」


(なんだなんだ?やっぱ、感じわるっ)




 しばらく待っていると、オジサンが二人、やってきた。

 やはり邪魔くさそうにしているが、近くに寄ってきたときには、顔に嘘くさい笑顔がはりついていた。


「いらっしゃいませ。行商人の登録の件で足を運んでいただいたそうで、ありがとうございます」


「あ、いえ」


「許可に関しては部下に一任しておるのですが、とても珍しい品を取り扱われていると聞きましてな」


「はぁ」


 若い男性が、出して出してという仕草をするので、僕は、仕方なく2本ずつ出した。


「どうぞ」


 二人共、若い男性と同じ反応だった。10%の方から飲むのも同じ。ポーションを見てちょっと嫌な顔をするのも同じ。恐る恐る一口、さらに一口…飲み方も同じ。


 人は、知らないものを飲むときはみんな同じ反応をするんだろうか…?



「あの、登録は、していただけるのでしょうか?僕、そろそろ時間が…」


「あ、大変お待たせして申し訳ありません。いま、手続きを進めさせております」


「いえ、こちらこそ急かしてすみません」


「いやはや、このような美味なポーションがこの世界にあるなんて、私も長くこの商売をしていますが知りませんでしたな」


「出来れば、ウチの店にも少し置かせてもらえませんかな? ウチの商会の旗の使用料を、行商人さんにはお支払いいただいているのですが、それを免除ということでいかがかな?」


「そんなにも数はないんです…使用料が必要なら普通にお支払いしますから」


「社長!使用料の話はしないでいきましょう。気を悪くされて使用料を取らない商会に、くら替えされたらどうする気ですか」


「えっ、商会は他にもあるんですか?」


「あ、いや、えっと……がははは」


「ッチ。あ、失礼しました。はぁ…お偉い方達はこれだから困るんすよね〜」


「ややこしそうなんで、やっぱ…」


「あ、キチンとお話します。はぁ…」




 若い男性は、また邪魔くさそうにしながら、説明を始めた。


 この街には、ここと同じような商会が大きいものだけでも10店以上あること。


 行商人には格があり、商会の旗がその格のひとつになること。


 格というのは、冒険者でいうランクと同じ扱いで、格が高いと信頼が厚くなり、行商人であっても国との取引でさえ出来ること。


 商会の旗は、ひとつだけでなく複数の所持が認められること。


 格は、上中下の3段階と、その上に特上、逆に下には野良があること。

 登録無しは野良。ギルドや中小の商会のものは下。自分のとこのような大商会のものは中。


 あとは客の評価や取引の数などによって格が上がるということ。


(ややこしい…頭痛くなってきた)



 僕がつらくなってきた頃、1枚の小さな用紙と、アレコレを持って、女性が声をかけてきた。


「あとは、お名前の記入と、何か身分証の提示をお願いしたいのですが」


「身分証は…ギルドの登録者カードでもいいですか?と言っても登録しただけで、まだ何も受注していないのですが」


「はい、大丈夫です」


 僕は、登録者カードを見せ、そして小さな用紙に名前を書いた。


「もう少しだけお待ちください」


 女性は、用紙以外のものを若い男性に渡して、奥へ戻っていった。


「話が途中になってしまいましたが、あとは、ご不明な点はございませんか? 」


「何がわからないか、まだよくわかっていません…」


「あはは、そうですよね。また、何かあれば遠慮なく お立ち寄りください」


「はい」


「それと、やはり、数本で構わないので買い取らせていただけませんか? ウチの旗を見て、商品の問い合わせに来られるお客様もありまして…」


「あー、じゃあ、これくらいで」


 僕は、5本ずつ出して渡した。


 すると、オジサン達が飲んだ分と合わせて、ということで銀貨20枚を渡された。ん?計算がおかしくないか?というか新作はまだ値段わからないし…


「えーっと、ちょっと多いかもですが?」


「えっ?あ、びっくりしました、失礼。はははっ、少ないと言われることはあっても、多いと言われたのは初めてですよ。妥当な金額だと思いますよ」


「そうですか。じゃあ、確かに」


 そして、旗を大小2枚ずつと、ワッペンのようなものと、僕の名前が入った登録証を渡された。


 行商中は、旗やワッペンのようなものをどこかにつけておけば、客は行商人だとわかるから寄ってくるという。


 僕はとりあえず、魔法袋に入れておいた。


 この商会は、『コペル大商会』というらしい。


 また、商会の方から用事があるときは、ギルドに連絡するから、伝言確認は なるべくこまめにするようにとお願いされた。


 そして、やっと解放されて、建物の外に出た。


(う〜ん、疲れたな。1時間どころじゃないじゃん)


 僕は、ちょっと急いでギルドへ向かった。


(待ってるよね…買取担当の職員さん。急かしたくせに大遅刻だよ…)

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