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29、ハデナ火山 〜 クリスタルの妖精の力

ブックマーク、評価ありがとうございます。とても励みになります!

あの、実はインフルエンザにかかってしまいまして、いま高熱と頭痛でフラフラな状態です。もしかしたら2〜3日投稿できないかもしれません。申し訳ありません。復活したら休んだ分の投稿もしていきたいと思っています。よろしくお願いします。

「いったい、彼は何者なんだ?」


「あの狂った守護獣を手懐けているのか?」


「精霊ハデナの分体なのでは?でなければ、あのケトラが助けに来るわけがない」


「いや、精霊ハデナは、完全に消滅したはずじゃないのか?」




 ライトがあの悪霊を引きつけ、休憩施設の建物からヤツを引き離したときに、心配した何人かが建物から出て様子を見ていた。


 レオン達だけでなく、一部の冒険者も、少し離れた所から、ライトと悪霊の攻防を見守っていたのだった。

 また建物の中に居る人達も、その動向を気にして、中から遠目に様子を見ていた。


 そして、建物の外に出ていた人達は、ライトが透過魔法を使うことを知り驚く。さらに、ヤツの攻撃をかわすために即発動するバリアを使うこと、そして一瞬で自分の怪我を回復していることもわかった。


 その立ち回りを見ていた冒険者達は、ライトのことを回復役として、あまりにも優秀な人材だと感じていた。



「俺のパーティに入ってくれないかな…」


「あの子は、登録したばかりだぞ。まだ一度もミッションを受注していないはずだ」

 


 回復役は、自分の身を守ることができない者もいる。高名な白魔導士は、だいたいその傾向が強い。

 しかし、自分の身を守れない回復役は、厳しいミッションには向かないのだ。



 さらに、目の前で信じられないことが起こったのだ。


 この地の守護獣ケトラが、彼を助けに来た!

 これまで、人族を虐殺することはあっても、誰かを助けに来たことなどない。


 しかも、その背に彼を乗せ、天高く、空を駆けるなどというおとぎ話のような光景を、いま、彼らは目撃したのだ。



「もしかしたら、坊やは、本当に精霊のような存在なのかもしれないな。不思議な魔道具リュックを持っているしな」


「いやいや、それはないでしょ。普通の人族にしか見えないですよ」


「でも、彼には何度も助けられましたよね」


「ああ、ほんとに…ずっと助けられてばかりだな」


「じゃあ、恩返しのためにも、彼が行商人の登録をしたら、警備隊がお得意様になってあげましょうよ」


「それって、恩返しでもなんでもないんじゃないか?」


「ただ単に、坊やのポーションが気に入っただけだろ?」


「あはは…そうとも言いますね〜」


「ったく…」







 僕は、ケトラ様の背に乗せられて、空を駆けていた。風のように、ピューッという効果音が似合いそうなくらい、気持ちよく駆けていた。


「お兄さん、寒くない?」


「はい、大丈夫です」


「もう着くから、一気に気温が上がるから気をつけて」


「あ、はい」


 ケトラ様は、ついてくる悪霊のスピードに合わせて、付かず離れずの距離を保っていた。

 だが、ここで一気に高度を下げ、スピードを上げた。ヤツとの距離が少し開いた。


 そして、スーッと、地上に降りた。


(うわ!ほんとに急にめちゃ暑い!)



「お、おい!なんやねん…どないなっとんねん?」


 僕は驚いて振り返ると、タイガさん、ジャックさん、そしてあとふたりの隠居者が、そこに、ポーっと立っていた。


「あ、あの、まずクリスタルを転移魔法陣に戻そうってことになって…」


「そんなん、どうでもええ。それより、ソイツとどういう関係や?」


「ん?ケトラ様ですか?えっと、昨日知り合いになって、さっき助けてくれて、ここまでヤツを引きつけて運んでくれました」


「そんなことより、お兄さん、それ、早く戻そう」


「あ、はい。えっと、どうすればいいのですか?」


「クリスタルの妖精が、その辺にいるから渡せばいいの」


「クリスタルの妖精さん?」


(妖精がいるんだ!子供にしか見えないという小さいおじさん?だっけ?)


「ライトさん、こっちっす」


「ジャックさん!はい…え?それ?何?」


「な、何とはなによっ!失礼な子ね!」


「わっ!すみません。妖精さんを見るの初めてで…イメージと違って、あまりにもかわいいから驚いてしまって」


「なっ、なによ! 小さいからってバカにしてるんじゃないの!」


「いえ、小さいのは知ってたんですが、おじさんかと思ってたら、こんな綺麗な女性だから…」


「……もう一度聞くわ、妖精がおじさんだと思ってたら、の後、なんですって?」


「え、あ、あの、すみません。あまりにも想像と違って、可愛らしくてつい、失礼なことを…」


「…つい、ってことは心の中で思ったことを言葉にしてしまったということかしら?」


「あ、はい。す、すみません…。バカにしたつもりなんて全くないんです、ごめんなさい」


「そう。あまりにも綺麗で驚いたのね?」


「は、はい」


「じゃあ、仕方ないわね。クリスタルを出しなさい」


「はい」



 僕は、小さな妖精さんの目の前にクリスタルを出した。

 どう考えても、クリスタルの方が大きく、妖精さんには持てないだろう…

  と、思った瞬間、クリスタルはフワフワと浮き上がり、妖精さんの元へ移動した。


 妖精さんは、このクリスタルに何か魔法のようなものをかけた。すると、目を開けていられないほどの強い光がクリスタルから溢れた。


 光が落ちつき、僕が目を開けると、クリスタルとともに妖精さんが消えていた。



「ええっと…」


 僕は、何が起こったのかわからなかった。


「転移魔法陣が、復旧したっす」


「えっ、あ、わ!」


 目の前の地面に、読めない文字がたくさん浮き出してきていた。人が10人くらい入れそうな円形の枠があり、その中の地面に読めない文字が浮かんだり消えたりしていた。


「これが、転移魔法陣?」


「そうっすよ。行き先を言えば、その場所に転移できるんす」


「勝手にですか?」


「これを動かしてるのは、さっきの妖精さんっす。女神の城にあるでっかいクリスタルから、各地のクリスタルにエネルギーが送られてるんす」


「じゃあ、そのエネルギーで、さっきの妖精さんが転移させてくれるのですか?」


「そうっすよ〜」


「へぇ、妖精さんって、あんな小さいのにすごいんですね」


「あんた、わかってるじゃない。いろはちゃんとこの子?」


「わっ!び、びっくりした!突然現れられると心臓に悪いですよ…」


 妖精さんは、僕の目の前、というか、ほんとに目の前に現れた。近すぎる…


「あら、ごめんなさい。私みたいな綺麗な女性が急に目の前に現れると、確かドキドキさせてしまうわね」


(え?えーっと…)


「あ、あの…あ」


 彼女は僕の返答を待たずに、クルクルと飛び回り、そしてタイガさんの方へと飛んで行った。


「自由人っすから、テキトーで大丈夫っす」


「あ、はい。わかりました…」


「それより、あっちの睨み合いをなんとかして欲しいっす」


 そう言ってジャックさんが指差した先には、タイガさんと他2人と、ケトラ様が、なんだか睨み合っていた。

 僕は慌てて、そちらに戻った。




「ケトラ様、クリスタルは転移魔法陣に戻りました」


「うん…。ところでお兄さん、コイツらと親しいの?」


「えっ、あ、はい。同じ種族というか…」


「やっぱりね。お兄さん、いろは様の番犬ね?」


「番犬?えーっと、『落とし物』係だと思います」


「あー、そっちね」


「うーん…まずかったですか?」


 すると、なぜか、ハッとしたようにケトラ様は僕の方を見た。

 今さっきまでタイガさん達と睨み合いしていたのとは違う、やわらかな表情をしていた。


「いや、うん…違うの。コイツらと同じ種族でも、お兄さんはお兄さんだから。同じ種族だとわかっても何も変わらないの。気にしないで」


「ん?はい。僕は僕ですけど…?」


 何の話なのか、僕にはサッパリわからない。でも、まぁ、ケトラ様が気にするなというなら、それでいいんだろう…




 すると突然、みんなが一斉に戦闘態勢に入った。


(えっ?えっ?)


 僕が戸惑っていると、何かのエネルギーが近づいてくる気配がして…


 ドカドカドカ!キィン!


 ヤツが、あのしつこい悪霊が、追いついてきた。

 何かが降り注いだが、この辺りに被害はない。


(あ、バリア!いつのまに?)


 転移魔法陣を守るように、この辺りはバリアで覆われていた。


「すご!ヤツの攻撃、全然、効かない!」


「クリスタルの妖精でも、これくらいのことはできるんや」


「な、なんですって?失礼ね!脳筋なら、さっさとあのバケモノを浄化しなさいよ!」


「はぁ?褒めてやったやろ?なんやそれ」


「まぁまぁ、今はヤツをなんとかしないとマズイっす。クリスタルのエネルギーを吸い尽くしてたみたいっすから」



 すると、真っ先にケトラ様が動いた。

 天に向かって、咆哮すると、ヤツは動きを一瞬止めた。

 その隙に、タイガさんがヤツに向けて、イナズマを纏った大剣を振り下ろす。ピキピキッ!チリチリッ!

 ヤツを、雷撃が襲う…だが、ヤツはあの妙なピリピリ風をぶつけてこれを打ち消す。


「はぁ?悪霊がガードを使うとかないで…。コイツ、知能高そうやけどリッチでもないしな…なんやこれ?」


「この地の者ではない。異質な存在だ」


 そう言うとケトラ様は、ヤツに向けて、強烈な炎を吐く。だが…これもヤツには当たらない。あのピリピリ風が、炎も打ち消した。


「邪魔くさいっすね〜、普通、悪霊なら、守護獣ケトラの炎で一瞬で燃え上がるはずなんすけどね」


(ケトラ様ってやっぱそんなに凄いんだ)


「ヤツの魔力切れまで、長期戦か…」


「クリスタルのエネルギーを吸収したなら、魔法使いっぱなしでも、数日は切れないか…」


「数日やと?そんなにコイツと遊ぶ気にはなれへんわ〜。ライト、おまえが片付けとけ」


「は?僕ですか?」


「ちょっと、あんた!お兄さんに押し付けて逃げる気?」


「なに言うてんねん。適材適所や。ほれ、ライト、さっさと行ってこんかい!」


(また、そんな簡単に言う…。でも、確かに適材適所かな)


 僕は、タイガさんをジト目で見る。タイガさんは、ほれ行け!って、アゴを突き出している…


(なんか、女神様と、タイガさんって…似てるとこあるよね)


「ちょっと、お兄さんにそんなこと!」


「ケトラ様、たぶん大丈夫です。行ってきます」


「えっ、そんな…」


「バカ犬! ライトをみくびるなよ〜。あいつはアンデッドにだけは強いんや」


(さて、と。さっさと片付け……られるのかな?僕…)


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