エピローグ
皆様、今回はいつもの2倍以上あります。スキマ読みされる方はご注意ください。
「皆、用意はできておるか?」
「うふっ、完璧よぉ」
「えっ? 何が始まるんですか? 僕、何も聞いてないんですけど…」
「なっ? ライトはしょぼいのじゃ!」
「えーっと…」
いま僕は、女神様の城にいる。なぜか、女神様の私室に呼ばれたんだ。壁一面に、あちこちの星系が映し出されている。
「ライトくん、あのねぇ〜、今から、いろはちゃんが召喚魔法を使うのよぉ〜」
「召喚魔法? 誰を? 何を? 召喚するんですか?」
「ふふっ、ライトくんの物語をずっと見守ってくれてた人よぉ」
「ん?」
「ライトはしょぼいのじゃ!」
「えーっと…?」
「いま、この画面を見ている人よぉ」
「へ?」
「読み娘じゃ」
「よみこ?」
「いろはちゃん、なぁに? 物語をずっと読んでくれていた人は、女の子か男の子かわからないじゃないの」
「どっちでもよいのじゃ。召喚すれば女の子になるのじゃ」
「えーっと?」
僕は、まだ頭がついていかない。女神様は何を言ってるんだろう? 僕の物語を見守ってくれてた人を召喚する?
「ライトはしょぼいのじゃ! そこで見ておれ」
女神様は、魔力を操るときに座る椅子に座っている。壁に移る画面が、ものすごい勢いで移り変わっていった。そして…。
「わっ! 地球だ!」
「ふむ。結構遠かったのじゃ。ライトを捕獲したときとは時代が変わっておる」
「あ、平成が終わったんだ。次の年号って何になったんだろう?」
壁一面に地球が映し出されている。さらに地球をくるっとまわり、日本でピタリと止まった。
「よし、じゃあ、始めるのじゃ」
女神様が何か呪文を唱えると、カメラが超ズームするかのように、映像が何かを目指して近寄っていった。海が見え、山が見え、街が見えた。
そして、ひとりの背中を映し出した。
「おぬしじゃ。読み娘、捕まえたのじゃ」
私(読み娘)は、驚いた。スマホ(パソコン)の画面がいつもより白く強く光ってる。
(えっ? ちょ、まじ?)
さらに白い光に包まれ、身体が浮遊する感覚に私(読み娘)は、めちゃくちゃ焦った。
(異世界に拉致する気?)
その次の瞬間、グラリと強いめまいを感じた。
(うわっ、気持ち悪い、吐きそう…)
「おーい、起きるのじゃー! よみこ〜」
私(読み娘)は、お気楽な声で、目が覚めた。うっぷ…。気持ち悪い。吐きそう。船酔いマックスな感じだよね、これ…。
身体を起こすと、さらに吐きそうな気持ち悪さを感じた。これ、このまま死ぬんじゃない?
「よみこ様、長距離の転移、気持ち悪いですよね。ちょっと失礼します」
そう言うと、茶髪の少年が、私(読み娘)の腹にスッと手を入れた。一瞬、ギョッとしたけど次の瞬間、嘘のように身体の不調が治っていた。
「す、すごい! 肩こりも、虫さされでかきむしった跡も、すっかり治ってる。もしかして、ライト?」
私(読み娘)が、そう聞くと少年は、少しはにかむように微笑んだ。女の子みたいだな。
「はい、僕がライトです。よみこ様、ずっと見守ってくださってありがとうございます」
「あー、いえいえ。確認するけど、私のことよね? よみこって……読者だから?」
「えっと、たぶんそうだと思います。女神様が勝手に名付けたので、違う名に変換していただく方がいいかもです。女神様は、だいたい変な…」
「ライトはしょぼいのじゃ! 妾のセンスが理解できないのじゃ」
(わっ! 出た!)
「ん? 出たとは何じゃ」
「あ、いえ、ほんとに頭の中を覗くんですね。エスパーみたい…」
「そうなのよー。いろはちゃんってば、すぐに覗くのよー。エッチね〜」
「ちがーう! 妾は、破廉恥ではないのじゃ! オババもしょぼいのじゃ」
明らかに、女神様とナタリーさんだね。女神様は、良家の令嬢のように見える。とても上品で美人だ……見た目は…。
ナタリーさんは、予想以上に色っぽい。そっか、悪魔族だっけ? 魅了とか使うんだ。
「ふふっ、よみこちゃん、用意はいいかしら? 今から、あなたの旅が始まるのよぉ〜」
「えっ? 旅? ですか」
「そうじゃ。妾が出したお題の答えは考えて来たじゃろうな? ライトがたどった場所を、駆け足でまわるのじゃ」
「転移、ですか…」
(また、こんな船酔いマックスは勘弁してほしい)
「よみこ様、生首達を使いますから大丈夫ですよ」
「さぁ、とりあえず、虹色ガス灯広場じゃ」
私(読み娘)は、わけのわからないまま、女神様に腕を引っ張られたかと思ったら、次の瞬間、広場にいた。
(ワープ?)
広場には、アンティークな街灯があった。オレンジ色の光が灯っている。屋台の看板に映った自分の姿を見て驚いた。
あれ? 私(読み娘)いつ変身したの? 頭に耳があるし、もふもふな尻尾がある。浴衣のような着物を着ているのに、足元はショートブーツだ。11〜12歳の女の子に見える。
「なんや? 妖狐の子供か?」
「妖狐じゃなくて、よみこじゃ」
「いろはちゃん、よみこちゃんは妖狐の姿だもの。妖狐でも間違いじゃないわよ〜」
「な? ふむ。タイガは邪魔なのじゃ」
(えっ? これがタイガさん?)
目の前にいる男性は、私(読み娘)のイメージとは全く違っていた。ハリウッドスターも顔負けなくらい甘いマスクの中年男性だ。
「あー、地球の子か?」
「は、はい」
「へぇ、何時代や? 俺は昭和、ライトが平成や」
「あ、平成生まれですが、今の元号は令和です」
「ふうん。また和がついとるんか。ややこしいやんけ」
「確かに、昭和と令和って、後の学生は悩むかもですね」
「よみこちゃん、タイガに合わせなくていいのよー。脳筋が移ると大変よぉ〜」
「あはは、はい」
「よみこ、時間がないのじゃ。早く旅を終えて答えを言わねば、永遠に地球に戻れなくなるぞ」
「えっ!?」
「ライト、はよはよ」
「あ、はい。大丈夫ですよ。よみこ様、足元のクッションに乗ってください」
私(読み娘)が足元を見ると、モコモコとした白いクッションがあった。
そう言えば、目線の少し上を漂っているから気づかなかったこど、あちこちに、楽しそうな顔をしたテニスボールに赤黒いふわふわのコットンをくっつけたようなものが飛んでいる。
(確かに生首といえなくはないけど…)
「よみこ、ボーっとしてないで、はよはよ」
「あ、はい」
「じゃあ、行きますね〜」
ナタリーさんやタイガさんに見送られ……あれ? 女神様はいつの間にか、猫耳をつけた少女の姿になっていた。
「ロバタージュからじゃぞ」
ふわっと身体が浮き上がる感覚を感じた次の瞬間、景色が変わっていた。石造りの建物がズラリと並んでいる。馬車のようなものも通っている。
「ここがロバタージュ? ほんとに一瞬でワープできるんだ。生首達、すごいですね」
私(読み娘)がそう言うと、生首達は、キャッキャと喜んでいた。めちゃくちゃ可愛い。癒される〜
「よみこ様、あまり甘やかさないでくださいね。最近特に調子に乗ってて、困ってるんですよねー」
ライトがそう言うと、生首達は、急にしょんぼりした顔をした。しょんぼりした顔も可愛い。
「でも、すごいですよ。それに可愛いです」
「よみこ様のお気に召してよかったです。ティア様、なぜ、ロバタージュからなんですか? 僕の始まりの地は、イーシアですよ?」
「本編がイーシアで終わったではないか。だから、イーシアは最後にするのじゃ」
「なるほど…」
「うむ。よみこ、ここはつかまるとうるさい奴が多いから、次に行くのじゃ」
「えっ? もう?」
「時間がないのじゃ。よみこは、妾の星の子になるのか?」
「あ、そっか…」
私(読み娘)は、足元のクッションに乗った。
「暑い〜。えっと、ここは?」
「よみこ様、ハデナ火山ですよ」
「すっごく暑い……えっ?」
ライトが私(読み娘)に手のひらを向けていた。すると、やわらかな光が、私の身体にまとわりついた。
「よみこ様、すみません。バリアを張るのを忘れていました。いくら妖狐に化けていても、地球人がこんな火口近くだと干上がってしまいますね」
「ライト、ありがとう。バリアなんだ。すごい」
突然、ふわっと目の前に、赤い何かが舞い降りた。人よりも圧倒的に大きい。私(読み娘)は、思わず身構えたが、その赤い何かはスッと小学生くらいの女の子に変わった。
「もしかして、ケトラちゃん?」
「えっ? なぜあたしのこと、知ってるの?」
「ケトラ様、この方は僕の物語を見守ってくれていた方なんですよ」
「そうなんだ。うん、あたし、ケトラ」
「ふふっ、ケトラちゃん、想像してたより可愛い」
私(読み娘)がそう言うと、ケトラちゃんは、むぎゅーっと抱きついてきた。突然で驚いた……それに何より結構キツイ。
「わわ、ケトラ様、よみこ様は他の星の人だから、もっとそっとしないと…」
「お兄さん、わかったー」
若干、腕の力が弱まった気もするが、相変わらず、むぎゅーっとされている…。私(読み娘)はケトラちゃんの頭を優しくなでた。
「ケトラ、いつまでしがみついておるのじゃ。よみこが困っておるのじゃ」
「あ、ごめんなさい」
そう言うとケトラちゃんはスッと離れたけど、ジーっと私(読み娘)の顔を見ていた。
「時間がないから次の場所じゃ」
女神様に急かされ、クッションに乗った。ケトラちゃんが、思いっきりバイバイをしている。かわいい。
次の場所は、なんだかうっそうとしていて気味が悪かった。ワープが途中で少し止まった気がする。
「あー、それは、地底に降りるときに担当する天使ちゃんが交代したのじゃ」
「えっ?」
「ティア様、すぐ覗くのやめてくださいね。よみこ様が驚いてますよ」
「チッ!」
(わっ、舌打ちだ。ほんとに舌打ちするんだ)
そして猫耳の女神様は、知らんぷりをしている。ふふっ、しらじらしくて可愛い。
「なっ!?」
「ん?」
「なんでもないのじゃ。ここが二クレア池じゃ」
なんだか、女神様が少し照れたような? 気のせいかな。
「ハロウィンも真っ青なくらい、怖いですね」
「ハロウィン? なんじゃ?」
「あ、お化けやゾンビの仮装をするお祭りです。お菓子をくれないとイタズラするぞって言って、子供があちこちの家を回ったりする国もあるようです」
「な、なんと? 面白い祭りじゃな! ライト、今度、湖上の街でハロウィンをするのじゃ!」
「は、はぁ…」
「あ、ライト、ごめん。なんか変な入れ知恵を…」
「いえ、よみこ様、大丈夫です。ハロウィンがなくても、いつも変な祭りをしてますから」
「あはは…」
そして、生首達のクッションで次の場所へと移動した。次は、チビっ子達のとこだっけ?
「わっ! ティアちゃんだー。ん?」
「わっ! ティアちゃんだー。だれ?」
「クライン様、ルーシー様、こんにちは。こちらは僕の物語を見守ってくれていた、よみこ様ですよ」
「へぇ、そうなんだー」
「へぇ、そうなんだー」
私(読み娘)にペタペタと触ってくるチビっ子達に少し驚いた。人懐っこいんだな。
二人とも背中には小さな黒い羽が生えている。そっか、悪魔族だもんね。
「ほう、ライトを見守っていたのか? 小娘」
低いゾワリとするような声に驚いて振り返ると、初老のイケメンがいた。あれ? 怖くない。この人、大魔王なはずだけど…。
「絡むなよ? メトロギウス。妙なことをしてライトに殺されても知らぬぞ」
(うわっ、物騒な会話…)
一瞬で、ピンと張り詰めた空気感に、私(読み娘)は背筋が凍った。大魔王の様子が豹変したんだ。怖っ。
「爺ちゃん、よみこちゃんをいじめちゃダメだよ」
「そーよ、そーよ」
「俺はそんなことしないぞ? ティアが妙なことを言っておるだけだ」
「時間がないのじゃ。よみこ、ここが旧ホップ村じゃ。次に行くのじゃ」
「えっ? 洞窟っぽい入り口だけなのに、もう? 」
「奥は、戦乱であちこち壊れてるんですよ」
「そうなんですね」
また、生首達のクッションに乗った。チビっ子ふたりが、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、バイバイしてくれた。かわいい。
さて、次は? なんだか硫黄臭い…。
「ヘルシ玉湯ですよ。よみこ様、ここで昼食にしましょう」
リゾートホテルのような場所に、入っていくと、エントランスでうやうやしく頭を下げる人がいた。
「支配人さん、食事に来たんですけど、あまり時間がないんです」
「かしこまりました。ビュッフェレストランに席をご用意いたします。えっと、4名様ですね。どうぞこちらへ」
(ん? 3人でしょ)
ふと振り返ると、そこには黒髪の顔色の悪そうな男性がいた。誰?
「あれ? カース、いたの?」
「いたのじゃねぇよ。俺の目の前に、突然ワープしてきたくせに」
「そうなんだ。えっとね、こちらの方が…」
「よみこ? 変な名を付けられたんだな。カースだ。見守ってくれてありがとうな」
そう言うと、カースは私(読み娘)の頭をポンポンと叩いた。無愛想だなー。もっと喋る人かと思ってた。
そして4人で、ビュッフェランチを食べた。うん、まぁ普通に美味しい。でも、基本、味付けは塩のみらしく、スープや、ソースの欲しい料理はイマイチだった。
女神様が、デザートばかり食べているのが気になった。そういえば、いつもパフェやデザートばかりだよね。
「ん? 気にせずともよいのじゃ」
「おい、勝手に人の頭の中を覗く癖、直したらどうだ?」
「チッ! カースはしょぼいのじゃ」
食事が終わると、すぐに次の場所へ移動した。
そこは、霧が低い位置に広がっていて、なんだか幻想的な場所だった。神社などのパワースポットのような、なんだか心が洗われるような場所だ。こういうゲームの世界あったなぁ。
「よみこ様、トリガの里です。狼の守護獣の里ですよ」
「すごく、幻想的な場所ですね」
「映画とかに出てきそうな感じですよね」
「あー、確かに。私(読み娘)は、ゲームの世界にあったなぁと思ってた」
「それ、ポーションが出てくるゲームですよねー」
「そうそう! 翔太の頃にライトもやってた?」
「やってましたよー」
「妾には全然わからぬ会話なのじゃ。次、行くのじゃ」
「えっ? まだ里の誰にも会ってないですよ」
「ライトはしょぼいのじゃ。文句を言われるだけなのじゃ」
「まぁ、女神様は守護獣をあちこちで酷使してますもんね」
「はよはよ、時間がないのじゃ」
「よみこ様、いいですか?」
「はい、パワースポット、堪能しましたよ」
「じゃあ、次、行きますね」
次の場所は何もない場所だった。赤土が広がっている。
「ここは、チゲ平原です。草がまだ生えてないですね」
「うむ。この近くの名もなき荒野にあった、星を繋ぐ門は閉じたからの。一時的にこの辺りのマナが無くなったのじゃ」
「大変な戦いもありましたもんね」
「うむ、まぁ、数年で元に戻るのじゃ。次じゃ」
生首達が、なぜかたくさん集まってきた。そして、次の場所に移動した。そこは、結界があったようだ。だから、たくさんの数が必要だったのかな。
「王都リンゴーシュじゃ。ここには、アマゾネスが滞在しておるのじゃ。だから天使ちゃんの数が多いのじゃ」
「えっと、どうしてですか?」
「すぐにわかるのじゃ」
私(読み娘)達が、王都に入るとすぐに、女騎士に呼び止められた。その近くには、30センチくらいのイカツイ顔をした小人がいる。
「通行証を提示せよ」
(こわっ)
私(読み娘)の目の前に、剣がスッと出てきた。下手なことをすると首をはねる気なんだろうか。
それと同時に、ふわっとやわらかい光に包まれた。
「よみこ様、念のためにバリア張り直しました」
「あ、ありがとう、ライト」
「王都はいま、神経質なくらい警備が厳しいんですよ」
すると、空からひらひらと赤い雪が降ってきた。キレイ。あ、これが、ハラハラ雪?
それを見て、察したのか、女騎士は剣を鞘に収めた。
「失礼致しました。ライト様ご一行でしたか」
「なぜ、顔を見て判断できないかな?」
「ライト様は、通常時は戦闘力が低いので、ライト様に化ける者が多いものですから…。そんな魔族を同伴されていると…」
「そう…」
ライトが、げんなりした顔をしていた。あ、そっか。女神様は猫耳だし、私(読み娘)は思いっきり、もふもふ尻尾だからな。
「何かありましたか?」
声のした方を見ると、凛としたオーラを放つ20代後半にみえる男性と、執事のような初老の男性がいた。
「あ、フリードじゃ」
女神様は、タタタとその男性に駆け寄っていった。そして、なんだか、ブツクサと文句を言っているようだ。
「ライト、あの二人って、フリード王子と…?」
「はい、フリード王子と、執事のアレクさんです」
「へぇ、めちゃくちゃ王子様と執事って感じですね。フリード王子のオーラがすごい」
「ですよね。だから余計に、他の王族からねたまれたり、刺客をむけられたりするみたいです」
「大変なんだ」
「だから、常に護衛がいますよー。僕の街に来たときは、一人でフラフラしてますけど」
「そっか〜」
「そろそろ助けに行きましょうか」
「ん?」
ライトは、いたずらっ子のように微笑んで、フリード王子の方へと近づいていった。
「フリード王子、ちょうど良かった。僕の物語を見守ってくれてた方と、いま旅をしていたんです」
「えっ? あの可愛らしい妖狐の子供か?」
「ええ、女神様があの姿を貸しているようです」
「へぇ。お嬢さん、ライトを応援してくれてありがとう」
「あ、いえいえ」
(めちゃくちゃイケメンが、微笑んでるーー)
「ティア様、いつまで文句を言ってるんですか? 時間ないんじゃ?」
「あわわ、そうじゃった。アマゾネスの教育をちゃんとするようにと言っておったのじゃ。アマゾネスは、女尊男卑だけじゃなく、猫も弾圧するのじゃ、ひどいのじゃ!」
「ティアちゃん、アマゾネスは魔物と常に戦っているから、どうしても獣人は苦手みたいなんだよ」
「フリードが、ガツンと言えばよいのじゃ。猫を足蹴にしてはいけないと教えるのじゃ!」
「女神様なら絶対、崇拝されますよ?」
「むむう…。妾は、ティアじゃ。猫なのじゃ!」
「ははは、また言っておきます。お時間大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないのじゃ。ライト、次じゃ」
フリード王子に手を振って見送られ、次の場所へと移動した。
「はぁ、ここは、パスじゃ」
女神様は、来たばかりなのに次に行こうと言っている。ちょっと寒い。岩山が見えるけど、ここは?
「よみこ様、ヌーヴォの里です。虎の守護獣の里ですが、確かに今は内乱中のようですね」
「内乱中?」
「はい、里長を決めるために戦ってるみたいです。巻き込まれないうちに行きましょう」
「あ、うん」
そして次の場所は、吹雪の中だった。ここは? 雪ばかりで何も見えない。
「ここは、ルー雪山です。精霊ルー様は最近はここに居ないので、次に行きましょうか」
「ライト、せっかく来たのじゃから、氷のクリスタルを拾っていくのじゃ」
「あー、勝手に入るんですか? 知りませんよ」
「大丈夫じゃ。ここのクリスタルの方が、精度が高いのじゃ」
「わかりました」
再び生首達のクッションに乗って移動した場所は、あまりにも美しくて思わず息をのんだ。目の前にはキラキラと輝く幻想的な氷の湖が広がっていた。
「すっごく、キレイ〜」
「ですよね。僕もここに来たときは、言葉を失いました」
女神様は、何かを取り出して地面に刺していた。ボムッと大きな音と地響きがした。
「あーあ」
「何したの?」
「クリスタルの窃盗ですね。かなりの量だと思います」
「ん?」
「魔道具を使って掘ったみたいです……あ!」
目の前に、パッションピンクの何かが現れた。
「ちょっと、あんた、何して……え? イロハちゃん?」
「チッ!」
「ちょっと、ライト、あんたがついていながら……」
そう言うと、パッションピンクのひらひらした人が、私(読み娘)に気づいてフリーズしていた。
「あ、こんにちは。もしかして、ルーさん?」
「えっ、あ、え、わわ、ひゃ、ルーだけど、どど…」
(あ、そっか、コミュ障だっけ?)
「ルー様、こちら…」
「わかってるわよ! 急に現れないでよねっ」
「急に現れたのは、ルーじゃろ」
「へ? あ、も、もうーっ」
そう言うと、精霊ルーは、スッと消えた。
「相変わらず、人見知りが激しいのじゃ」
「女神様、それがわかってて、ここに来たんじゃ…」
「なっ? 妾がわざと、よみこが居ればルーは文句を言えないと思って連れてきたように聞こえるのじゃ」
「女神様、僕、そこまで言ってませんけど…」
「うぬぬ……ライトはしょぼいのじゃ! 次に行くのじゃ」
「はい、あ、次は生首達では行けないです」
「ヲカシノ山か?」
「はい」
「うむ……。じゃあ、草原にいるじゃろから、よみこ、それでよいな」
「えっ? はい」
「じゃないと、下手に呼ぶとアイツは迷い子になるのじゃ。ハロイ島の草原から出るなと言うてあるのじゃ」
「そ、そうなんですね」
生首達のワープで、ハロイ島の草原に移動した。バリアを張ってもらってるけど、雪山からの気温変化にはちょっと辛いものがある。
「クスクス、よみこちゃん、大丈夫ー?」
「えっ?」
私が顔を上げるとそこには、かわいらしい男の子がいた。その手には、棒付きキャンディを持っていて、ハイどうぞと渡された。
「ありがとう」
「ふふ、ボクのヲカシノ山に行きたいー?」
「ダメじゃ。ここに戻って来れなくなるじゃろ」
「えー。ベアトスさんが探しに来てくれるよー?」
「ダメじゃダメじゃ! さ、よみこ、次は、湖上の街ワタガシじゃ。その橋を渡るのじゃ」
「展望レストランで夕食にしましょう」
「うん、楽しみ!」
湖は、大きかった。まるで海のようで、琵琶湖サイズ以上ありそうだ。橋を渡って街に入ると、まだあちこちに空き地があった。
「ずいぶん広いですね。想像の数倍広い」
「よみこ様、たぶん琵琶湖の倍くらいあると思います」
「へぇ、やっぱり? 琵琶湖よりは広いと思ってたけど、倍? すごい」
通りには、綿菓子のワゴンが目に付いた。たくさんの人だかりになっている。綿菓子は人気あるんだ。
「なんだか、ちょっと原宿みたい〜」
「あはは、そうですねー。僕、原宿は行ったことないんですけど」
「そうなんだ。あ、綿菓子、いろいろな色を重ねたレインボーっぽいやつも売ってたりしますよ。平成からあったからテレビで見たことない?」
「そう言えば…。今度、試してみようかな」
「なんじゃ? 綿菓子の新作か?」
「ええ、よみこ様から、いいアイデアをもらいましたよ」
「ふむ、そうか。楽しみじゃ」
そして、オフィスビルのような塔の最上階のレストランで夕食を食べた。なぜか、ヲカシノさんも一緒だったんだけど。
昼に食べたビュッフェより、格段に美味しかった。塩だけじゃなくて、いろいろな調味料が使われている。
「すごい景色ですね。高い建物がないんだ」
「この世界は、目立つものはすぐに破壊されちゃいますからねー」
「えっ…」
「高い塔は、だいたいが魔導塔じゃからな。それを消せば、大きなダメージになるのじゃ」
「だから、破壊される?」
「うむ。ここも頻繁に攻撃されておる」
「えっ? 全然、そんな感じはしなかったですけど」
「ヲカシノ様が、ほとんど蹴散らしてくれてるんです」
「あ、戦闘狂でしたねー」
「ん? ボクそんなに暴れてないよ?」
「適材適所じゃ。そろそろ次へ行くのじゃ」
「あ、足湯を見てみたいです」
「よみこ、泳ぎは得意か?」
「いやいや、足湯って泳ぐ場所じゃないですよね」
「よみこはライトみたいなことを言うのじゃ。しょぼいのじゃ!」
「あはは、しょぼいのじゃ! いただきました」
「むぅ? なんじゃ? 変な奴じゃの」
夕食を食べた後、足湯にやってきた。トレビの泉をイメージしたのだろうか? かなり巨大だけど…。
しかし、ものすごく混んでる。
「混んでますね」
「ちょっと譲ってもらうように言ってきますね」
「ライト、そこまでしなくて大丈夫。見たかっただけだから。あ、代わりにモヒート風味のポーション飲んでみたいんだけど」
「ん? いいですよー。でも味はイマイチですよ? 完成度が低いから」
そう言いながらも、1本渡してくれた。栄養ドリンクサイズだ。蓋を開けてみると、ミントの香りがして爽やかだ。飲んでみると、確かにモヒートというよりは、ミントジュース?
でも、身体の中を駆け巡っていくエネルギーに驚いた。疲れが一気に吹き飛ぶような感じだった。
「炭酸が入ってないからかな? でも美味しい」
「ふふ、よかった〜」
「次、行くのか?」
「一応、全部行くんですよね?」
「うーむ。仕方ない、行くか」
生首達のワープで、次の場所へと移動した。
ヒュン! ドゴゴッ!
「えっ!?」
そこは、まさに戦乱の真っ最中だった。ライトがすぐにバリアを張ってくれたけど、私(読み娘)は、いつ死ぬかと、悪い汗が出てきた。
ブァサッと、そこに黒い影が現れた。
「何やってんの? せ・ん・ぱ・い」
ラスボスかと思うくらい、ド迫力な黒いドラゴンがそこに居た。
「うん、僕の物語を見守ってくれてた方を案内してるんだ。いま、これ、何してんの?」
「あー、また魔王の地位狙いの内乱中だ。どうせマーテル様が勝つに決まってるが……あ、近寄ると死ぬぞ」
「わかったよ、アダン。よみこ様、ここがカリン峠です。次の場所に行きますね」
「う、うん」
そして、やって来たのは、緑がまぶしい草原だった。
「イーシア湖?」
「はい、僕がアトラ様と出会った地です」
「すごいキレイな場所だね。まだ、さっきの戦火で、心臓バクバクして、のどカラカラだけど…」
「だから一応、止めたのじゃ」
「じゃあ、イーシア湖の水、飲んでみます?」
「ぜひ!」
「ふふっ、リュックくん!」
ライトに呼ばれて、肩に付いていたポーチがスッと消え、リュックくんが現れた。銀色サラサラ髪のモデルっぽいイケメンだ。
スッと消えた瞬間、もうここに戻ってきていた。
「よみこ、飲んでみなー。たぶんビビるぜ」
私(読み娘)は、リュックくんからペットボトルのようなものを受け取った。一口飲んで驚いた。止まらない。一気にゴクゴクと飲み干してしまった。
「へぇ、いい飲みっぷりじゃねーか」
「リュックくん、それはお酒に使う言葉だよ」
「ふぅん、ま、いいじゃねーか」
「ふふ、何してるの?」
後ろを振り返ると、青い髪のニコニコした女性がいた。20歳前後にみえる。頭には耳がついている。
「アトラさん?」
「ふふ、アトラだよー。よみこちゃん、これまでずっとありがとう」
「いえ…」
「さて、よみこ、答えはわかっておるな?」
「ん? あー、いろはにほへとちりぬるをわか……ですね」
「そうじゃ。イロハかるたじゃ」
「実は、もともとわかってましたよ」
「なっ? なんじゃと? よみこは天才なのじゃ」
「あはは、それほどでも〜」
そう言っていると、私(読み娘)の身体が白く光り始めた。えっ? どういうこと?
「よみこ、そろそろ時間じゃ」
「よみこちゃん、ありがとう」
「よみこ、また、どこかで会えるかもな」
「よみこ様、これまでお付き合いいただきありがとうございました。お元気で。また、よかったら物語に遊びに来てください」
「うんうん、みんなまたねー」
強く白い光に包まれ、私(読み娘)は、イロハカルティア星から地球へと戻った。
目が覚めると、激しい転移酔いだ。
(ポーションもらってくれば良かったーー)
皆様、これにて完結です。
最後まで応援してくださってありがとうございました♪
この作品は処女作ですが、最後まで書き終えることができたのは、皆様のおかげです。本当にありがとうございました。
【最後にお願い】ブックマークは、枠に余裕がある方は、そのまま外さないでいてほしいです。これだけたくさんの方にいいねと思ってもらえた記念に残してもらいたいんです。
外れると悲しいので…。←(わがままですみません)
あ、更新通知は外してください。ぼちぼち修正はしますが、大きく話を変えることはないですから。
これまで読んでいただき、ありがとうございました♪




