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20、女神の城 〜 はじめての魔法袋

ブックマーク、評価、またまたありがとうございます。めちゃ嬉しいです!

これまで、毎日2話ときどき3話を投稿していましたが、明日からは、毎日1話ときどき2話に、投稿ペースを変えさせていただこうと思います。投稿時間も 相変わらずバラバラになるかと思います。すみません。どうぞよろしくお願いします。

「むちゃぶりだ…」


 この星を守護する女神イロハカルティア様は、コロコロとすぐに気分が変わる。

 拗ねたかと思うと次の瞬間には笑顔になっていたり、ダメだと言っていたのに急に許可すると言ったり。


 そう、実戦経験のない僕は、Aランク冒険者でさえ遭難するような危険な場所に行けるはずはない。


 危険だからと、女神の落とし物ミッションは、Aランク以上限定なのだ。

 僕は登録したばかりのGランク。一度も簡単なミッションさえ受注した経験はないのだ。


 女神様は、以前、行かせるつもりはないと言っていた。なのに、急に、許可する…というか、逆に行けとおっしゃっている。


 僕は、あまりにも困惑していた。




「あの……僕には、まだ無謀だと、こないだおっしゃってませんでしたか?」


「ライト、おぬしは妾を信用しておらぬのか?」


「ん? 意味がわかりませんが…」


「妾が許可するということは、無謀じゃないってことじゃ」


「でも、無謀だって言って…」


「あのときとは状況が変わったのじゃ。敵もな、変な奴が出てきよったのじゃ」


「もしかして……アンデッド系の?」


「わからぬ…」


「へ? わからないのになぜ?」


「奴は、認識阻害を得意とするようじゃ。ここからだとよく見えぬ。とにかく、先に行ったふたりが太刀打ちできぬ相手ということじゃ」


「えっと…」


「おそらく、悪霊系じゃな」


「あ、あの呪詛のような?」


「いや、呪術系ではないのじゃ。魔物に悪霊が取り憑いておるか、もしくはアンデッドじゃろな」


「……僕は…」


「自信がないとか言ってられぬぞ。ライトの知り合いじゃろ? あの警備隊の男は」


 そう言って、女神様は、スッと右手を上にあげた。すると、その戦場のような光景が、まるでスクリーンに映し出されるように浮かんだ。



「あ! レオンさん!」


 何人もの数えきれないくらいの人が、そこには倒れていた。レオンさんも、あちこちから血を流して座り込んでいる。


 そして、何体ものバケモノが、立っている2人と交戦中だった。そのバケモノには、攻撃がほとんど当たらないように見える。


 そして、その映像は、スッと消えた。


「ライト、おぬしが戦えなくとも、転がっておるやつらの回復はできるじゃろ。いま、あの場に回復魔法を使える者はひとりしかおらぬ。そやつは、魔力切れで他のやつらと一緒に転がっておる」


「……そうですね、あ、でもポーション、足りるのかな?数、数えてなくて…」


「は? そんなもの、うでわに聞けば、中身を表示するのじゃ。常識じゃ!」


「え? どうやればいいんですか?」


「いろはちゃん、全然説明してないのね。ライトくん、うでわに触れて、中身確認を意識すれば、中身のリストが頭に浮かぶはずよ。やってみて」



 僕は、ナタリーさんに言われように、女神のうでわに触れ、中身は?と考える。すると、頭の中に、リストが出てきた。


 銀貨 13

 銅貨 100

『MーI 』22

『PーI 』286


 えーっと、『MーI 』は、カルーアミルク風味の魔ポーション。『PーI 』は、モヒート風味のポーションだったよね。ポーション、けっこうたくさんある!



「出てきました。便利ですね」


「ふむ。22本しかないのか……もっと作るのじゃ!」


「えっ? 他の人にも見えてるんですか? 中身リスト」


「見えないわよ。いろはちゃんが覗いてるだけよー。ほーんと、エッチねー」


「なっ? な、なんで、またそんな濡れ衣を…。妾はそんな破廉恥ではないのじゃっ」


(そっか。他の人には見えないんだ。よかった。見られると断わりにくいもんな…)



「あ! タイガさんは、もう行ってるみたいっす。早く来いって、怒ってるっす」


「そうね、あ、でも、ライトくん、何も持ってないわよね? あのフルーツナイフはお店に返したし」


「あ、ナイフ、すみません、忘れていました」


「ふふっ。いいのよ。ライトくんのフォローするっていう約束だったじゃない」


「ナタリーさん、ありがとうこざいます」


「じゃあ、ウチで揃うものは持って行ってください、お代は後で構いませんから」


「ライトが貧乏なのは、バレておるのじゃ」


「っ……とりあえず何が必要なのですか?」


「そうねぇ、まずは魔法袋かしら? 戦闘時は、うでわをいちいち開いてる場合じゃないもの」


「なるほど。魔法袋ありますか?」


「取り揃えてますよ。容量によって値段は変わりますが…」


「一番安いので、お願いします」


「あ、リュックの中にも、ポーションが出来ておるのではないか? 甘くない方のポーションなら売ってしまってよいのじゃ」


 あ、確かに、リュックはそれなりに重い。中を開けてみると、うん、それなりに出来ている。


「あ、じゃあ、ポーションと交換してもらえると嬉しいです」


 僕は、リュックの中からお店のカウンターに、モヒート風味のポーションをどんどん出していった。

 一番安い魔法袋は、銀貨30枚だということで、ポーション30本と、交換してもらった。


「逆に、ウチが得した感じだねぇ。珍しい物を仕入れさせてもらって」


「いえ、こちらこそ、助かります。あと、フルーツナイフのような小振りなナイフありませんか?」


 僕はさっきの光景を思い出していた。


 あのバケモノがアンデッド系なら、倒れている人達の身体の中に、何かされたかもしれない。ナイフはある方が安心だ。


「調理用のナイフでいいなら、これが一番小さいかな?」


 ケーキ屋で借りたフルーツナイフよりもさらに小さめだったが、刃先は鋭い。よく切れそうだ。


「あ、はい。それでお願いします。お代は?」


「あー、これは安物だから、おまけしとくよ。また珍しいポーション、仕入れさせてくれればいいから」


「あ、ありがとうこざいます。はい、あ、でも、僕はここに転移は…」


「妾が、迎えに行ってやるのじゃ!」


「……は、はぁ」


(お迎え1回で、いったい何本取られるんだろ…)


 そして僕は、魔法袋に、ポーションと魔ポーションを適当に放り込んだ。


(どれくらい入るのかな? それに、どれくらい必要になるかも、わからないよね)


「ライトが持っておるポーションの10倍は入るのじゃ! 全部入れるでないぞ。魔法袋を奪われたら全て失うのじゃ」


「あ、そっか、そうですね。うでわなら…」


「うでわが奪われるわけはないのじゃ。ただ、戦場には向かぬ。取り出すには時間がかかるからの」


「魔法袋ならすぐ出せるのですか?」


「腰に装備せよ、すぐにわかるのじゃ」


 僕は、魔法袋についているベルト状のものを、腰に巻いた。すると、フワンとした感覚のあと、重さがなくなった。でも、魔法袋は腰にぶら下がっている。


「えっと、これで、どうすれば…」


「思い浮かべたものがすぐ飛び出してくるのじゃ。入れるときも、装備したままでよい。入るのじゃと念じれば、手に触れておるものが勝手に入るのじゃ」


「なるほど」


 僕は、モヒート風味のポーションを思い浮かべた。その瞬間、目の前に1本、現れた! そして、入れと念じると、スッと消えた! す、すごい!


「中身を一度に出すことも出来ますが、戦場で中身をぶちまけないように、1つずつ出すことをオススメしますよ」


「わ、わかりました。気をつけます」


「あ、剣や盾はお持ちですか?」


「えっと、持ってないです…」


「じゃあ…」


「それは不要なのじゃ! ライトは、その辺のチビっ子よりも弱いのじゃ! 剣と盾があっても邪魔なだけじゃ」


(ひ、ひどい…。事実だけど…)


「そ、そうなんですね。じゃあ、鎧などの装備は?」


「ライトは、体力もないのじゃ! 鎧なんか身につけると歩けぬのじゃ」


(……はは)


「じゃあ、魔導ローブですね。すみません、ウチでは取り扱っておりません」


「かまわぬのじゃ! ライトに攻撃は当たらぬ、霊体化するからの、それに透明化もするのじゃ。組み合わせれば、どこにおるかの気配すら消えるのじゃ!」


(えっ、もしかして、すごいんじゃ?)


 いや、ダメだ。どうせまた反省することになる。僕はチートではないんだ。いい加減に、ヒーロー願望、僕の頭の中から消えてくれないかな…。




「準備は、大丈夫っすか?そろそろ行かないと、タイガさんがうるさいっす」


「妾が近くに飛ばしてやるから、焦らずともよい」


「まじっすか! 助かります。転移陣、ちょっと遠いっすからね」


「当たり前じゃ。物騒な場所に転移陣を作るバカはおらぬのじゃ。すぐ壊されてしまうのじゃ」


「転移陣? って…」


「冒険者が使っておる常設の転移魔法陣じゃ。転移魔法を使えぬ者でも、転移陣を使えば転移できるのじゃ」


「へぇ、すごっ。常設ってことはあちこちにあるんですか?」


「街の近くにはないのじゃ。魔物もうっかり運ばれることがあるからの。厄介なところへ行く冒険者のために作ったのじゃ。何百あるかは覚えておらぬ」


「何百! すごい」


「ただ、使えぬものもあるからの。絶賛稼働中は100くらいじゃ」


「でも、すごく便利そうですね」


「む? ライト、先に、妾の『落とし物』を拾いに行くのじゃ! タイガが参戦したことで、やつらのたまり場がガラ空きなのじゃ!」


「え? あそこの『落とし物』は誰も…。あれは潜れないんじゃ?」


「ライトなら余裕じゃ! 泳ぎは得意か?」


「えっと、普通程度かと…」


「じゃあ、問題ないのじゃ。壁の中にもいくつか埋まっておるから、全部拾ってくるのじゃ!」


「え、あ、はい」


「ジャックは、ライトの護衛をしてやってほしいのじゃ。ライトは、紅芋虫レベルでも倒せぬのじゃ」


「えっ、そんなにっすか? り、了解っす」


「めちゃ弱い虫なんですか?」


「一応魔物っす。チビっ子が、よく叩き潰してますよ。腹の中に赤い芋みたいなんが入ってて、それを揚げると旨いんすよ」


「この世界のチビっ子、すごいですね…」


「あはは。ライトさんは、まだ赤ん坊のようなもんですから、これからっすよ」


「はぁ」



「ライト、念のため、これを持っていくか?」


「なんですか?」


「固定値回復のやつじゃ。魔力1,000だがの」


「え! 僕なら全回復じゃないですかっ」


「いや、今はこれでは全回復しないのじゃ。魔力切れで倒れると、最大値がかなり上がるのじゃ!」


「僕の魔ポーションだと100か10%しか回復しないから、固定値1,000はすごいです」


「よし、じゃあ、交換なのじゃ! その方が気を遣わなくてよいじゃろ?」


「……確かに。何本渡せばいいんですか?」


「1対1の交換でどうじゃ?」


「え? それなら僕が得するんじゃ?」


「は? 妾は、10%回復させるのに、これ何本飲まなきゃならないと思って…おる……あ、じゃなくて、なんでもないのじゃ」


(ん? 歯切れが悪い。もしかして、僕の方が損なのかな?)


「交換しないのじゃな?」


「しますっ!」


 僕は、魔法袋から1本取り出した。あれ? 女神様は、5本も持っておられる…


「5本交換じゃ! ただし、これは絶対売るな、なのじゃ!」


「え? 高いのですか?」


「金貨1枚じゃ」


「えっ! ってか、金貨って、銀貨何枚ですか?」


「はぁ? ライト、知らぬ間に また頭でも打ったのか? 銀貨100枚に決まっておる」


(ってことは、銀貨1枚が1万円だから100万円? ひぇ〜)


「そ、そんな高価なんですか…」


「そもそも魔ポーション自体が、あまり地上には存在しないからの。これを地上で売ると混乱するのじゃ」


「わかりました…」


「じゃあ、準備はよいか?」


「よいっす!」「はい!」


 グラッと景色が、揺れた。きもちわるっ…

 僕は、また、意識を手放した…



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