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173、女神の城 〜 ケーキボール争奪戦?

 僕は、いま居住区の自分のアパートにいる。


 1階店舗を生首達の遊び場にするための改装を女神様に任せていたが、なぜか巨大なジャングルになっていた。


 そして、いきなり、かくれんぼの鬼にされ……ここにいるチビっ子達を探し出さなければならなくなった。


 女神様は、こないだ会ったときは、まだ歩けない赤ん坊だった。今は少しは成長したのだろうけど、身体だけでなく精神年齢も、幼児化しているのかもしれない。


 僕は、リュックくんを直せるのか聞きたいのに、女神様は、強制的にかくれんぼを始めてしまったんだ。


 女神様には『眼』の能力を使うのは反則だと言われたが、そんなこと気にしていられない。僕は、最速で女神様を見つける方法を考えた。卑怯でも何でも、使えるものはすべて使おう。




「この部屋の中に隠れている子は何人いるの?」


 僕がそう言うと、頭の中に映像が流れてきた。写真のように、あちこちが映し出された。あれ? 猫が居ない。ということは女神様は猫ではないのか。


『天使ちゃんを使うのも卑怯じゃ!』


 ということは、やはり猫じゃないんだね。頭の中に流れる映像をもう一度、注意深く確認した。20人以上いるね…。


 あちこちで、音を立てないようにジッとしているチビっ子達。だが、所詮はチビっ子、しびれを切らし始めている子もいた。



 僕は、少しあちこち歩き回ってみた。


 すると、黄色い水の玉が、空中に浮かんでいる場所があった。ん? フルーツビールっぽい匂いがする?

 その水に触れると手ですくえた。匂いを嗅ぐとやはりパナシェ風? 手ですくった水を飲んでみると、クリアポーションだ。


 手が使えない種族に変身することがあるからか、飲みやすいように、こんなことしてるんだね。


 この場所には、木のテーブルもある。その上には、瓶に入った飲みかけのジュースが何本か置いてあった。


 そういえば、こないだ女神様が、猫のままだと味覚が変わるから、味がわからないとか言ってたっけ? おやつを食べるときは、あの黄色い水の玉で、人の姿に戻るんだな。


(よし、これでいこう)



「皆さん、聞こえますか?」


「「はーい」」


「返事しちゃダメだよ。作戦だよ」


「し、しまった!」



「おみやげを買ってきました。このテーブルに置いておきますね。でも、人数分はないみたいです。僕は、女神様の猫を探しますから、早い者勝ちでどうぞ」


 そう言って、テーブルの上に、さっき買った大量の袋入りケーキボールを並べた。さらに紅茶っぽい飲み物も置いておいた。


 あちこちで、かさかさと音がするが、かくれんぼ中だからか姿は現さない。


(ふふっ、よだれ垂らしてる子もいるよ)



 僕は、この場所を離れた。すると、あっという間に何人かが、ケーキボールの袋を掴んでいた。

 そして、黄色い水の玉に、片手をちゃぽんと突っ込んでいる。すると、パッと人の姿に戻った。


 飲まなくても、クリアポーションはかけても効くけど、あんな風に片手を突っ込むだけで、呪い解除できるんだ。


 チビっ子達は、あたりを警戒しつつ隠れながら、ケーキボールを食べていた。その目はキラキラと輝いている。ワクワク、うずうず、楽しくてたまらないという表情だ。


 僕が全部『見え』てることは、チビっ子達は知らないのだろう。僕も気づかないフリをしておこう。



 僕があちこち歩き回ると、かさかさと音は聞こえるが、チビっ子達は姿は現さない。ばったり遭遇したら、捕まえようかと思っていたが、みんな必死に逃げている。


 そして、僕が通過すると、次々とケーキボールの袋を取りに行く。呪いを解除して人の姿に戻り、おやつタイムが始まっていた。


(あとまだ魔物なのは…)


『ケーキボールを使うのは反則じゃ!』


 ん? 怒った顔をしている魔物がいる。他の子たちと見比べても、うん、あれだね。見つけた!


 僕は、その魔物の目の前に、生首達を使ってワープした。そして、その魔物の頭にタッチした。


「どわっ! 天使ちゃんを使うのは…」


「はい、捕まえた。なんですか? その魔物…。らしくないですね。かわいいのが好きなんじゃないんですか?」


「チッ! 反則なのじゃ! 目の前にワープしてくるなんて、反則なのじゃ!!」


「じゃないと、捕まえられないでしょう?」


「うぬぬ……ひどいのじゃ。せっかく、ぶさいくなデスゴリラに化けておったのに…」


「へぇ、恐そうな魔物ですね」


「ふんっ、なぜ妾を狙ったのじゃ」


「僕は女神様に用事があるから、城に来たんですから」


「女神は寝ておる。妾は、ティアじゃ」


「ん? ティア様?」


「ちがーう! ティアちゃん、じゃ!」


「はぁ、わかりました。名がある方がわかりやすくていいですもんね」


「子供達が付けた名じゃ。子供達しかこの名は知らぬ。大人に言うでないぞ?」


「えーっと、僕は、大人じゃないのですか?」


「ライトは、かくれんぼで妾を捕まえたから特別に教えてやったのじゃ」


「それはどうもです」


「うむ。で? 妾の分のケーキボールは?」


「買ったのは全部、テーブルに置いてますが?」


「チッ、もう無くなっておるのじゃ」


「だから、早い者勝ちだと言いましたよ?」



 女神様は、ぶすっとふくれっ面をされているようだが、デスゴリラという見たことのない魔物姿のためか、僕は思わずバリアをフル装備かけた。


「なんじゃ?」


「い、いえ、なんだか見た目がこわくて…」


「ライトは、しょぼいのじゃ! 外のを察知したのかと思ったが、勘違いだったのじゃ」


「ん? 外の?」


『みんな、かくれんぼは終了じゃ。こっちに来るのじゃ! 急ぐのじゃ』


「突然、念話飛ばして….…何かあったんですか?」


「ここはライトの家じゃ! なんとかするのじゃ」


「へ?」


「この星の者でない奴が、ここに向かってきておる。狙いは子供達じゃ」


「え?」


「よりによって、こんなぶさいくな姿のときに来おって…。女神が寝ているから堂々と来るのじゃ」


「あの……もしかして誘拐とか?」


「スカウトじゃ。誘拐は地上や地底の頭の悪い奴らのすることじゃ」


「スカウト? 他の星との行き来はできないのでは?」


「この星に住みついておる奴らじゃ。居住区を開放しているときは、毎日何人も来るのじゃ」


「えっ?」


「自分達の配下や嫁や夫にしたいのじゃろ。なぜか知らぬが、奴らは神族の子孫の子供を好むのじゃ」


「もしかして、子供達を集めて遊んでおられるのは、奴らから守るためですか」


「うむ。それもある」


「一緒に遊びたいから?」


「子供達を笑顔にするのは、妾のつとめじゃ。親達は、みな厳しく育てるからの。甘やかす者がいないと、子供達がのびのび育たぬようになる」


「えっ!」


「なんじゃ?」


「いや……まともな、神様のようなことを言われて思わず…」


「なっ? 妾にケンカを売っておるのか? 買うぞ? 妾は買ってやるぞ?」


「え、遠慮しておきます……いまは、それどころじゃないですよね」


「うむ、奴らは入り口付近でゴソゴソ話をしておるが……ビビっておるようじゃの」


「そうなんですか?」


「ライトが居るのが、わかったようじゃ」



 バタバタと、チビっ子達が走ってきた。


「イロ…じゃなかった、ティアちゃん、また変な人が来たの?」


「そうじゃ。みんな揃っておるか?」


「お昼寝しちゃって起きない子がいるの」


「じゃあ、僕、行ってきます」


「うむ。もう来ぬようにガツンと言ってやるのじゃ」


「はぁ」


 入り口の方を『見る』と、男二人が店に入ってきたところだった。ジーっとしていて動かない。室内のサーチでもしているのか。


 さっきのケーキボールを置いていたテーブルの近くで、眠っている子が二人いる。


 奴らは、子供二人を見つけたようだ。まっすぐに子供達の方へと向かっていた。


 僕は生首達のワープで、子供達のいる場所に移動した。ちょうど、奴らもその場に現れた。



「あの、何かご用ですか?」


 僕は、あえて、素知らぬふりをしてたずねた。


「えっ! あ、いや、貴方は?」


「僕は、この部屋を借りているライトです。ここは、子供達の遊び場として開放しているので、大人の方は…」


「ここの借り主?」


「はい、そうです。普段は不在がちですが、祭りなので…」


「そ、そうなのですね。いや、何だか不思議な店だと思って、惹きこまれてしまいましてね」


「そうですか。ここは僕の配下に守らせていますから…。下手に入って来られると、侵入者だと思って撃退されちゃいますから、気をつけてくださいね」


「えっ? そんな危険な?」


「あ、ゴリラみたいなアレか。まさかデスゴリラの子供か?」


「ん?」


 彼らの視線の先には、デスゴリラに化けた女神様がいた。いつの間に、ここまで出てきたんだろう?

 しかし……見た目、ほんとこわいよね。目が赤く鋭く光っていて、いまにも飛びかかってきそうに見える。


「いろいろいますから、気をつけてくださいね」


「そ、そうか。邪魔したな」


 そう言いつつも、彼らは中の様子を探っているようだった。


「まだ、何か?」


「えっ? あ、いや。なぜ子供達を集めているのかと思って…」


「あー、ここでワープワームを遊ばせているので、子供達が集まって来ているのだと思いますよ」


「えっ! ワープワームの支配権を持っているのですか」


「ん? はい。それが何か?」


 ワープワームと言うと、彼らは少し警戒をしたようだ。なるほど、これでいこうか。


「いえ、若く見えるので、驚いて…」


「神族の子孫でそんなチカラを持つ人がいるとは」


「僕は、子孫じゃないですよ。女神様の代行者です」


「えっ!! 神族? しかも番犬?」


「そうですよ。あ、そうそう、今までと同じだと思わない方がいいですよ」


「どういう?」


「女神様は平和主義だし、自ら干渉しないですが、今は、貴方達が番犬と呼ぶ16人が代行者をしています。僕達は、直接干渉もしますし、害になる者は排除します」


「えっ…」


「女神様が眠っているからでしょうが、各地で貴方達と同じ、外からの迷い子がいろいろ騒ぎを起こしてましてね」


「は、はぁ」


「さっきも、迷惑な神ひとり、お帰りいただいたところです」


「え? 殺したのか!」


「はい、光の粒子にならないと、星に戻れないようですからね。今頃はもう復活されているでしょうけど」


「そ、そうか…」


「貴方達のお仲間にもお伝えください。神族の子孫をさらおうとしたり、地上や地底で騒ぎを起こすなら、排除しますと」


「えっ! あ、あぁ、知り合いに言っておくよ」


「ふふっ、助かります。お祭り楽しんでいってくださいね」


 僕は、ふたりに営業スマイルを浮かべた。彼らは、ペコと会釈をして、そそくさと店から出ていった。




「ライトは、怖いことを笑顔で言うのじゃ。よけいに怖いのじゃ」


「もう来ないように、なんとかしろとおっしゃったじゃないですか」


「怖すぎるのじゃ。ちびりそうになるのじゃ」


「それより、リュックのことですが…」


「猫に変身するポーションが、もうないのじゃ」


「ん? ダブルポーションですか?」


「うむ。ないと困るから、ライトのお願いも聞けないのじゃ」


「は?」


(サファリパークごっこしてるからじゃん…)



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