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159、女神の城 〜 女神様の決意表明?

 僕は、いま女神様を探している。


 これまでに立ち入ったことのない、女神様の私室のある城へと向かっていた。すると、僕の目の前に、突然小さな光る何かが飛び出してきた。


「わっ! びっくりした」


「あら、ハデナに居た子じゃない。また驚かせてしまったわね。あなただと思わなかったから、ごめんなさいね」


「えっ……妖精さん…」


「なぁに? まだドキドキしているのかしら? 私がキレイなのは、仕方ないのよ。心臓に悪いんだったわね、だから少し離れてあげたわよ?」


 そう言いつつ、彼女は、僕の目の前をクルクルと飛び回っている。これで離れているつもりなのだろうか…。


(あー、この人、こういう人だった)


「えっと…」


「もう、ほんとに正直な子ね〜。私があまりにもキレイだから、ドキドキして言葉がうまく出てこないのね、わかるわぁ」


(この人をどう取り扱えばいいのか、わからない)


「あの、なぜこの城に?」


「イロハちゃんが、クリスタルをすっからかんにしちゃったからよ〜。転移魔法陣が動かせないの」


「大変ですね」


「だから、クリスタルに魔力を注いでもらおうと思ったんだけど、ここで待てと言われたのよー」


「そうなんですか」


「あなたは?」


「あ、僕は、女神様に渡す物があって…」


「そう、でも、誰も通しちゃダメって言われてるのよね〜」


「もしかして、誰かに叱られるからでしょうか?」


「えっ? 何? その話、聞きたいわ! どういうこと?」


「えーっと、あの、実はですね…」


『なんじゃ! 何の話じゃ!』


「いやーん、頭が痛いわ〜。なんなのよ、イロハちゃん」


『ライト、入ってよいから、そのやかましい婆に、何も言うでないぞ』


「え、あ、はい」


「なぁに? イロハちゃんが必死だわ! 知りたいわ〜」


「綺麗な妖精さん、すみません、また…」


「ん? そう? ほんとに正直ね、わかったわ。またね」



 僕は、どっと疲れを感じつつ、妖精さんに軽く会釈をして、そのまま道なりに、奥へと進んでいった。



 そして、城のアーチ状の石の門をくぐると、中庭のような場所が広がっていた。

 そこは、緑が濃く、たくさんの花が咲き乱れていた。ガーデンと呼ぶのがふさわしいと思える、ハッと息をのむほど美しい庭だった。


 あちこちに木製のテーブルやイスが置かれているのが目についた。

 一見すると無造作のように見えるけど、この庭の景色を楽しむために、計算されて置かれていることがよくわかる。

 おそらく、どのイスに座っても、それぞれ違う花や景色が楽しめるのだろう。


 女神様って、食い意地のイメージしかなかったから、僕としては少し意外だった。でもこの庭で、ゆっくり景色を楽しみながら、紅茶を飲んでいる女神様の姿を想像すると、確かに、しっくりくる。


 そっか、女神様は、妖精だもんね。自然の中で、ホッとする時間を大切にしているのかもしれない。



 さらに、中庭を道なりに進むと、白い布製の大きなイスがポツンと置いてあった。イスというより、小型のハンモックかな?


 そして、その白いイスの上には、猫っぽい動物がいた。いつもの女神様が魔力で作り出す猫とは少し違っていて、サイズは少し大きめだが、あどけない表情をした、まだ子猫のようだった。


 僕の姿を見ると、その子猫は、ぷいと知らんぷりをした。あれ? この、わざとらしい知らんぷりは……女神様?


「もしかして、女神様ですか?」


 しかし、子猫は、また逆の方向を向いて、知らんぷりをしている。これは……確定だね。


「なぜ、猫なんですか? ん? 虎? ヒョウ?」


「ちがーう! 猫系の獣人じゃ」


(やっぱり…)


「獣人じゃなくて、猫になってますよ?」


「獣人は、獣の姿を持つのじゃ、青いワンコもそうじゃろ」


「あ、そっか。いや、それよりなぜ猫になってるのですか?」


「おぬしのポーションを飲むと、化けるのじゃ」


「あー、XYZ風味の種族逆転? 人族になるのでは?」


「人族になったら、次は魔族になるのじゃ」


「2本飲むと、猫になるんですか」


「ちがーう! 選べないから、猫になるまで飲むのじゃ。今回は2本で猫になったから奇跡なのじゃ」


「へぇ…」


「次は、猫だけに化けるポーションを作るのじゃ」


「いや、それは…。それより、新作の味見をしてもらおうと思ったんですけど…」


「さっき、兵に配っておったのは、いらぬのじゃ。サッパリしていると言っておった。きっと不味いのじゃ」


「あはは、あれとは別の新作ですよ」

 


 僕は、魔法袋からファジーネーブル風味の30%回復魔ポーションを取り出し、猫の目の前に置いた。


 すると、ガバッと両手で瓶をつかんで、ワナワナとしていらっしゃる。


(あれ? 飲まないの?)


「味見しないんですか?」


「この姿だと、味覚が変わるから、味はわからぬのじゃ。やっとできたのじゃな」


「はい、女神様がリュックくんに注文したんですよね。でも、魔ポーションって、作るの大変みたいですよ〜」


「それは、リュックの修業が足りないのじゃ。ライトが甘やかすから、そうなるのじゃ」


「えーっと…」


『おい、女神にクリアポーションを飲ませろ。いや、ぶっかけてやれ』


(えっ? それはダメでしょ)


「なんじゃ? 妾の前で、コソコソ話をしよって」


「あ、いえ、別に…」


「ギクッ! やばいのじゃ、見つかったのじゃ」


「え?」



 すると、僕の目の前に、ナタリーさんが突然現れた。そして、猫に化けた女神様に、パッと何かをかぶせて一瞬で捕獲されていた。


「もう! いろはちゃん、いい加減にしなさいよ」


(わ、怒ってる…)


「あ、ナタリーさん、あの…」


「ライトくん、もうほんと、叱ってやってー! いろはちゃんってば、めちゃくちゃなのよー」


「えっと、いつもめちゃくちゃな人だと思うんですけど…」


「何? まだ知らないのね? あ、だから、この姿に…」


「オババ、ひどいのじゃ!」


「ひどいのは、いろはちゃんの方でしょ!」


「えーっと…」


『クリアポーション、ぶっかければ?』


(ん? あ、そうだね。捕獲状態だもんね)


 僕は、クリアポーションを取り出し、蓋を開けた。すると、ナタリーさんにスッと奪われてしまった。


「元に戻せばわかるわね。さぁ、飲んで」


「イヤじゃ! せっかく猫になったのじゃ」


「ずっとそのままでいるわけにはいかないでしょ」


「妾は、眠っておるのじゃ」


「眠ってないでしょ。飲みなさい」


「イヤじゃ!」


「あの、ナタリーさん、かけても効きます」


「そうなの?」


 返事をするよりも先に、ナタリーさんは捕獲していた猫の頭から、クリアポーションをかけた。

 すると、猫は、女神様の姿に……え? 女神様?


 クリアポーションで変身が解除されたはずの女神様は、赤ん坊に近い幼児だった。よちよち歩きがなんとかできるか? そんな感じだったんだ。



「えっ? 女神様も生まれ変わって赤ん坊になったんですか!」


「うむ」


「違うでしょ! ほんとにもう、ライトくん、叱ってやってー」


「えっと、意味がわからないんですけど…」


「星の再生回復魔法で、星は生まれた頃に近い状態にまで回復したわ。星は、生まれたときが一番たくさんのマナエネルギーを持っているの。そのマナを使って、妖精達が、地上や地底の歪みを直していくのよ」


「すごい」


「星と生命をつなぐ女神も、星と共に、回復するから、生命エネルギーも、若返って最盛期の姿になるはずなの」


「ん? 最盛期?」


「それなのに、いろはちゃんが、無茶なことをしたから、こんなことになってるのよ…。失敗したら、消滅しちゃうところだったわ」


「えっ! 消滅?」


「妾は、失敗しないのじゃ。キチンと計算したのじゃ」


「えっと、何をされたのですか?」


「魔力値が下がらぬように下限設定したのじゃ、生命エネルギーを使ったのじゃ」


「ん? 全然意味がわからないです」


「それに、このまま成長するから、以前よりも最大魔力値は、圧倒的に高くなるのじゃ。以前の最盛期の値を、最低値にしたのじゃからな」


「うーん…?」


「どうせ、奴らは報復に来るのじゃ。腐っておるのじゃ! だから、妾がやるしかないのじゃ。そのために必要なことじゃ」


「撃退するために、魔力値を上げるのですか?」


「ちがーう! 妾がやるのじゃ」


「ライトくん、叱ってやってー」


「ん? 全然意味がわからないです…」


「いろはちゃんが、回復した生命エネルギーを使って、自分の魔力値が下がらないようにしたところまでは大丈夫?」


「えっと、なんとか」


「生命エネルギーを使っても、また輝きポーションを使えば回復できるからって思ってたみたいなんだけど、なぜか反転しちゃって……老婆じゃなくて、赤ん坊になっちゃったのよ」


「えっ!」


「そのせいで、変なことを思いついたみたいで…」


「変ではないのじゃ! これが一番良いのじゃ」


「何を思いついたんですか?」


「妾がやるのじゃ!」


「もう! ライトくん、叱ってやってー」


「えっと、何をやるか、わからないです…」


「あ、そうだったわね。話が途中ねー」


「はい」



「いろはちゃん、いま、かなりのスピードで成長しているのよ。あの演説をしたときは、立ち上がることもできない赤ん坊だったの」


「え? いつもの姿でしたが?」


「あの姿には、魔力を使って化けていたのよ。さっきの集合したときもね。いまのこの姿が、いろはちゃんの姿よ」


「1〜2歳に見えますね」


「ええ。成長するとともに、魔力の最大値も増えていってるのよ。いま、こんなんだけど、もう2,500万を超えたわ。全盛期は、2,000万ちょっとだったらしいんだけど」


「すごい、成長期!」


「このまま成長すると、青のトップの神々に並ぶかもしれないわ」


「妾が、追い抜くのじゃ」


「だからって……もう! 叱ってやってー」


「ナタリーさん、成長するから叱るのですか?」


「あ! ごめんなさい、肝心なところを話してないわね。タイガが、好きにすればええって言うから、調子に乗ってるのよー」


(だから、何を?)



 すると、赤ん坊の女神様が、僕を見上げて、まさかのセリフを口にしたんだ。


「妾が、この世界の最高神になるのじゃ!」


「えっ? 赤と青の勢力争いに参加するのですか」


「ちがーう! 別の星系をつくるのじゃ。中立の星を集めた第三の星系じゃ。赤と青が、手出しできぬようにするのじゃ」


「どうやって…」


「この世界で、妾が……イロハカルティア星が、一番チカラを持てば、奴らは手出しできぬのじゃ」


「すごい! 女神様、そんなチカラがあるんですね」


「ライトくん、いろはちゃんは妖精よ? いくら魔力値が高くても、戦闘力がそう上がるわけないわ。だから、この星が一番チカラを持てばって言い直したのよ」


「ん? 意味がわからないです…」


「この星が、侵略されないように強くなるということよ。つまり、この星を守る者達が、ってこと」


「ということは…?」


「神族、人族、魔族、それぞれが、星を守るために協力し、連携しなければならないわ」


「えっ? 仲が悪いんじゃ…」


「妾がやるのじゃ!」


(えー……まじ?)



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