157、女神の城 〜 ライト、城兵を選ぶ
いま僕は、女神様の城にいる。
トリガの里から、今度は城への集合命令で、僕は、ジャックさんと生首達のワープで移動してきたんだ。
居住区から女神様の私室のある城へと続く道にある、大きなコロシアムのような建物に、僕はいま、居るんだ。
建物の中では、女神様と、他の女神の番犬と呼ばれる側近が、その広い場所に集まっていた。
そこで、僕にはよくわからない、いろいろな連絡事項を聞いたんだ。
そしてこれから、率いる部隊が決められるらしいんだけど…。
「女神様、お待たせ致しました!」
元気すぎる大きな声が、広場に響き渡った。建物の造りのためか、声が響きやすいのかもしれないな。
「うむ。みな、入ってくるのじゃ」
「はっ!」
すると、次々とたくさんの人が駆け足で入ってきて、ピシッと整列した。すごっ! 軍隊みたい。あ、軍隊だよね、城兵って。
ピシッとしてる城兵達の表情は、様々だった。慣れた感じの人もいれば、緊張でカチンコチンな人もいる。
あ、そっか、増兵したって言ってたから、緊張してる人は、新たに加わった新兵なのかな。
「では、部隊長から、部隊の特長を簡潔に説明するのじゃ。そして、どちらの国がいいとか、何か希望があれば、それもついでに言うとよいのじゃ」
「「はっ!」」
そして、順に、部隊長からその部隊の特長についての話があった。増兵によって、どの部隊も半数は新兵になっているそうだ。
部隊長の好みなのか、武闘系ばかりの隊、魔導系ばかりの隊、バランスよく構成されている隊、の3タイプあるようだった。
そして、希望については、どの部隊も、地上での出番が多い所を望むと言っていた。
また、隠密行動が得意だとか、潜入調査が得意だとか、戦闘特化だとか、いろいろとセールストークを口にする部隊長もいた。
「わかったのじゃ。では、今回、地上担当を入れ替えたから、その新担当者に仕えたい者はおるか?」
(えっ、これ、僕のことだよね)
普通、新人の担当なんて、絶対嫌だよね。誰もいないよ。僕は、あまった部隊でいいや。ってか、部隊なんて、率いるの無理だと思うんだよね、僕。
「その新担当者は、ライトさんですよね?」
「そうじゃ」
「じゃあ、俺、やります!」
「ちょっと待て、俺も、希望します!」
「私の部隊が最適だと思います」
(えっ? 立候補が……3部隊も?)
「どうせなら、俺もライトさんがいいのだが…」
「ちょっと、おまえは戦闘狂だろう? 人族の国は退屈だと言ってたじゃないか」
「ライトさんは、他の神々から狙われるに決まっている。一番、楽しそうじゃないか」
(えっ……なに? この理由)
「そうか、ワープワームの件でも狙われる可能性が高いな…。じゃあ、俺も希望しようかな」
「私は、ライトさんが通常戦闘をしないから、私の部隊が最適だと思います。私の部隊は、8部隊の中で一番戦闘力が高い。貴方達には荷が重いでしょう?」
(え……僕、お荷物なの?)
僕が戸惑っていると、タイガさんが口を挟んだ。
「おまえら、何か誤解してへんか?」
「タイガさん、一体どういう意味でしょう?」
「おまえら、自分達が活躍できる奴につきたいのは、わかる。だが、ライトのことを、自分より弱い回復特化やと思ってるやろ?」
「自分より弱いかどうかとは…」
「私は、ライトさんが暴走すると、強いことは知っています。通常戦闘時の話を…」
「やっぱりな。ババア、なんで説明してへんねや? こいつら、ライトに仕えれば大活躍できると思っとんで」
「ふむ。じゃが、ライトは、ふだんはビビりじゃ。しょぼいのじゃ」
「オルゲン、セリーナ、おまえらはライトのことをチゲ平原で見て、どう思ったんや? ライトは暴走してへんかったよな?」
「俺は、敵にまわしたくないと思ったな。ライトが能力を使うと、俺にはライトの居場所が察知できなかった。青の神ダーラでさえ、正確にはつかめてなかったようだしな」
「私は、アンデッド相手に軽く放った雷撃や、闇の反射の威力に驚いたわ。回復だけじゃなくバリア展開も速いから、戦闘時に彼がいれば、どんな相手にも負ける気しないわね」
「えっ? チゲ平原で、ライトさんも戦闘に加わってたのですか?」
「ライトさんがいなければ、大量の死者が出たわよ。それに、女神様の再生魔法も、ライトさんが青の神ダーラの注意を完璧に引きつけたから、成功したのよ」
「ダーラに気づかれたら、妨害されただろうな。変に妨害され、もし溜めた魔力を失えば、滅びを待つことになったかもしれん」
「えっ…? そんな重要な役割を?」
「居住区の奴らにも、誰にも言うなよ? ライトの能力は、あまり知られていない。どこで漏れて、他の星の密偵に伝わるかわからないからな」
「は、はい…」
「ライトは、ビビりなのじゃ。じゃが、怒ると別人になるのじゃ。ライトに仕える部隊は、ライトに守られることになるじゃろ。逆にライトを守る必要はないのじゃ。誰もライトを殺せぬ。ライトが死ぬときは自滅じゃ」
(…自滅って)
「えっと、僕はまだよくわからないので、後からでいいですから。他の人から決めてもらえたら…」
「おまえ、アホか。おまえのを決めんと、話が進まへんねや。一番新人につく方が自由に好き勝手できるからな、どの部隊もおまえに仕えたいはずや」
しばしの間、シーンと静まり返った。部隊長は、それぞれいろいろと考えているようだった。
「ふむ。じゃあ、ライトが条件を出すのじゃ。自分の部隊は、どんな役割を担わせたいのじゃ?」
「え? 僕は、ぜんぜんわからないです。でも、僕と行動を共にするなら、やはり仲良くしたいです。主従的な関係より、友達みたいな方が僕はラクです」
「ふむ。仲良くとは、おなごがよいと言うておるのか?」
「へ? なぜ女性が出てくるんですか? 僕は、彼女いますから、他の女性と仲良くしなくていいんです」
「ふむ。では男がよいのか?」
「あの……女神様がそう言われると、変な意味に聞こえるのですが…」
「ん? 妾は、変か?」
「そういうわけでは…。もういいです」
「ふむ。ライトは相変わらず、変なことを言うのじゃ。まぁよい。で、ライトと友達になりたい者はおるか?」
女神様のその問いかけに、8人の部隊長は少し戸惑っているようだった。
自分が仕える女神様の側近と、友達になりたいとは……なかなか言えないよね。
「ライト、他には条件はないのか?」
「うーん、あ、僕、ギルドランクを上げなきゃいけないから、ギルドランクを上げたいと思ってる人がいいです」
「一緒に、ミッションを受注するつもりなのか?」
「あー、まぁ、タイミングが合えば」
「ふむ」
そう言うと、女神様は何か思案顔を浮かべておられたが、急に、パッとその表情が明るくなった。嫌な予感がする…。絶対、変なことを思いついたんだ。
「じゃあ、潜入調査が得意だと言っておった部隊が、ライトに仕えるのじゃ」
「やった! 俺の部隊ですね。ありがとうございます」
「ふむ、おぬしか…。ギルドランクは?」
「俺は、まだSSランクです。まだまだLランクは遠いので、ライトさんの条件に合います! それに、俺の隊は、ギルドランクは考慮していなかったので、低い者もいるはずです」
「あの、潜入調査が得意な部隊を僕につけることは、女神様が楽しくなるようなことなんですか?」
「なんじゃ? なぜ、妾が楽しくなるのじゃ」
「なにか、思いついたような顔をされていたから…」
「なっ? 気のせいじゃ。では、次を決めるのじゃ」
そう言うと、女神様は僕とは目を合わそうとはせず、次の選定に入ってしまわれた。
(絶対、なにか思いついたよね…)
女神様に聞きたいところだったが、僕のもとに、潜入調査が得意と言っていた部隊長が、その兵を連れて挨拶に来た。
「ライトさん、部隊長のペールです。よろしくお願いします」
「あ、はい、ペールさん、よろしくお願いします。あの、僕でよかったんですか? さっきは、立候補されていなかったから、もしかして、他に仕えたい人がいたのでは?」
「いえ、特に希望はありませんでした。俺は部隊長の中では一番キャリアが短いので、こちらから希望するなんて度胸はなくて…」
「あはは、よかった。無理矢理に、ということだと申し訳ないなと思ったのです」
「あの、ライトさん…」
「はい?」
「そんなに丁寧に接していただかなくても大丈夫ですよ。僕は、純血の神族ではありませんから、先輩だとか思わないでください」
「ん? 純血?」
「あ、あの、俺は随分、血が薄いんです。『眼』を持つ女神様の転生者は、何代も上の祖先です。だから、子孫の中では、孫までが純血と呼んでいて…」
「そうなんですね。でも、僕、この話し方は、誰に対してでもこんな感じなので……ダメですか?」
「い、いえ、ダメ出しなんて、しませんから、はい」
「よかった。じゃあ、普通に話しますね」
「はい、了解しました」
その後、部隊の兵が、それぞれ挨拶をしてくれた。でも、僕は、女神様の意図が気になっていて、兵の名をほとんど聞きもらしていた。やばい…。
「あの、ペールさん、その服なんですが…」
「はい、えっと、城兵の制服です。新兵にはまだ支給していないのですが、みな支給されますから」
「僕も着るんですよね? たぶん」
「はい、女神様の軍隊として共に行動するときには、そうなると思いますが…。お嫌いですか?」
「え? あ、うーん。カッコいいとは思うんですけど、僕は、ローブの方がいいというか…」
「あー、なるほど。軍服ですもんね。うーん…」
「いや、気にしないでください。それより他の方々のギルドランクが知りたいです」
そう言うと、みな、次々とギルドランクを言ってくれた。みんな、かたいんだよね…。緊張しているのかな?
ほとんどの人は、部隊長と同じ SSランクだった。あとは Sランク、Aランク、そして1人だけギルド登録をしていない人もいた。
「あの、もしよかったら、タイミング合うときに、一緒にギルドミッションを受注しませんか? 女神様が言うように、僕がショボいのがわかると思います」
「俺も、隊員達の実力をみるために、ギルドミッションを受注しようと思っていました。それなら、ライトさんも是非、ご一緒してくださると嬉しいです」
「よかった、じゃあ、少し落ち着いたら行きましょう」
「はい!」
僕の部隊の隊員さん達は、最初はすごくかたい表情だったんだけど、だんだんその表情は明るくなってきた。やっぱ、緊張してたんだね。
僕の後は、サクサクと割り振りが完了したようだった。そして、それぞれ挨拶をしているようだったが、その雰囲気は、まちまちだった。
僕の部隊が一番のんびりとしているようだった。うん、変に緊張するより、和気あいあいな方がいいよね。
そして、城兵達はこの場所で、訓練があるらしく、女神様は、これにて終了の挨拶をされた。
僕は、ジャックさんに誘われて、この広場から出て居住区に向かうことになった。
僕が借りた部屋を見に行って、必要な家具などの注文方法を教えてもらうことになったんだ。
(ちょっとワクワクするかも)




