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149、チゲ平原 〜 にらみ合い

 チゲ平原は、真っ赤に染まっていた。火を纏う飛竜の吐く炎、そして認識阻害の術を使う飛竜が操る風によって、美しかった草原が、火の海に変わっていた。


 この地に、ミッションで来ていた冒険者達は、防御バリアを張って、なんとかしのいでいた。飛竜が何をしたいのか、僕にはわからなかった。

 僕が持つワープワームの支配権を狙っているのかと思ったが、僕が生首達を使ってワープしても興味はないようだった。


 各地で同じような、女神様の番犬が引っ張り出されるような事件が、ほぼ同時に起こっているそうだ。


 もしかしたら、他の星の神が、いや神々が、一斉に番犬狩りをさせようとしているのではないか…?

  僕の頭に、そんな不吉な考えが浮かんだとき、危機探知のリングが黄色く光った。

 そして僕の目に映る景色の一部が黄色くなった。いま、その黄色く見えるあたりの空間が、グニャリと歪んでいるんだ。




「なんだ? 魔道具がなにかを感知したぞ」


「飛竜は、今はここから遠いわよ? 誤作動じゃないの?」


「リリィさん、あの木の右側あたりに空間の歪みがあります。それを感知したんですよ、きっと」


「な? 何も見えないわよ。えっ? 」



 空間の歪みから、人が現れた。ひとり、ふたり……どんどん出てくる。別の場所にも空間の歪みができた。っく、また、別の場所にも…。


「なんなんだ? 人がわいてきたぞ」


「あれは、おそらく転移魔法だわ。でも火の海に降り立って、なぜ平気なのかしら」


「魔族なんじゃないか? 魔族が地上を攻めてきたんじゃ?」


「ええ〜? そんな馬鹿な! 女神様が、人族と魔族は行き来できないように、されているんじゃないのか」



 チゲ平原にできた空間の歪みは、3ヶ所。それぞれから、人がわくように出てきた。


 最初の歪みからは、ぞろぞろ出てきたが、他のふたつは、2人ずつ、この地を飛ぶ飛竜2体と合わせて、約20体というところか…。


 僕は、ゲージサーチをした。


 やはり……奴らは複数の星の住人のようだ。ゲージの本数はマチマチだった。


 僕達は、体力、魔力それぞれ1本ずつのゲージがある。魔族の一部は、2本ずつの奴もいる。だけど、一方、もしくは片方が3本以上あるのは、この星の住人ではない。


 現れた奴らは、2本3本、3本2本、3本3本、さらには4本2本の奴までいる。



 僕の危機探知のリングは、奴らを黄色く見せていた。正確に言えば、最初の歪みからぞろぞろ出てきた奴らの大半は、青だ。青は、僕とギリギリ同レベルだったよね。

 そしてリーダー格の人、他の歪みから出て来た人は黄色、すなわち危険な存在だった。


 この設定は、タイガさんがしていたから、青が、僕のどの状態と同レベルなのかはわからない。僕はふだんは戦えないから、暴走時、ということなのかな…。


 ギルドの守護者、番犬のオルゲンさんは僕より圧倒的に強いはずだけど、色付きにはならない。

 危機探知のリングだから、僕に危害を加える気がない人には反応しないのだろう。


 そういえば、僕を睨んでいた特定登録者の剣士ふたりにも反応しなかったよね。臨時とはいえ同じパーティだから、睨んでも危害を加える気はなかったってことかな。



「なんだ? ここは。頭の悪いトカゲが、火を撒き散らしたか」



 最後に出てきた人が、そう叫んだ。こんなに距離があるのに聞こえるなんて……魔力で声を拡声しているのだろうか。

 いや、違う。このあたり一帯に、魔法をかけたのか? 奴が出てきたときに、景色全体が一瞬揺れた。奴から何かが放たれたのだろう。



「なぜ、おまえが地上に上がってきた。ここの奴らは俺達の獲物だ。邪魔するな」


「それに、他の奴らまで、横取りに来たか? 渡さぬぞ」


「何を言っている。見つけた者勝ちだとでもいいたいのか? 我々が察知する前に片付けられなかったクズが」


(仲間割れ? やはり、狙いは僕?)



「おまえ達、何の用だ? 誰を探している?」


 あ! 番犬オルゲンさんが、僕の張ったわらび餅バリアから出て来た。火の海の中だけど、平気なのかな?


 オルゲンさんの戦闘力は知らないけど、女神様の番犬だ。タイガさんよりは弱いかもしれないけど、僕以外の番犬は、すべて戦闘力は高いはずだ。

 


「また、おまえか。おまえには用はない!」


 飛竜の1体がそう怒鳴った。奴は阻害認識を解除している。さっきまではよく見えなかったけど、紫色の小型ドラゴンだ。

 火を纏うドラゴンもそれほど大きくはないが、その半分程度しかない。おそらく人の倍程度だろう。


 あれ? 飛竜達は、色付きじゃないよね。僕より弱いってことなのかな。ということは、転移してきた奴らって、みんな、バケモノなんじゃ…。



「じゃあ、誰を探している? この大量に転移してきた奴らは、おまえの助っ人か? 下僕か?」


「コイツらは、俺達の獲物を横取りしに来ただけだ。呼んでなどいない」


「ほう。我々がこのトカゲの下僕だと言うのか? ふっ、おまえにはサーチ能力はないのか、番犬のくせに」


 最後に出て来た男は、オルゲンさんの言葉にイラついたようだ。おそらくオルゲンさんは、わかって言っている。コイツらの情報を引き出すつもりなのだろう。


「じゃあ、あんたがリーダーか? リーダーなら、コイツらの後始末をしろよ。暑くてイライラする」


「それは、私も同感だ。暑くてイライラする。おい」


「あー、消せばいいの?」


「いや、焼き尽くせ!」


「了解〜」



 最後に出てきた男と一緒に出てきた奴が、スッと空に浮かんだ。そして空から平原に向けて、火弾の雨を降らせた。


 ドドドド、ドドドーン!


 奴の放った火弾の雨で、大地はさらに燃えた。岩を砕き、そして冒険者達が張ったバリアも3つ、砕かれていた。


 バリアを失った冒険者達は、火の海に放り出された。みんな必死に防御をしたが、ダメージはまぬがれない。

 先輩冒険者である特定登録者達は、火にのまれないようにと、担当する冒険者達を必死に火から庇っていた。



「あなた、頭悪いのね。火に火を注いでも、後始末にならないわよ」


 破られなかったバリアから、ひとりの女性が出てきた。僕が張った2つのバリア以外で破られなかったのは、彼女がいたバリアだけだった。


 そして、彼女は、何かを詠唱していた。すると突然、晴れていた空に雲が現れ、ポツポツと雨が降ってきた。


(すごい! 雨を降らせるなんて! )


 そうか、もう一人の番犬は、彼女なんだ。あれ? あの人って、僕が女神様の城で魔導ローブを買ったときの……服屋を呼んでくれた人だ。えっと、セリーナさん? だっけ?



「ふっ、気の強い女だな。俺が頭が悪いだと? 何を言っている。これで6つから3つに絞れたではないか。どこに隠れているのかね、呪術士は」


(ん? 呪術士? 僕じゃないんだ)


「何? 呪術士とは誰のことだ? 番犬に呪術士は居ない。星を間違えているんじゃないか? そもそも、ここは、中立の星だ。攻め込むことは、協定に反する行為だ。即刻、立ち去れ!」


「我が主の、心配ごとの原因がここにあるのでね。配下として、その災いの火消しをしたいだけだ。攻め込んだつもりはないのだがな」


「この数で侵入してきて、攻め込んだつもりはないですって? そんな屁理屈は通用しませんよ」



 ザァザァと雨が降る中、にらみ合いが続いた。火の勢いが強く、この雨でもなかなか鎮火しない。



『おい、今のうちに破れたバリアを張り直してやれ。水のカーテンだけで大丈夫なはずだ』


(ん? リュックくん、他の3つってこと?)


『あぁ、この後、衝突することになるかもしれんだろーが。バリアのない奴らを庇って動くのは、あまりにも番犬に不利だろ』


(確かに…。うん、わかった!)



「リリィさん、火がなかなか消えないから、バリアを破られたグループのバリア、ちょっと直してきます」


「えっ?」


「このままだと、彼らは命を落としかねないです」


「わ、わかったわ」



 僕は、足元に現れた生首達でワープをした。僕が急に現れて驚いていたが、人差し指を口に当てて、シーっという仕草をすると、みな静かになった。


 転移してきた奴らの様子を見てみると、ジッと、にらみ合いを見守っているようだった。いや、リーダーからの合図を待っているのかもしれない。


(よし、今なら邪魔されないね)


 僕は手を空に向け、基本防御と水を意識した。僕の手から放たれた光がドーム状に広がり、バリアが完成した。

 そして、僕はそのまま、さらにバリア内全体に届くようにと、回復! を唱えた。

 僕の手から放たれたやわらかな光がバリア内に広がった。よし、成功だね。


「えっ! あ、すごい。傷が治っていく」


「貴方も、あの二人と同じく、女神様の番犬なの?」


「はい。バリア内の全体に回復魔法をかけました。少しずつ治ると思います」


「助かったよ、本当になぜこんな目に…」


「奴らの目的はわかりません。ですが、皆さんはバリア内に居てください。外に出ると中へは戻れませんから」


「わかった」


「じゃあ、僕は、次の場所に」


「ありがとう」



 僕がバリアを張ると、奴らの何人かがこちらをチラッと見た。だが、すぐに関心なさそうに、再びにらみ合いの動向に目を戻した。


 あー、リュックくんが、水のバリアだけでいいと言ったのは、こういうことか。火弾を防いだわらび餅バリアを張ると、おそらく警戒されるよね。


『あぁ、そういうことだ。次の場所も見た目を変える方がいいかもしれねーぞ」


(わかった)



 僕は、すぐ近くのグループに、生首達を使ってワープし、普通に物防、魔防バリアを張った。そして、そのバリアの、水属性を強化した。


 また、奴らはチラ見し、あちこち見回したりしていたが、すぐに関心は、にらみ合いへと戻った。


 僕は、バリア内の全体に回復魔法をかけ、そして、バリア内の人達に、先程と同様の注意をうながした。



『おい、飲んどけ』


(ん? もうひとつ張ってからでよくない?)


『俺の指示を聞くんじゃねーのか? サポートしねーぞ』


(わ、わかったよー)


 僕は、変身魔ポーションを1本飲み干した。自分では数値がわからないけど、飲むとグンと回復している。広域のバリアや回復は、けっこう魔力を消費するようだ。


(よし、あとひとつだね)


『ちょっと待て』


(ん? 何?)


『いまサーチされているぞ、あいつら呼ぶなよ』


(もう来てるよ?)


 生首達は、もう僕の足元に集まってきていた。


『じゃあ、そのまま待機だ』



 僕が動きを止めると、セリーナさんが、僕が行こうとしたグループにバリアを張った。セリーナさんは、バリアを張るとすぐに、小瓶を飲んでいた。女神様の固定値回復のやつだ。


(セリーナさんに、変身魔ポーション渡す方がいいかな?)


『呪い耐性あるのか? 変身するんじゃねーか?』


(時間逆転だから、どうだろう? タイガさんはほとんど変わらなかったよ)


『あ、魔力高いから、10%の方が回復量は多いぞ』


(え! セリーナさんって、魔力10万以上あるんだ。なのに1,000回復飲んでるって…)


『魔力残量、ヤバそうだな。いま動くんじゃねー……おい!』



 僕は、生首達を使って、セリーナさんの近くにワープした。


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