表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

139/286

139、ロバタージュ 〜 ステイタス(D)

「ライトさん、新しい登録者カードができました」


「ありがとうございます」


 登録者カードの顔写真の横には、やはりデカデカと、特定登録者のマークがついていた。顔写真、また目をつぶってるじゃん…。


「あの、本日大規模なイベントがありますので、武器防具屋と、魔道具屋が何人か集まってきているんですよ。ライトさんもいかがですか?」


「ん? えーっと、はい?」


「あ、もしかして、何も聞いておられませんか?」


「はい、タイガさん自身も、よくわかってないみたいでしたし…」


「またですか。興味ないことはすぐ忘れてしまわれるんですよね…」


「ははっ、ですよね」


「詳細は、おそらくギルマスが説明すると思いますが、先週から、新人のフリーミッションが始まったんです」


「新人?」


「はい、各種学校を卒業した子供達が、卒業と同時にギルド登録をしたのですが、その一斉教習のような感じです。父兄同伴で、初めてのミッションに挑戦するイベントなのです」


「なんだか過保護な感じですね。父兄同伴って」


「ですよね、そもそも学校に通うのは、貴族か商会の子供達だけです。金持ちばかりなんですよ。その中で優れた者は、警備隊や王宮勤めをしますからね」


「えっ? ということは…」


「はい、このイベント参加者は、甘やかされて育った親のすねかじりが大半です」


「だから、父兄同伴なんですね」


「そうなんです。あ、話がそれてしまいました。ライトさんもいかがですか? 3階の大会議室が、いま、仮設店舗になっています」


「あ、そうですね。魔導ローブをダメにしちゃったから、買おうかな?」


「えっ? あ、いえ、違うんです」


「ん?」


「あの、ライトさんも、仮設店舗を使われてはいかがかと思いまして」


「え? でも、ここで話があるみたいで…」


「それは大丈夫です。売り子のバイト志願者がたくさんいますから、職員に商品説明をして預けていただければ、責任を持って、販売します」


「なるほど〜。新人冒険者には、ポーションがあると安心ですもんね」


「父兄は、お金持ってますからね。このイベント時は儲かりますから、商売人は仮設店舗の予約に必死なんですよ」


「え? 僕、予約してないですよ?」


「ライトさんは、コペルの行商人ですから、予約なんていりませんよ。このイベントを取り仕切っているのはコペル大商会ですから」


「そうなんですね」


「あ、担当の者を連れてきますね、少しお待ちください」


「え? あ、はい」


 僕は、まだやるとは言ってないのに、話がどんどん進んでいった。もしかしたら、出店させろと言われていたのかもしれないな。




 僕は、その間に、受け取った登録者カードを確認することにした。


 迷宮で、魔力切れどころか、生命エネルギーまで空っぽ寸前の状態になったから、魔力値は上がっているだろうな。前にも魔力切れで倒れた後は、随分上がったもんね。



 僕は、顔写真のところに触れて、ステイタスを表示した。



 [名前] ライト

 [ランク] D


 [HP:体力] 1,010

 [MP:魔力] 25,600


 [物理攻撃力] 60

 [物理防御力] 220


 [魔法攻撃力] 30

 [魔法防御力] 7,500


 [回復魔法力] 89,700

 [補助魔法力] 24,100


 [魔法適正] 火 水 風 土 他



 おっ! 体力1,000超えた〜! やった〜

 と言っても、1,000が、普通の人族の基準値だったよね。他のは、100が基準値だったけど。

 僕は神族だから、体力、魔力以外の値は、本来の約半分の値になるんだっけ。


 魔力、魔法防御力、補助魔法力が、約3倍かな。回復魔法力は2倍ちょいか。他は微増…。攻撃力って全然上がらないよね、ほんとに…。もう、期待するのは辞めよう。


 前回の測定から、4ヶ月以上時間が経つから、まぁ、こんなもんかなぁ?


 相変わらず物理防御力は冒険者としては低い。ずっとバリア張ってるから、上がらないってタイガさんが言ってたっけ? でも魔法防御力は上がってるんだよね。よくわからないな……ま、いっか。



「私にも見せていただけますか」


 いきなり、僕の背後から、嫌な声が聞こえた。


「ノームさん、わざわざカードを見なくても、ギルドのデータで見れるって言ってませんでした?」


「いいじゃないですか。データが私の手元に届くのは、数日後になるのですよ」


「数日くらい待てばいいじゃないですか」



「おまえ、また、残念やったんか」


 いつの間にか、タイガさんも寄ってきていた。ふふん、体力1,000超えたんだからねっ!


 僕は、タイガさんに、登録者カードを渡した。タイガさんは、僕の顔をチラッと見たあと、カードに目を落とした。


「はぁ……おまえ、そのドヤ顔は、体力か?」


(えっ? 僕、ドヤ顔した?)


「ふっふっふ、1,000超えましたからね!」


「あのなー、最低でも3,000ないと、お話にならんって前に教えんかったか?」


「えーっと、そうでしたっけ」


「はぁ、あんな死にかけても、これくらいしか伸びへんのか……どないすんねん。困ったな、全然あかんやんけ」


「仕方ないじゃないですかー。それに、別にタイガさんが困ることないじゃないですか」


「アホか。おまえが体力3,000超えるまで、俺はおまえの世話係せなあかんねや」


「えっ?」


「はぁ、山にでもこもるか? あと5〜6回は、死にかけなあかんのちゃうか」


「うーん」


「はぁ……なんとかせーや」


「どうすればいいんですかー」


「そんなもん、知らんわ」



「あの、私も気になるんですけどね、ギルマスとして」


 ノームさん、しつこいなぁ…。見せるまで引き下がらないような気がした。タイガさんも、邪魔くさそうにしていたが、僕をチラ見したあと、持っていたカードをノームさんに見せた。


「えっ! ちょっとこれは…」


「体力、全然あかんやろ。ほんま、知らんわ」


「タイガさん、下の方を見てないですよね。回復魔法力と補助魔法力、異常値ですよ。どうやってこんな数値に…」


「そればっかり使ってるから、体力上がらんねや」


「もう多少のことには驚かなくなりましたが、回復魔法力20,000で、すべての回復魔法は使えます。だからそこから先は、そう上がらないはずなのになぜ?」


「ライトは、ポーション作っとるからな」


「なるほど。じゃあ、補助魔法力は? 10,000を超える人なんて、まずいません。20,000超えだなんて、広域バリア展開できるほどの能力じゃないですか」


「ライトは、ビビりやから、いつもバリア張っとるからや」


「広域バリアってなんですか?」


「エリアにバリア張るんや。おまえ、水のカーテンみたいなやつ気に入っとるんやろ? あれや」


「水のカーテン? あ、トリガで木に張った水のバリア?」


「知らん。ババアが水のカーテンって言うとっただけや」


「はぁ」




 そこに、さっきの職員さんが、3人の人を連れて戻ってきた。ひとりは担当の職員さん、あとのふたりは売り子のバイトのようだった。


 ギルマスが、急に気持ち悪い笑顔をはりつけている。本人には自覚はないのだろうか。


(キモい…)


「ライトさん、仮設店舗を使ってくださるのですね」


「ノーム、おまえ、その顔キモいで。悪代官、顔負けやで」


(タイガさん、時代劇好きなのかな)


「悪代官? ってなんですか?」


「まぁええ、おまえ、ライトのポーションを出店させたら、なんぼ入るんや?」


「何のことでしょう?」


「貴族からのワイロや。ポーションを欲しがる貴族が多いから、今回、コペルに仕切らせとんねやろ」


「なんだか、私が悪いことを考えているようではないですか」


「おまえ、いつも、自分の利益しか考えてへんやないけ」


「そんなことないですよ。これから冒険者となる新人さん達にとって、ポーションは大事なアイテムになりますからね」


「ポーションなんて、どこにでも売ってるやんけ」


「飲みにくい味のものを、子供達に買い与えたくないとおっしゃいましてね」


「僕も行商人ですから、買ってもらえるのはありがたいです。どれくらいの数が必要ですか?」


 僕がそう言うと、担当の職員さんがすかさず口を開いた。


「可能な限りお願いします!」


「え? えーっと、お客さんは何人くらい来られていますか」


「いま、仮設店舗の3階には、20名ほどおられます」


「じゃあ100本くらいでいいですか?」


「えっと、フリーミッションの本日の参加者は新人150人ほどなのです」


「えっと、100本では少ない?」


「はい。ギルドの冒険者も欲しがると思いますから…」


「うーん、じゃあ…」


 僕は、魔法袋の中から、モヒート風味の10%回復ポーションを100本、カシスオレンジ風味の火無効付き1,000回復ポーションを500本出した。


「あの、クリアポーションは?」


 うーん、あまり出したくなかったけど、パナシェ風味のクリアポーションを100本出した。


「ありがとうございます! 火無効付きの固定値回復は、新人冒険者にピッタリですね」


「えーっと、それは、もう少し出せということですか?」


「できれば、あと、300本、いや、支払いのキリがよい400本、お願いしたいです」


 僕は、あと400本、火無効付きを出した。

 すると、先に精算しておくとのことで、ポーション銀貨1枚×1,000本、クリアポーション銀貨50枚×100本、これを合計して、金貨60枚を渡された。

 あ、クリアポーション、病人以外の通常査定額だ。


「あの、売り子のバイト代は?」


「それは、ギルドで負担しますから大丈夫です」


「おい、あまり無茶苦茶な値段で売るなよ?」


「はい、規定通り、仕入れ値の2倍で売りますから」


「そーか」


 なんだか、これって、ギルドが儲かる仕組みじゃん。まぁ、いいけど…。


 職員さんはポーションを魔法袋に入れ、売り子のバイトを連れて出て行った。

 商品説明のために、バイトを連れてきたんじゃないのかな? まぁ、ラベル見ればわかるか。



「さて、ライトさん、本題に入りますが、フリーミッションのお手伝いをしていただけますよね?」


「僕、まだ、完治してないですよ? ノームさん」


「完治を待っていたら、年単位の時間がかかるじゃないですか。闇を使わなければ、大丈夫なはずですよね?」


「まぁ、そうですが…」


「ライトさんは、特定登録者ですから、私の依頼は原則、断れないですよ?」


(はぁ、嫌な言い方…)


「おまえ、それ、脅しとるんか? ライトの闇は不安定やって教えたやろ? 知らんで。おまえ、ライトの深き闇に包まれるだけで、行動不能になるで」


「えっ、あ、申しわけありません」


 ギルマスが珍しく、本気で謝った。


 なんだか、僕、危険物扱いだよね。だから、さっきもギルド内が静まり返ったのかな。


「まぁ、今回は、ライトを参加させるけどな。あくまでも、白魔導士としてやで」


「どちらで参加していただけるのですか?」


「それは、メンツを見てからやな。俺は参加せーへんし」


「えっ? お話が違いますよ」


「俺は、この後、用事できたんや」


(……タイガさん、僕に押し付けて、逃げる気だよね)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ