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109、迷宮 〜 石化の呪い

 僕はいま、王宮の調査に協力して、迷宮の中にいるんだ。30人くらいの調査隊を分岐点で3つに分けられて、僕はフリード王子達の隊にいる。


 少し奥に進んだところにある広い空間で、魔物がたくさん待ち受けていたんだ。


 魔導士以外の8人で、簡単に片付けてくれたあとに、妙なことが起こった。


 右側の沼から、投げ槍のようなものが飛んできて、それも8人が叩き落し、警備隊エリートの魔導士が照明弾のような魔法を撃ってくれたあとに、なんの前触れもなく、天井が崩落してきたんだ。


 土砂がどかっと降ってきたような感じで、僕達は全員土砂に埋まってしまった。僕はとっさに霊体化だけできたんだけど。


 その後、様子を見ようと透明化をしたとき、大きな獣人のような女の子ふたりが現れて、地面に落ちた土砂を浮かび上がらせ、壁に押し付けたんだ。すると、土砂はそのまま壁になってしまった。


 女の子達は、もう奥へと逃げて行ってしまったけど、情報を少しだけ集めることができた。


 僕が興味本位で聞いたわけじゃなく、女神様が情報を集めろと言ったんだ。でも、僕は、霊体化しているのに、女神様はなぜ念話ができたんだろう?

 うでわを通じて念話するんだから、霊体化していると、念話できないんじゃないの?



『ライトは、相変わらず細かいことを気にするのじゃ』


(わっ、びっくりした)


『いま、非常事態じゃからな。妾は、私室にいるのじゃ』


(ん? 私室? プライベートルーム?)


『そうじゃ。タイガはプラネタリウムと言っておる。私室の中にいるときは、自分の星のほぼすべてが見えるし、大抵のことはできるのじゃ』


(プラネタリウムな私室、素敵ですね)


『そうか? じゃが、霊体化したライトと話すのは、魔力をかなり消費するのじゃ』


(え……すみません)


『さっさと壁から出て、実体化するのじゃ』


(あ、はい)


 僕は、壁から出て、透明化はそのまま、霊体化だけ解除した。


(これでいいですか?)


『うむ。して、壁の中に閉じ込められた者達じゃが、さっき、1,000になると集めるとか話しておったな』


(そうですね)


『その迷宮は、あちこちの同様の迷宮と転移で繋がっておるようじゃ。ハデナの迷宮は、おそらくほとんどが王宮の調査隊ばかりじゃ』


(そうなんですか?)


『そこは、入り口が入りにくいのじゃ。普通の冒険者は、その裂け目の下に迷宮が広がっていることに気づかないのじゃ』


(確かに、ベアトスさんも、降りる方法を困っておられましたもんね)


『うむ。それから、3本のルートは、その先でまた合流しておる』


(え? 同じ場所に合流?)


『タイガがそこの迷宮内のマッピングを終えたのじゃ。どうやら、分かれている3本の道が、奴らの主な捕獲場所のようじゃ』


(なるほど)


『その場所には、今は神はおらぬ。ザコばかりじゃ。今のうちに、なんとかするのじゃ。いつ転移してくるかわからぬのじゃ』


(え? なんとかって?)


『ライトは、石になった者達を人に戻すのじゃ。タイガは、さっきの子供に指示している奴を探りに行ったのじゃ』


(人に戻すって…)


『ライトなら余裕なのじゃ、よろしくなのじゃ』


(わかりました、やってみます)


『うむ』



 僕は、壁の中を『見た』


 そして近くの、透視できない大きな石にスッと手を入れた。回復!を唱えると、石が光り、表面が粉々に砕け散った。中から、フリード王子が現れ、地面に倒れ込んだ。


「ゲホゲホ! ゴホッ」


「フリード王子、ご無事ですか?」


「ん? その声はライトか? どこにいる?」


(あ、透明化したままだった)


 僕は、透明化を解除した。突然、目の前に僕が現れ、一瞬驚いた表情をされたが、すぐに元の表情に戻った。


「これは、一体……他の者達はどうした?」


「みな、石化の呪いを受けて石にされているようです」


「そうか、ゴホッゴホッ」


 僕は、フリード王子をゲージサーチしてみた。赤、赤……マズイね、この状態。


「とりあえず、これを飲んでください。ちょっと変身してしまうのですが…」


 僕は、キール風味の変身ポーションを渡した。


「わかった、助かる」


 フリード王子は、ラベルも読まずにすぐに蓋を開けて、ポーションを飲んだ。


(うわ! めちゃくちゃ美人)


 フリード王子は、思わず見惚れてしまうほど、美しい女性の姿になった。

 あ、ぼーっとしている場合ではない。僕は、再びゲージサーチをすると、黄、赤。フリード王子の体力は2万いや3万くらいなのかな?


「あの、体力は3万くらいですか?」


「いや、3万もないけど……えっ? 私の声…?え?」


「じゃあ、もう1本飲んでください」


 僕はもう1本渡し、フリード王子(王女)は、すぐに飲んでくれた。ゲージは、青、赤。うん、よし。


「魔力はどれくらいですか? 1万ありますか?」


「いやいや、あるわけないよ。千ちょっとだ」


「じゃあ、これは普通の魔ポーションですが、飲んでください」


「えっ? いや、魔ポーションなんて…」


「大丈夫てすよ。それは、もうあまり使い途ないなと思ってたんで」


 僕は、前に女神様と交換してもらった1,000回復の魔ポーションを渡した。

 これも、すぐに飲んでくれたが、顔をしかめられた。


「普通のと言っても、これは上級品だろうが……ライトのポーションのあとに飲むと、つらいな、この味」


「あはは、ありがとうございます。体調はいかがですか?」


「まだ、身体は鉛のように重いが、体力魔力はほぼ回復したようだ」


「呪いがまだ残っているのでしょうね。じゃあ、これで、姿も元に戻りますから」


 僕は、クリアポーションを渡した。これも、すぐに飲んでくれた。すると、もとの男性の姿に戻った。


「あー、一気に楽になったよ。すごいな、ありがとう。しかし、女性に変身したあれは、なんなんだ?」


 フリード王子は、ポーションの空き瓶に魔力を流し、説明を読んでおられる。


「意図して作ったわけではないのですが、最近の新作は変な呪い付きばかりで…」


「そうなのか?」


「はい。魔道具リュックが、ちょっと反抗期なようでして…」


「は? 反抗期? あはははっ、本当に? はははっ」


「ええ、ちょっと困っています」


「うぷぷぷ、すまぬ。笑いが止まらない」


「あはは、まぁ、みんな笑いますから」


「じゃあ、よかったよ。しかし、他の者達は…」


「他の方々も、探して人に戻していきます」


「大丈夫か? 呪いの解除など、かなり消耗するであろう?」


「ポーション屋ですから、魔ポーションありますし、それに早くしないと、厄介な敵がこの迷宮に来てしまうかもしれないので…」


「そ、そうか。では、頼む」


「はい、がんばります」



 僕は、透視できない石を探し、スッと手を入れて回復! を繰り返していった。石化を解除すると、みんな、さっきのフリード王子と同じ状態だった。


「ゲホッゲホ。一体どうなっているんだ?」


「状況説明と、この後の回復は、私が担当するよ。ライトは、他の者達を頼む」


「はい、かしこまりました」


 僕は、変身ポーションとクリアポーションをフリード王子に預けた。石化を解除した人に、体力回復後に呪い解除をするという手順で、ポーションを渡してもらった。


 変身ポーションは、そんなに数はない…。1本ずつ飲ませて、あとの回復は自力でやってもらうことにした。


「ゲホッゲホッ。もしかして、アイツに助けられたのか?」


「神族だから、呪いは効かないのか?」


「いえ、僕は、呪い耐性があるんですよ」


「ライト、大丈夫か? かなり消耗したんじゃないか?」


「あ、はい。僕もポーション飲んでおきます」


 僕は、自分で自分の魔力の減り具合がわからないので、ひと通り9人全員の石化の呪いを解除したあと、変身魔ポーションを1本飲んでおいた。


 まわりを『見る』と、まだまだ壁の中には、たくさんの透視できない石が埋まっていた。


 これを今、一気に解除するべきなのか、僕は判断できなかった。


 この石化した人の石があるから、この空間は、監視できないと女の子達は言っていた。ということは上や下からは見られないんだな、横から見ているんだ。


 もし、すべて解除してしまうと、他の迷宮にいる神に気づかれてしまいかねない。



「フリード王子、まだまだたくさんの石化した人が埋まっています。どうしましょうか」


「それを救出しに来たんだが、ライトひとりで解除はさすがに酷だな」


「いえ、それよりも別の問題があるんです」



 僕は、獣人の奴隷らしき女の子達が話していたことを簡単に説明した。

 黒幕がどこかの星の神だとはさすがに言えなかったので、正体不明ということにしておいたが。


「なるほどな。ということは、この空間は見られないが、先に進んでも後ろに戻っても、敵に見つかるということか…」


「フリード王子、ならば、この場所から帰還の魔道具を使って脱出しますか?」


「いや、他のルートの者達を放置して行くわけにもいかぬ。ライト、他のルートの様子は見れるか?」


「あ、はい、少しお待ちください」



 僕は、ベアトスさん達が進んだ右のルートを『見た』


 人の姿はない。そして、透視できない石がやはりたくさんあり、もともと埋まっていたのか、いま新たに埋まったのかは、今の場所からでは判断できなかった。


 監視者が見れない、見られないと女の子達が言っていたように、人の石があることによって、僕も『見る』のは難しかった。


 おそらく、神は、他の場所からここを見ているはずだから、そりゃ見えないよね。こんなそばにいても、『見る』のは困難なんだから。


「右のルートにもここのような空間がありますが、人の姿はないです」


「そうか、石にされたか…」


「おそらく…」


 僕は、次にタイガさん達の進んだ左のルートを『見た』


 左ルートは、交戦中のようだった。やはり、透視できない石が邪魔で『見る』のは難しい。


 でも、タイガさんの姿はないようだった。あ、女神様の命令で、女の子達に指示している者を探りに行っているんだな。


 左ルートのさらに奥を探してみた。さっき女神様が言っていたように、3ルートが合流できそうな広い空間があった。

 だが、そこにも、人の姿はない。そのさらに先なのかな?


 ただ、この空間からは、それ以上はうまく『見る』ことができなかった。とにかく透視できない石が邪魔をするんだ。



「フリード王子、左ルートは、ここと同じような空間で、いま、交戦中です」


「ということは、これから石化の呪いをかけられるか…」


「かもしれませんね」


「うーむ…。どうしたものか…」


「助けに行きましょう!」


「どうやって行くんだ? 行ったところで、再び石にされるだけではないか」


「うー……確かに」


 重苦しい空気になり、誰もが難しい顔をしている。


 僕は、どうしようか。とりあえず、ベアトスさん達の石化を解除してくるべきかな?



「あの、僕、右ルートの様子を見てきます。ここからでは、石化した人の石で見れないので」


「えっ? どうやって行くんだ? 戻ると、奴らに気づかれると言ってたではないか?」


「ライトは、透過魔法を使えるんだったな?」


「はい、フリード王子」


「では、頼めるか? 我々は、ここで待機している」


「かしこまりました」


 僕は、透明化!そして霊体化! を念じ、ベアトスさん達のいる右ルートの方へと、向かった。

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