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104、ロバタージュ 〜『落とし物』係ベアトス

皆様、いつも読んでいただき、ありがとうございます。ブックマーク、評価もありがとうございます!


本日で、投稿し始めて3ヶ月が経ちました。

こんなにたくさんの方々に読んでいただけるようになるなんて、3ヶ月前には想像もしていませんでした。ほんと、ありがとうございます。


これからも、毎日更新できるよう、頑張ります。どうぞよろしくお願いします。

 僕は、いま、ロバタージュのギルド前に居る。ここで、タイガさんや、王宮のセシルさん達と待ち合わせをしているんだ。


 ついさっきまでイーシアに居たのに、生首達が一瞬で運んでくれるから、僕の頭の中は、まだ切り替えができていなかった。


 だけど、これから向かう場所は、かなりの犠牲者が出ているみたいなんだ。浮かれていては、大変なことになりかねない。僕は、気持ちを切り替え、しっかりと気を引き締めなければ…。




「ポーション屋さん、クリアポーションありますか?」


「ん? あ、はい。ありますよ」


 僕は、見知らぬ人に声をかけられた。念のため、僕はバリアを張った。彼は、僕のことを探るような目で見ている。


「へぇ、なるほどね〜」


「えーっと…、病人がおられるんですか?」


「いや、いないよ。キミが、女神の番犬か」


「あの……ポーションが必要なわけじゃないんですか?」


「ポーションも、あってもいいんだけどね〜」


「えーっと」


 なんなんだろう? 僕はゲージサーチをしてみた。すると、青、青、青、青。あれ? 2本ずつある…。これって、他の星の人? それとも魔族?


 僕は、魔族の国スイッチを入れた。そう、いつもの、はったりスイッチだ。



「キミもサーチ使うんだね。そのダミーの数値、どうやって作ってんの? その闇か」


「さぁ、どうでしょうね」


「くくっ、キミ、いいねー。殺したくなってきたよ」


「それは困りましたね、僕、これから用事があるんですよね」


「その用事って、俺と同じかな」


「僕は、貴方が何者なのかさえ、知らないんですけど」



 彼は、やたらと僕を探ろうとしているようだが、彼の納得できる数値は探せなかったようだ。ダミーじゃないんだから、当たり前だよね。


「嘘だろ? キミは、俺のことをわかっていて、何を喋らせようとしているんだ?」


「ん? 別に…」


「やっぱり、俺のこと、舐めてるだろ」


「なんで、そうなるんですか」


「俺をイラつかせるからだよ」


「はぁ……よくわからないですが?」


「なんだと?」



 コイツ、邪魔くさい。何者かもわからないし……逃げよう。僕は、透明化! そして霊体化! した。



「ッチ! 逃したか…。ワープワームに気づかなかったな、くそっ」



 彼は、イライラしながら、ギルドに入っていった。何者なんだろう。それにワープワームの支配権を僕が持ってるって知ってるなら、魔族かな?



 しばらくすると、さっきの彼はセシルさんと共に、ギルドから出てきた。ん? ってことは、王宮の人?



「おふたりはまだか…」


「さっき、ガキの方はいましたよ」


「ん? どちらに?」


「ここに居たんですが、俺が話しかけると、どこかにワープしてしまったんですよねー」


「はぁ、また、妙なことを言ったんですね」


「あのガキが、俺を舐めてるからですよ。ただでさえ、殺したいのに…」


「返り討ちにあいますよ、彼は女神様の番犬ですからね」


「わかってますよ。さっきも俺を見た瞬間バリア張ってたし、アイツの数値、俺には見えないんだ」


「それは、ライトさんの方が能力が高いからですよ、この私が、負けを認めてあげたんですからね」



 そこに、タイガさんが見たことのないオジさん連れでやってきた。

 あれが、クマちゃん? あ、えーっと、ベアトスさんかな? 人の良さそうな温厚そうな印象だった。



「あー、待たせたか?」


「いえ、大丈夫ですよ。ライトさんはご一緒じゃなかったのですか?」


「アイツは、ここで待ち合わせや。まだ来てへんのか?」


「さっき、おられたようですが、どこかへ行かれたみたいで。ベアトスさん、お久しぶりですね」


「おはようさん。タイガに、珍しい所に行くからって誘われただよ」


「素材になりそうなもの、あると思いますよ」


「でも、早起きはツライだよ」


「そっちのは、誰や? 見ない顔やな」


「私の娘婿でしてね、ちょっと訳ありですが、アマゾネスには強いので、王宮勤めをすることになったんですよ」


「バックルです、お見知りおきを。貴方のような有名な神族とご一緒できて嬉しいです」



 僕は、この様子をずっとそばで見ていた。僕は、気配を消しただけで、さっきから、全く動いてないんだから。


 彼は、僕に対する態度とは全然違う、柔らかな口調で話していた。同一人物だとは思えない。

 セシルさんの義理の息子ってことになるんだな。訳ありってことは、魔族じゃなくて、他の星からの迷い子の方かな。



「そーかー。まぁ、訳ありなその事情が、俺の仕事を増やさんことを祈るわ」


「あ、ははっ、お見通しですね、さすが番犬ですね」


「そんな、思ってへんことを言わんでもええ。疲れるわ」


「これは、手厳しい、あはは」



「タイガさん、ライトさんが来られたら出発できるのですが」


「転移か?」


「はい、私なら、街の中からでも可能ですから」


「迷宮は、どの入り口から入るんや?」


「ハデナの転移魔法陣の近くに、他の者達は、待機しています。皆が揃えば、フリード王子達もそちらに」


「そーか。おい、ライト、運べるか?」


「えっ? タイガさん、僕が見えてるんですか?」


「アホか、見えてるわけないやろ。おまえの性格考えたら、隠れてここにおるくらい見えんでもわかるわ」


「えっ! あのガキ、ここにいるんですか!」


 僕は、霊体化と透明化を解除した。


「うわぁ!」


「僕は、ずっとここから動いてませんよ、バックルさん」


「おまえ!」


「バックル、やめなさい。ライトさん、なぜ隠れて?」


「彼に絡まれて邪魔くさかったんで…。出るタイミングがつかめず、盗み聞きのようなことをしてすみません」


「いつから、おまえ、ここにいたんだよ」


「だから、ずっと、居ましたってば」


「な、なんだと?」


「それから、僕を殺したいのは、ワープワームの支配権が欲しいからですよね? 他の理由があるなら教えてください」


「なっ…」


「ライト、なんや? こいつに命狙われとるんか?」


「さぁ、ただの冗談かもしれませんけど……でも、外からの迷い子に殺意を向けられると、冷や汗が出てしまいますから」


「あはは、ライトさんにもお見通しのようですね、バックルは、外の生まれですが、今はこの星の住人ですよ」


「そうでしたか。失礼しました」



 彼は、バックルは、黙り込んでしまっていた。ただ、僕を見る目は、怒りのせいか、つり上がっているようにも見えたが。



「ライトさん、おはようさん」


「ベアトスさん、おはようございます。初めましてですよね」


「んだ、はじめましてだ」


「よろしくお願いします。ベアトスさんって僕と、似たタイプだと聞いてます」


「あー、俺も、あっちにゴミ捨てに行くところがそっくりだと、言われただよ」


「あはは、だって、売りにくいものは、渡しに行く方が片付きますもんね」


「あー、んだな。下手に持ってて狙われるのも怖いから、それが一番いいだよ」


「はい、ですよね〜」


 僕は、ベアトスさんと初めて話したが、とても話しやすくてホッとした。そういえば、これまで、他の『落とし物』係に会ったことなかったな。


 新人アダンのような、好戦的なタイプばかりじゃないかと、少し不安だったんだよね。


 ベアトスさんは、今の『落とし物』係で、一番の古株だと、誰かに聞いた記憶がある。


 僕と同じく、リュック持ちで、貴金属や鉱石を錬金しているみたいなんだ。


 見た目から、クマと呼ばれているって聞いてたから、どう猛な熊のイメージだったんだけど、真逆だった。

 某有名お菓子メーカーの、カー○おじさんのような、そんな優しそうな人だった。


 ベアトスさんも、僕と同じように、戦闘力は低いのかな? 狙われるのが怖いという発言からも、戦闘は得意じゃないんだろうと思った。



「で、ライト、ここの5人や、運べるか?」


「たぶん大丈夫だと思います」


「街の中からでも、一瞬で転移できますよ? 」


「セシル、転移はあかんねんや。ライトが転移酔いするんや」


「えっ? 気持ち悪くなると? あ、たまに苦手な人いますよね」


「気持ち悪くなるだけなら、こっちに迷惑かけへんからええんや。コイツは、転移すると必ず意識飛ぶんや」


「へ? 気を失うということですか?」


「せや、だから、俺はハリセン持ってるんや」


「は? ハリセン?」


「でも、もういらんから、おまえにやるわ」


 そう言うと、タイガさんは、いつぞやのお手製のハリセンを、セシルさんに、ほうり投げた。セシルさんは、ハリセンを受け取り、不思議そうに見ている。


「それで叩くと、音がデカイわりに、ダメージは少ないんや」


「はぁ…」


 セシルさんは、ハリセンでペチペチと自分の手を叩いていた。


「なるほど、これで、起こす……という必要があるんですね?」


「あぁ。もし、コイツと同行して、転移酔いで寝よったら、それを使ったらええで」


「わかりました。大切に保管させてもらいます」


(なんでハリセンをそんなに…)



 タイガさんが、変な話で時間稼ぎをしてくれたおかげで、生首達は、かなりの数が上空に集まってきていた。これだけいれば、5人大丈夫だね。


「タイガさん、もう大丈夫です」


「ほな、ここに呼べや」


「はい」


 僕がそう返事すると、生首達は、空からふわふわと降ってきた。赤黒い雪が降ってきたような光景に、セシルとバックルは驚いていた。


「なっなんですか? アマゾネスが支配している奴らと、全く姿が違う!」


「コイツらは、主人に擬態するから違うのは当たり前ですよ。ただ、空から降ってきたのには驚きました」


「今回は、数が必要だから、上空で集合してたみたいなんです」


「飛べるのですね、ライトさんのワープワームは」


「飛ぶというより、ふわふわ漂っている感じですけど…」


「ライト、コイツら、なんかちょっと変わったんちゃうか?」


「はい、少し、芸を覚えたみたいです」


「なんやそれ」



 僕が、この5人で、ハデナに行きたいと思うと、ハデナの映像が浮かび、転移魔法陣を選んだ。


 そして、生首達は、彼らの足元に雲のようなクッションを作っていった。


「ライトさん、これに乗ればいいのですか?」


「セシルさん、はい、皆さんも乗ってください」


 タイガさんが、さっさと生首クッションを踏んだのを見て、ベアトスさん、セシルさん、そして最後にバックルさんが乗った。


「じゃあ、行きますね」


 そう言って、僕も生首クッションに乗った。その次の瞬間、僕達は、ハデナの転移魔法陣の近くに居た。めちゃくちゃ暑いな、ここ。


 そして、生首達は、そのまま、スッと消えた。

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