100、女神の城 〜 売れない品を置いていく
皆様、いつも読んでいただき、ありがとうございます。ブックマーク、評価も、ありがとうございます。増えるたびにパワーもらってます!
この度、おかげさまで100話目となりました。
私の頭の中では、お話は、いま真ん中あたりです。予定通りに進むとは限りませんが(汗)200話前後のボリュームになると思います。
今後とも、どうぞよろしくお願いします。
「ライト、ここにワープしてきたあの乗り物は、キチンと躾けておるのか?」
「えっと……全く世話してないです」
「いま広場が、えらい騒ぎになっておったのじゃ」
「わ、すみません。ポーションを置いたら、すぐ連れて行きます」
「うーむ…。別に広場で飼ってもよいのじゃ! 妾の言うことは聞くようじゃからの」
「ん? そうなのですか? 奴らのことは、よくわからないんです」
「話しておらぬのか?」
「へ? アイツら、話せないですよ?」
「念話は、できるのじゃ。あ……ライトが念話できないから、無理なのじゃ」
「えっ、あの、念話って、どうすればできるのですか?」
「ある程度、魔力の使い方が上手くなれば、自然にできるようになるのじゃ」
「はぁ」
「ライトは、まだ、自分の力を、全然制御できていないのじゃ。闇がまた勝手に溢れておったのじゃ」
「うっ…」
僕は、いま、居住区の治療院にいる。
呪いを受けてしまった人達の治療が終わるのを狙ったかのように、女神様がやってきた。
タイガさんが呼び出し、ここで待ち合わせしていたようだが、僕の治療が終わるのを待っていたのかもしれない。
虹色ガス灯広場には、僕の配下、ワープワーム達がいる。その名のとおり、ワープや、あとスパイのような偵察もできる火の魔物だ。
普通、ワープワームは人に擬態すると、こびとのようになるそうだが、奴らは生首なんだ。
首から上は女の子のようだけど、首から下は赤黒い霧のような霊体なんだ。
飛べない魔物だそうだが、僕に擬態して半分霊体になっていることで、ふわふわ飛ぶことができるらしい。
僕の目には、生首がふわふわ漂っているように見えて気持ち悪いんだけど、僕以外の人には、あまり気持ち悪くは見えないらしいんだ。
逆に、かわいいとか言われて、ぎゅーっと抱きしめられたりしている…。
どこがかわいいんだか、僕には理解できないんだけど。
「おまえ、いらんもん、さっさと置いて、水汲み行かな知らんで。王宮の手伝いは、時間厳守にうるさいんや」
「あ、そうでした」
僕は、治療院の受付カウンターの上に、魔法袋からポーションを出していった。
確か、うでわのアイテムボックスには美容ポーションが1,000本、呪い系3種が50本ずつ入っていたよね。
媚薬つきは大魔王様に売りに行くつもりだけど、他のは売れないなぁ。
美容ポーションは、よく考えると美容グッズの営業妨害になりそうだから売りにくい。
変身ポーション2種は、僕以外が使うと男女逆転したり、年齢逆転したりしてしまうから、いちいちクリアポーションを飲まなきゃならないし。
僕は、魔法袋に入っていた輝きポーションをすべて出した。1,800本ちょっとあるから、これで広めのカウンターが埋め尽くされた。
変身ポーションも出したいのに、置く場所がない。
「なんじゃ、この量は…。しかもこれは…」
そう言うと、女神様は、わなわなプルプルと震えてらっしゃる。え? 出しすぎ?
「これは、リュックくんが進化して最初に作った輝きポーションなんです。美容系みたいです」
「知っておる…」
「え? あ、タイガさんが持っていきたい女性って、女神様だったんですか! てっきり、別の目的で…」
「おい、おまえ、なんやねん。女をひっかけるために使うとでも思っとったんか」
「えーっと、彼女がたくさんいそうだなぁって…」
「まぁ、せやな。こんだけあるなら、ちょっともらっとくわ〜」
(やはり…)
「女神様も、よかったらまた飲んでくださいね。1日1本しか飲めないみたいですが、お肌の調子が良くなるかもしれません」
「なっ? 妾のお肌がザラザラだと言うておるのか」
「あ、いえ、より一層、ツルツルになるかと…」
「ふむ。ならばよいのじゃ。毎日飲んで、ツルツルになって驚かしてやるのじゃ!」
そう言いつつ、女神様はなんだか様子がおかしい。すごくホッとしているというか、なんだか、おとなしい柔らかな表情を浮かべていた。
(そんなに肌荒れが気になっていたのかな?)
「あ〜ら〜、たくさんあるのねぇ。お姉さんも少しもらおうかしら?」
突然、気配なくナタリーさんが現れた。
「なんや、ババア、美容ポーションを嗅ぎつけて来たんかいな」
「いや〜ねー。用事が終わったから、寄ってみたのよぉ」
「あれ? アダンは一緒じゃないのですか?」
「アダンくんは、魔族の国に送り届けて来たわよ」
「そうなんだ」
「ふふっ。あの子、ライトくんに会わせてよかったわぁ。急にシャキッとしたというか、お仕事やる気になったみたいなのー」
「ん? そうなんですか?」
「そうなの。ライトくんが、宝玉10個集めの最短記録保持者だって教えてあげたらねー、アダンくん、その記録を更新するって張り切ってたわー」
「おまえが、たきつけたんやろーが」
「ふふっ、ライバルって大事ね〜」
「はぁ…」
「あ、あいつ、ライトの生首、気に入ってたみたいやけど…」
「魔族の国にも居るって教えておいたわ〜」
「はぁ? おまえ、アホやろ。ライトの配下ってわかったら、惨殺しよるで」
「どうして?」
「逆に、僕から支配権を奪おうとするんじゃないですか?」
「支配権を奪ったら、生首じゃなくなるわよ? アダンくんが気に入ってるのは、あのふわふわな女の子だもの」
「じゃあ、僕の配下ってわかったら、可愛さ余って憎さ百倍……ってことになりそう」
「ふふっ。魔族の国では、支配権が誰にあるかは、バレないわよ」
「なんでや? あ、せやな、魔界の奴らはプライドの塊やからな」
「ん?」
「そうねー。人族に支配権があるなんて、口が裂けても言わないわ〜」
「あ、なるほど…」
「バレるとすれば、玉湯だけやろ」
「アダンくんは、地上はあまりウロつかないから、大丈夫だわ〜。あ、あの子達と知り合うとバレるかもねー」
「クライン様とルーシー様?」
「ふふっ。そうね、まぁ大丈夫だわ。バカ兄貴が、そのへんは、うまくやると思うわ〜」
ふと、カウンターに目を移すと、女神様がすっかり、輝きポーションを、自分のアイテムボックスか何かに収納されていた。
「ババア、独り占めか?」
「いろはちゃん、私の分は?」
「チッ!」
女神様は、軽く舌打ちをすると、美容ポーションを100本ほどカウンターに出した。
「えー、これだけ? 1日1本しか飲めないのよぉ?」
「妾のお肌のためにと、ライトが出したのじゃ!」
「はぁ、まぁ、俺は10本だけもらっとくわ〜」
「もう、いろはちゃんってば〜」
「えーっと……そんなに人気だと思いませんでした。また、持ってきますから…」
僕がそう言うと、女神様はさらに100本カウンターに出した。すぐにふたりの争奪戦が始まり、一瞬で決着していた。
「妾が、ひとりで飲むわけないのじゃ。必要な者に渡してやるのじゃ」
「当たり前やろ。1,500本以上やろ? 何年分やねん」
「あの、まだ、あと2種類あるんですが……ちょっと難ありなんです」
僕は、変身ポーションを出した。キール風味の男女逆転の体力10,000回復ポーションを200本、アレキサンダー風味の時間逆転の魔力10,000回復魔ポーションを600本、カウンターに置いた。
魔法袋には、あと10本と魔60本あるはずだ。これは、もしものときに僕が自分で使う分だ。うでわのアイテムボックスにもあるから、まぁこれで大丈夫。
「あら? 新作ねー。固定値10,000回復? 使い勝手が良さそうね〜」
「でも、化けるんや」
「ふむ」
女神様は、キール風味の蓋を開け、一気に飲み干された。わっ! 男性になっちゃった。弱い呪いなのに、女神様には効いてしまうんだ。そう言えば、呪い耐性はなさそうだもんね。
「まぁ! いろはちゃん、めちゃくちゃイケメンじゃない!」
「そうか?」
「きゃー! 声までイケメンだわ〜」
うん、確かに、羨ましいくらいイケメンだ…。
女神様は、鏡のようなスクリーンを出して、自分の姿を映しておられる。
その表情は、とてもご満悦なようだった。
「面白いのじゃ! これなら他の星に忍び込んでも、妾だとはバレないのじゃ!」
「えー、忍び込んじゃうの?」
「いや……言ってみただけじゃ」
そして、その姿のまま、もうひとつのアレキサンダー風味の魔ポーションの蓋を開け、そのまま固まってしまわれた。
「なんじゃ? これは」
「アレキサンダー風味の魔ポーションです…」
「パフェの匂いがするのじゃ!!」
女神様は、一気に飲み干された。すると、時間逆転、2〜3歳くらいの男の子になってしまった。服も身体に合わせて縮んでいる。女神様が魔法で作りかえたのかな?
「な? チビすぎるのじゃ!」
「年寄りが飲むと子供になるんや」
(生命エネルギーが、かなり少ない…ってことだよね)
僕は、チビすぎる姿に、衝撃を受けた。そうか、だから、タイガさんも、あんなに焦っていたんだ。
玉湯へ向かうときに聞いた話を、僕は思い出していた。女神様は死にかけてるって言ってたけど、チビで良かった。
もし赤ん坊になっていたら、もうほとんど猶予がないってことだもんね。
「まぁ! いろはちゃん、めちゃくちゃかわいいわ〜。抱っこしていいかしら?」
ナタリーさんが、がっつり食いついた。確かに天使のようにかわいい男の子だ。
「ライト、クリアポーションも置いていくのじゃ!」
「あ、そうでした、すみません」
僕は、クリアポーションを100本ほど出した。すると女神様は、すぐに1本飲まれた。どうやら、抱っこされるのが嫌だったようだ。
「えー、どうして戻っちゃうのよー」
「ふんっ」
女神様は、アレキサンダー風味の魔ポーションをせっせと、収納し始めておられる。甘いし、パフェの匂いって言ってたから、気に入ると思ったんだよね。
「ババア、チビすぎる魔ポーション、そんなかき集めて、どないすんねん? 10,000しか回復せーへんで?」
「パフェの味じゃ!」
「甘ったるいチョコケーキみたいな味やんけ」
「私も、味見してみたいわぁ〜」
「そっちの赤い方は、オババにやるのじゃ。いや、ちょっともらうのじゃ」
「あらら。結局、ほとんど、いろはちゃんのものになっちゃったわ〜」
「欲しいときに言えば、少しならやるのじゃ」
「はぁ、ここはゴミ捨て場じゃないとか言うとったくせに、何、気に入っとんねん」
「パフェの味なのじゃ!」
「あ、カルーアミルク風味よりも、お気に召しました?」
「うぬぬ……コーヒー牛乳も美味なのじゃ。どちらが上かは、わからぬのじゃ」
「ふふっ、じゃあ、飲み比べ用に、置いていきますね」
僕は、カルーアミルク風味の魔ポーションを5本出し、女神様に渡した。
「うむ。どちらが上か、よく考えておくのじゃ!」
そう言うと、女神様は、嬉しそうに、どこかに収納されていた。
「じゃあ、僕は、そろそろ行きますね」
「あ、広場の生首達、みな連れていくのか?」
「うーん、タイガさんと二人分だから、半分あれば戻れると思いますが…」
「それなら半分置いていけばよいのじゃ。まぁ、奴らに聞いてみなければならぬが…」
「ん? はぁ…」
(まさか、女神様まで、アイツらをかわいいとか言うんじゃ?)
◇ライト商品メモ◇
●『PーⅠ』ポーション。体力100または10%回復する。モヒート風味。
●『MーⅠ』魔ポーション。魔力100または10%回復する。カルーアミルク風味。
●『F10』火無効つきポーション。体力1,000回復する。カシスオレンジ風味。
●『C10』クリアポーション。体力1,000回復する。弱い毒、細菌、呪いを解除する。パナシェ風味。
●『B10』輝きポーション。体力1,000回復する。最も輝いていたときのすべての輝きを1%付与する。モスコミュール風味。
●『H10』媚薬効果つきポーション。体力1,000回復する。媚薬効果は中程度の呪い。カンパリソーダ風味。
●『化x100』変身ポーション。男女逆転。体力10,000回復する。変身効果は弱い呪い。キール風味。
●『化y100』変身魔ポーション。時間逆転。魔力10,000回復する。変身効果は弱い呪い。アレキサンダー風味。




