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東雲大和のものがたり  作者: 佐藤 一
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第七話 仲直りのものがたり

 私達が聞いて、見た世界のそのままを、雪ちゃんに話す。

 近くの公園にあるジャングルジムのてっぺんで二人、並ぶ。

 最初は戸惑っていたようだけど、特に混乱したりすることも無く、静かに、静かに聞いていた。

「それで、私達は選ばれた新世代、英雄として戦うことになったの」

「そんな・・・・ことが。人類の消滅とマヨイモノ、神と同化した少女、地下と東郷神社、そして、御三家乃木の機縁・・・・にわかに信じがたいけれど・・・・」

「や、やっぱりそうだよね・・・・」

「そんな暗くならないで! 確かに面食らってしまったけれど、やまとちゃんや、京の事を見ていれば、それ・が本当だってことくらい分かる。だから、信じるよ」

「雪ちゃん・・・ありがとう・・・・」

「いえ、こちらこそ。そんなことになってるなんて知らずに・・・・無責任に二人を責めて・・・・本当にごめんなさい。京にも後で謝っておくわ」

「ううん! 言えてスッキリした。それに、雪ちゃんや京ちゃんより大事なものなんて・・・・ないから」

 雪ちゃんの気持ちよりも、『新』の制約を守ろうとしていた自分に腹が立つ。

 三人でした、初めての大きなケンカ。

 でも、なんてことは無い。この二人と、三人でいる時間以上に守りたいものなんて、ない。

「それじゃあ、明日、また海行こう!!」

「やまとちゃん、明日は学校だよ??」

「あっ、そうだった~・・・・はっ!」

「な、なに?!」

「宿題、ほとんど終わってない・・・・」

「それは、自業自得ね。手伝いませんから」

「そんな~」

 いつものやりとりが、一ヶ月ぶりにかわされる。

 雪ちゃんや京ちゃんと無駄話をするこの時間が、なにより心地良いんだ。


「やはり、ダメでしたか」

 そんな時、突然下から、感情の見えない、聞き慣れた声がする。

「先生・・・・なんで」

 ジャングルジムのした、黒い装束に身を包んだ先生が、私達を地面から見上げていた。

「それは・・・・あなた達の担任だからです」

 答えにならない答えを返す先生。

 すると、私と先生の会話に、雪ちゃんが割り込んできた。

「おそらく、あのクラス分けも全て『新』が仕組んだものなのでしょう?」

「それは、お答えできません」

 まるでその質問は予想していたかのように、動揺も無く返す。

「あなたが担任となったのも。京とやまとちゃんが一緒のクラスになったのも。そして」

 そこで、サッと雪ちゃんの顔が曇る。

「英雄になり損ねた乃木家の落ちこぼれが、二人の英雄と同じクラスになったのも・・・・」

「ゆ、雪ちゃん・・・・?」

「今の話を聞けばだいたいは分かるよ。・・・・なんで、お父様が私を嫌っていたのかも・・・・」

「えっ?」

 触れてはいけない話題なのだろう。

 地上と違い、コントロールされた涼やかな八月の風が、二人の間を吹き抜ける。

 雪ちゃんの話・・・・正直わからない。

 でも、雪ちゃんもまた、この世界と向き合わなければいけない人間の一人なのだ。

 だから、英雄として、支えてあげたいとは、強く思う。

 ・・・・上からだから、ちらっとしか見えなかったけど、先生は、それを聞いて、何かを必死に耐えている様にみえた。

「とにかく、乃木さんは真実を知ってしまった以上、『新』に別の形で仕えていただくことになります」

 それを聞くと、雪ちゃんは、それは楽しそうに笑い、告げる。

「乃木家にうまれたのですよ? もとから、その道しかありません。先生も面白いことを言いますね」

「・・・・失礼いたしました」

「とにかく、もう私も第三者ではありませんから・・・・それだけで今は十分です。さあ、やまとちゃん、帰ろう。いつものやつ、始まっちゃうよ?」

 この時、もっと私が雪に気を向けていたら、親友のことをもっと知っていたら。

 あんなことは、起こらなかったかも知れない・・・・

「あっ! ほんとだ!! あと一分、間に合うかな?!」

「さすがに間に合いはしないと思うよ?!」

「やっぱりそうかな・・・・でも、全力で行くよ!!」

 あるいは——



 二人が走り去り、静まりかえった夕暮れの公園。

 神村学園二学年Aクラス担任 佐藤結——

『新』英雄支援班最高責任者 東郷千園は、目を瞑り静かに立っていた。

「乃木さん・・・・真実を知って、何を思いますか?」

 御三家の一つ、東郷家の現当主であり、元英雄でもある千園。

「英雄の二人は、この仮初めの世界をどう思うでしょう」

 英雄に選ばれるのは十二歳から、十七歳までの少女であり、十八歳になると同時に力を失うという。

 実際に、十八歳を迎えた日。渡された結晶は砕け散り、砂となって消えていった。

 これから彼女達は、四年間闘い続けないといけない事になる。

 もはや・・・・二人が生き残ることは・・・・

 辺りが暗くなる中、通りすがりの車のヘッドライトが、目に溜る滴に反射する。

「でも、必ず、あの二人を助ける。そして、乃木さんも・・・・」

 その滴の奧からは、強い決意が覗いている。

「うぅ~寒くなってきました。さて、帰りますか」



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