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欠落人間  作者: 神無月
7/17

久しぶりに雨が降った

私は雨がとても嫌いだ。

あなたとの喧嘩した日を思い出すからだ


「雨は自分の汚い部分を洗い流してくれる」

そうあなたは言った。

当時はまた臭い事を言ってるなとしか

思わなかったが確かにそうかもしれない


大雨の中あなたが必死に私を探し出して

駅で人目も気にせず抱きついたあの日

自分の思い通りにならず悔しくて

あなたに八つ当たりしてしまった


あれは私が私になる前の話だ。

友達になってから私はあなたに強く惹かれ

すぐにあなたを好きになっていた。



女同士なのに?



幼い頃から私は女の子やキラキラしたものに

憧れていた。

私の本当の名前は「晴」

普段は自分の気持ちを押し殺して

男の格好をしていた。


男に生まれたことを酷く呪っていた。

父も母も私のそんな部分をひどく嫌っていて

家では厄介者扱いを幼い頃からされていた。

そんな時あなただけは違った。


あなたは何も知らなかった。

私自身のことや私のあなたへの気持ちを

知らせるつもりはなかった。


ある日あなたと2人で買い物に行った時だ

「こないだ雑誌に出てた服じゃん!」

あなたはびっくりしていたね。

よく女物の雑誌を読んでは欲しいものを

探していたのでつい声に出してしまったのだ


「ずっと気になってたんだけど、

もしかして女の子のもの好き?」

あなたは少し聞きにくそうに

でも真っ直ぐな目で私に質問してきた。

私が困っていると察したのか

「何を言われても私は晴が好きだよ」

そう優しく言ってくれた。


誰にも打ち明けることはなく

一人で抱えてきたのに

あなたは平気で私の中に入ってくる。

自分の事を打ち明けることにした


真剣に言葉を選びながら

私の話を聞いてくれたね。

「じゃあ、晴のことこれから美晴って呼ぶね!」


正直軽蔑されると思っていたのに

あなたは私をいつも驚かせてくる。

「美晴」

なぜ名前を?ときくと

「今日は晴が生まれ変わった記念日だから!それに晴は綺麗だから美晴だよ」

私は泣いていた。

「1文字私と同じだよ!」

なんて私に悪戯っ子のように言ってきた。

あなたが離れないでくれた安心感からなのか

優しさに触れて感動してるからなのか

とにかく長年塞いでいた気持ちと同時に

涙が溢れ出ていた。


私があなたに惹かれていたことは

この時はまだ言えてなかったよね。

あなたには彼氏もいたもんね、


「美晴」

この名前をあなたに呼ばれるのが

大好きだった。心地よかった。

もう1度あなたに呼んでほしい


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