第1話 出会い
はい、どうものんびり+です。
息抜きで書いてみました。恋愛ものとしてはあまり期待しない方が良いです。
唐突だが、人は誰しもが自分の趣味と言うものを持っている事だろう。例えば、読書だの音楽鑑賞だの、数え出したら切りがない。
俺こと西宮東にも勿論、趣味がある。だが、問題はその趣味だ。俺の趣味が変わった趣味なのは確実だろう。何故なら、俺と同じ趣味の人には会った事がないからだ。
まあ恐らく会った事がないだけで、いるにはいると思う。
さて、長くなったが俺の趣味をカミングアウトするとしよう。俺の趣味と言うのは所謂、女装である。
では、俺が女装を始めた経緯について軽く説明しよう。
実は俺は中性的な顔立ち故に、カワイイと囃される事が多い。
発端は中二のある日、俺は出来心から母さんの化粧品を使ってしまったのだ。化粧し終わった時の俺は、強い罪悪感と自己嫌悪を抱いた。だが、鏡に映った自分の顔を見て、そんなものは吹き飛んだ。正直に言おう、俺ってカワイくね? と思った。
その日から俺は、女装を定期的にするようになったのだ。俺がナルシストになり始めたのもこの頃から。
それは高二になった今も変わらない。
そして今日、俺は姿見鏡の前で身だしなみチェックを行っていた。姿見鏡には、どこをどう見ても女の子にしか見えない俺が写っている。ロングヘアーでも問題は無さそうだな。
「流石俺、今日もカワイイぜ」
俺はショルダーバッグを肩に下げて、家を後にした。
駅の改札を抜け、電車に乗る。女装で出歩く何てのは、慣れてしまえばどうって事ない。まあ、コミュニケーションには優れないな。流石に男だとバレてしまう。喋るなら片言くらいが限界だ。それ以上は裏声がもたない。
因みに今向かっているのは、隣町のショッピングモールだ。そこでは主に化粧品の調達、暇潰しを行う。
さて、今日は何を買おうか……。
そんな事を考えていると、ふと異変に気付く。目の前に立っている少女の顔が、何やら怯えているように見える。どうしたのかと思えば、答えはすぐに分かった。少女の後ろにいる中年男性の手が、時々少女のお尻辺りを触っているのだ。
まさかリアル痴漢に遭遇するとは。
にしても、己の欲で純粋な乙女を傷付ける何て……許せないな。
これ以上少女の怯えた表情を見るのも胸糞悪い。
俺は席を立ち、少々強引に少女の手を取って、先程まで自分が座っていた席に少女を座らせる。
「ありがとうございます」
少女は俺の顔を見据え、何とも眩しい笑顔で感謝の言葉を伝えた。俺は軽く会釈を返しておく。
それにしても、この娘めっちゃカワイイな。十人中十人が振り返ってもおかしくない容姿だぞ。
こんな娘と出会えるとは、今日はついてるかもな。
そして駅に降りた俺が、早速ショッピングモールへ向かおうとした時だった。
「あの、すみません!」
誰かに服の袖を掴まれ、呼び止められる。振り向けば、さっきの少女と目が合った。
「……何でしょう?」
都合により小さな声で尋ねる。すると、少女は急に顔を逸らしモジモジとし始める。
どうしたのか様子を伺っていると、少女から言葉が紡がれた。
「あの、電車での事本当にありがとうございました! 是非お礼がしたいのですが……お時間大丈夫でしょうか?」
これは想定外の事態だ。……しかし、特に断る理由はないか。何よりも少女の申し出を無下にするのは俺のモラルに反する!
「はい。大丈夫です」
短く返答すると、少女は眩しい笑顔を咲かせる。
「あのお店で良いですか?」
少女が指差した先には至って普通のファミレス。
「はい」
「それじゃあ行きましょう!」
気付けば俺は手を引かれ、少女に先導されていた。見掛けによらず結構アクティブな娘だなぁ。俺は少女に連れられながら、そんな事を考えていた。
ありがとうございました!