第6話 眼鏡
今日一日は良いことが起きる様な気さえするほどの最高の目覚めだった。身体を伸ばし緊張した筋肉をほぐしていく。寝ている2人を起こそうとした時ふと、茶色の小さな箱が目に入った。何だこれ?
中をみてみると眼鏡が1つ入っていた。フレームにはどうやら文字が彫ってあった。
「チャーグル…かな?」
まぁ、正直眼鏡なんてどうでもいいので2人を起こしに行った。
「おい、起きろー、朝だぞ」
「大丈夫、もう起きてます」
「おう、そうか。ミィちゃんも起きて、朝だぞ」
「むにゃ〜後・す・・…むにゃ」
ミィちゃんは起きるのが苦手なようだ。滅茶可愛い。
「クルノ、私のバックはどこですか?」
「はぁ?俺がお前の荷物なんて知ってる訳……あれ?」
「知ってる訳なんですか!?」
「俺のバックも無いな、ミィちゃんのバックも無い」
「クルノ、悪ふざけはよしてください。流石にたちが悪いですよ?」
「いや、マジで知らないって」
ジト目でこっちを見てくるナック、俺は潔白だ。
「では、盗賊に取られたのでは?」
「その可能性が極めて高いな」
取り敢えず、この辺の盗賊団を片っ端からぶっ潰すことにするかな?
「クルノ、何か恐ろしい事を考えていませんか?」
「え?考えてる訳ないじゃん。やだなーもう」
完全に読まれた……
「取り敢えず、ミィちゃん起こして町まで行くか」
―――――――――
「いやー、着いた着いた。」
「で、クルノ?お金も無いのに町に来てどうするの?」
事情を聞いたミィちゃんが聞いてくる。
「ミィちゃん一人なら勇者免許があるから泊まることは出来るがな…」
「私とクルノは野宿ですね」
「えー、だったら私も野宿する」
「いやいや、風呂とか入りたいだろ」
「うっ、それはそうだけど…」
「俺たち2人ともミィちゃんには宿に泊まって欲しいと思ってる。今回は盗賊だったが、これが人殺しなら俺たち死んでたんだぜ。野宿は危険だ。出来るだけ回避したい。わかってくれるな?」
「でも…」
なんとしても宿に泊まって欲しい。
「お願いだ」
「……そこまで言うならしょうがないな…」
「ありがとう」
ミィちゃんの了解を得られたところで宿を探しチェックインする。
「町長に挨拶に行こ」
「そうですね」
「わりぃ、ちょっと野暮用があるから2人でいってくれね」
「いいですが、なんの用ですか?」
「落し物を届けにな」
「それなら私達も同行しますが?」
「大丈夫、一人で行くよ。じゃぁ」
「ちょっと、待ちなよ。クルノ〜」
そう言ってそそくさと逃げるように去る。後ろから声がするが振り返らずに走っていく。目指すのは眼鏡屋だ。
しばらくうろついているとようやく一件目の眼鏡屋を見つけた。眼鏡屋に入りさっき拾った眼鏡について聞いてみる。
「すいません、この眼鏡について何かわかりますか?」
「お客様、質問の意味が少しわからないのですが」
質問の仕方を誤った。この眼鏡についてわかるか?なんておかしな質問をしてしまった。
「ん?その眼鏡、もっとよく見せてください」
やけに食いついてきたな。言われたとおり眼鏡を渡す。
「この眼鏡は私が町長に作った者です。」
「町長?チャーグルって名前なんですか?」
「いえ、町長の名前はナリハイカですよ。なんでも、ご友人にプレゼントするとかで注文してきたのですよ」
「ところで、なぜあなたがこの眼鏡を?」
「さっき拾ったんですよ」
「さようでございますか、私がお届けしましょうか?」
「これから町長のところに挨拶に行くので私が渡します。気遣いありがとうございます」
「いえいえ、ご用件は以上ですか?」
「はい、ありがとうございました」
店を出ブラブラと時間を潰す。これは有益な情報を得られたぞ。どうやら町長の友人と盗賊に関係が有りそうだな。取り敢えず、2人に会わないように町長のところに行こう。