第5話 マンドナルム
「何処に向かうの?」
門を出てから30分くらいした時にミィちゃんが聞いてきた。
「ナキの森に向かっている」
「なっ!ナキの森は街の掟で行ってはいけないとされているではないですか!」
「ナック、なんでナキの森に行ってはいけないんだと思う?」
「理由はわかりませんが、行ってはいけないと言い伝えられているのだから行ってはいけないのでしょう」
「俺は調べてみたんだ。街の古い文献をね」
「どうだったのですか?」
「ナキの森にはマンドナルムと呼ばれる毒草が生えているんだ」
「マンドナルム?」
首をかしげるミィちゃん……可愛いな。
「そう、マンドナルムだ。少量ならば薬などに使えるが、猛毒な故、基本的には毒殺に使われる」
「ど、毒殺ですか?」
「特に危険なのはマンドナルムの実だ。マンドナルムの実は、衝撃ではじけて周りに毒をまき散らす。ある意味では爆弾のような実なんだよ」
「要するに、実が落ちる時期になったら」
「ナキの森が毒の森になるということだ」
「なるほど、ですからナキの森には近づいてはいけないと言い伝えられていたのですか」
「成程ねぇ」
二人に納得してもらえたようだ。
「じゃ、行くぞ」
「え?いや、待ってよ」
不意に言われたので歩み出した足を軽くくじいた。
痛ってぇ。
「今がその時期じゃないから安全なのはわかったけど、どうしてわざわざナキの森を通るの?」
「それは私も思いました」
ナックはともかくミィちゃんもわからないか。
まぁ、学校の単位にはないからなぁ。
「マンドナルムはな、かなり高い値で売買されているんだ」
「あーー、マンドナルムを取ってきて市場で売るって訳ね」
「あってるけど、市場じゃなくて闇市ね」
市場なんかに売ったら教国の魔導警察隊に捕まってしまうわ!
この後もくだらない話しをしながら歩き、遂にマンドナルムが生えている地帯に着いた。
旅に出る前々からマンドナルムの採集を考えて用意していた数本の小瓶の中に入れていく。なかなか神経をすり減らす作業で、終わった頃には集中力はとっくに切れていた。
それでも、このマンドナルム地帯では寝れないので地帯から出るまで歩かないといけない。
「えー、こっからまた歩くの?クルノのスケジュールキツイよぉ」
「初日から根を上げられるとこの先が思いやられるんだが…」
「冗談だよ冗談。私は勇者だからね、こんな事で根はあげられないよ」
マンドナルム地帯をぬける頃にはすっかり日が落ちてしまっていた。
「今日はここで野宿だな」
道中拾った実など食べて今日一日が終わった。