第2話 順位
他人の卒業式だが目頭が熱くなる。理由はわかっている。俺は未だに受け入れられていないのだろう。
まぁ、卒業したメンツを見れば不合格なのはむしろ当たり前、というか生徒数が1000を超えているので合格倍率は狭き門どころの話しじゃない。
取り敢えず学校長室に行って俺の順位を聞いてこよう。そしてスッパリと諦めよう。
学校長室のドアをノックすると中から学校長ではなく学校長補佐の教員が出てきた。
「今、学校長は取り込み中だから中で待っていてくれ」
卒業式の後だから忙しいのだろう。俺は誘導されるがままにソファに腰をおろした。隣には意外な先客がいた。
「ホムラ…さん?」
「あなた誰?名乗りもせずに失礼じゃない?」
ちょっと不機嫌だぞ。まぁ、知らないだろうな俺の事なんて。天才ホムラにとっては一般生徒もこの学校も踏み台に過ぎないのだから。
「わりぃ、俺の名前はクルノだ。よろしくっ」
「ふーん」
握手の為に差し出した手を無視し、興味なさげに答えるホムラ。
「何しに来たの?」
その緋い瞳は「なぜあなたみたいな人がわたしの横に座っているの」と言わんばかりに威圧的で少々ビビってしまったが落ち着いて答える。
「試験の結果を聞きに来たんだ」
それを聞いたホムラは腹を抱えて笑い出した。えっ?俺なんかした?
「アハハ…あなた、クルノとか言ったわね…あなた馬鹿じゃないの?不合格者はみんな既に働いているのよ。己の弱さと未熟さを知り、合格出来ないと判断した生徒はみんなね。あのハミでさえも働いていたというのに…」
笑いながら話を続ける
「何もせずに、ただ自分の不合格が認められないあなたは不合格者の中でもさらに下のクズなのよ。あなたはクルノじゃなくてクズノね」
燃え盛るような緋い髪緋い瞳が特徴的で容姿端麗の天才美少女という完璧超人の彼女じゃなくても初めての会話で女の子にこんなに言われたらキズつくだろう。ってか、ちょいちょい胸に刺さる言葉が…
彼女がやっと笑い終えた頃、丁度学校長がおいでなさった。
「待たせてすまないね」
「いえ、お忙しい中申し訳ありません」
「申し訳ありません」
彼女に続いて挨拶する。
「挨拶はその辺までにして、用件を聞こうか」
「はい、先の授与の際に筆記2位と言われたのですが言い間違いではありませんか?」
「フフッ、それはないわ。今、1位の人を確認してみるわね。クルノくん、君は?」
よく俺の名前を知っていたな、さすが学校長。
「自分の順位が知りたいです」
「わかったわ。2人とも少し待っていてくれるかしら」
そう言ってパソコンを弄り始めた。
待つこと数分…
「ホムラさん、面白い事がわかったわ。」
「面白い事ですか?」
「そう、面白い事。あっ、これクルノくんの結果ね」
そう言って二つ折りの紙を1枚渡される。
「面白い事って何ですか?」
「それはね、筆記試験1位の人の名前」
「……誰…なんですか?」
渡された紙を開いて見てみる
「クルノよ」
武術457位 魔法509位 筆記1位
クルノ