上を向いても空は無い
はーじまーるよー♪
目の前で剣が交錯する。
死が頬を霞める。
当たり前の様に死んでいく。
血と土煙と殺気と…
己の全てを賭けなければ、生きる事は叶わない。
元居た世界とは命の軽さが違う。
この世界から戻るには抗わなければいけない。
死神は待ってはくれないのだから…
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この世界に来てから一月が経ち、20人が死んでいった…
しかし人数は変わらなかった。
ここでは人は死ねず、
この世から消えるには消滅を待つしか術はない。
いや、神なら或は戻してくれるかもしれない。
この空無き世界、
“エルドラから”
(俺の名前はこの世界では“ウキタ”って事に成ってる、
自問自答が好きなただの攻略者だ。
攻略者ってのは俺みたいにこのエルドラの世界の最上層を目指している奴らの事だ。
この世界はなぜか土の中に層の様にして存在している。
そしてその層の最下層に人が住み、
その上には魔物が跋扈している。
層にはそれぞれ特産と言う物が有り、
最下層では“水”“果物”“鉱石”が特産に成っている
最低限の生活は出来るが上の層ではもっと良い物が有る。
“傷が癒える水が湧く泉”“身体能力が一時的に上がる水が…
等々色々な物が有り、それらは高値で取引される。
そして最下層では転移石が取れる。
これが大きかったのだろう。)
「さて、今日はこの辺で帰るかな…。
『転移、第一層』」
ーー攻略者ギルドなう〜ーー
「こんにちは〜」
「お疲れ様です。本日はどの様なご用向きで?」
「あ、そろそろ袋が満杯なので換金にきました」
攻略者ギルドは依頼や買い取り等のツテが無いと少し面倒くさい事を
やってくれる所少し持ってかれるんでwinwin?
「はい、“レッドソルジャー”×7 “ミドルワイバーン”×4“サーペントワーム”×12
なので27080ルカですね。すごいですね〜何層まで行ったんですか?」
「36層ですかね…」
「来てまだ一月なのにすごいじゃないですか!
しかしなんでまたソロでやってるんですか?」
「いやー、ソロの方がフレンドリーファイヤーが無くて気が楽っていうかなんて言うか…」
「?…そうですか?まあ頑張ってください!」
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「そろそろこの剣じゃ厳しくなってきたな…」
(あそこで作ってもらうか…)
住宅街に有る細い路地を進む。
人気はほとんど無く、
閑散としている所にその店は有る。
「こんにちわ〜…」
(相変わらず暗いねぇ〜)
ここは一月前俺と同じくこの世界に来てしまった俺の幼馴染がやっている
鍛冶屋であるのだが…
「あ…うっ君。こんばんわ?」
「まだ昼間だよ…。みっちゃん」
こいつはミツキ。元々鍛冶屋の子で固有スキルも鍛冶系っていう生粋の鍛冶屋
なんだが…
「もうちょっと明かり付けようよ…」
「だ、だって…暗いとこの方が落ち着くんだもん…。」
と言う感じの暗いの大好きっこ。腕は良いんだけど…
「で、今日はどうしたの?うっ君」
「ああ。そろそろこの剣じゃ辛くなってきてな、
新しいやつが欲しいんだが……」
「どうしたの?」
「お前、飯ちゃんと食ってないだろ?」
「じつは…その…新しく出来る事が増えたから色々やってたら一日経っちゃって…」
「やっぱり。俺も昼飯まだだから作ってやるよ。
っとその前にお前はその煤煙まみれの体をどうにかしてきなさい。」
「はい…お風呂入ってきます……
一緒に入る?」
「入りません!早くきれいにしてらっしゃい!!」
(ふう…最近何かに付けて俺にハニートラップを仕掛けてくるんだよなぁ…
あの性格じゃ無かったらモテるんだろうな、きっと。まあ気にしないけど。)
ーー30分後ーー
「ったく、髪くらい自分で乾かせよ…」
「…と言いつつ乾かしてくれる…嬉しい」
「…お礼に私を……ぼそぼそ」
「?何か言ったか?」
「う、うんん!何でも無い!!」
(?なんだったんだろうか…)
ーーしょっくご〜♪ーー
「で?その新しく出来る様に成った事って何なんだ?」
「えーっとね、刃の部分に刻印する事で能力を付与出来るんだって」
(鍛冶の事に成ると元気なんだよなぁ…)
「へ〜どんな事が付与出来るんだ?」
「“威力増加”に“魔力節約”に“斬れ味増大”とかとにかく色々!」
「おー!そりゃすごい。で、何レベに成ったんだ?」
「67レベル!」
「はや?!ついこの前まで48レベルだったじゃん!」
「えへへーー。あ、どんな剣が欲しいの?」
「形は日本刀で長さは前と同じ位、あとその刻印ってやつを入れてくれ」
「何入れるの?」
「威力増大で頼む」
「わかったー」
「あ、あと敵の場所を探す系のやつって有るか?」
「うん、あるよー」
「じゃあ篭手それ入れたやつも一組くれ」
「…わかった、2日後にまた来てね?」
(あ、戻った)
「了解、じゃあ頼むな」
「…うん。ご飯、美味しかった」
「また作ってやるからその手を服から離してくれないか?」
「だめ?」
(負けるな俺ェ!頑張れ俺ェ!)
「あ、ああ頼む」
(そんな目で俺を見ないで!心が折れる!!)
「あの…みっちゃん?」
(おれ…おれ……)
「はーー…分かったよ。『今日泊めて下さいませんか!』」
(折れたぁぁぁぁぁ_l⌒l0)
「うん!」
ーーその日の夕方ーー
「食材何にもねえじゃねえか!!」
「…ごめんなさい?」
「少しは悪びれろ!」
という会話が有ったとか無かったとか…
あ、ちなみに転移石は行った事の有る層にしか行けないよ〜