表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

綿が出て三千厘

作者: 剣レイ

ファンタスは、上に突き出た丸い耳を整え、目の前の少女に告白した。


「僕を抱いて、寝て下さい」


目を丸くする少女。


「今日から。そして明日も、明後日も…」


顔を引き釣らせる少女。


「逃しはしな…」



ファンタスは爪による強烈なスクラッチ攻撃を喰らい、地を舐めた。



悲鳴を上げ、顔を強張らせる少女。怒りと恐怖が入り交じりながら、足を振り上げた。


ファンタスは、皆に愛されるべき存在のくまのぬいぐるみ。その愛らしいぬいぐるみが、生を受けた、奇跡の象徴なのだ。




何度も激しく踏みつけられ、頭をバウンドさせられる存在ではない。



ファンタスは、とても根気のあるぬいぐるみだ。



ダメージに身を震わせながら、手を少女に伸ばし、精一杯呼びかける。



「マーァ、マー!!」



実に不気味である。



いや、ダメージを負いながら、精一杯の声を出せば、誰もがこうなる。



仕方がないのだ。


強烈な一撃を後頭部に食らい、再び地を舐める。


痙攣を起こし、微動だにしなくなった。



風に吹かれ、身が傾く。


木枯らしが、風に揺られる様に、ただ、ただ。



同情を誘う真似は、無駄なのに。



なぜなら。



もう少女は立ち去った。


愛らしいくまのぬいぐるみ、ファンタス。



鏡を手に持ち、左耳の付け根を見よ。



糸がほつれ。




綿が出ている。



縫え、ファンタス。



その、丸々した手で。



やれるものなら、やってみろ。



いや、君なら、できるはずだよ。




何となく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] シタゴゴロ マンサイ ノ ヌイグルミ ハ ジャキ ヲ オサエル シュギョウ ヲ シタ ホウ ガ イイ ト オモイマス。 ……邪気なんかないって? 背景に効果として出てるんですよ?(たぶん)…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ