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契約者でフラグ職人な高校生  作者: 高城飛雄
2部 学園祭編
41/51

17章  兆し

昨日が祝日だったことで、色々と忙しかったため、本日の投稿となってしまいました。

ごめんなさいm(__)m


※7月25日 少々修正しました

二年生の総合得点二十傑の結果は、すぐに学校中に広まっていった。


A組からL組まで、一学年十二クラス五百人弱の生徒がいる中で、学年二十傑に一クラスから五人もの生徒がランクインしたという快挙は、ここ数十年で一度も無かったのだという。


そしてもう一つ、話題の中心となっているのは、転入早々二十傑に食い込んできた二名の女子生徒だった。



彼女らは試験以前から何かと話題の多い二人だ。


時期はずれな上に人数のバランスが崩れることが明らかでありながら、どちらもA組に配された……。

いや、確かにうちのクラスは他よりも一人少ない状態だったのだから、一人目がうちに所属することになったのは必然だろう。

だが、一人目の転入生が来てたった半月のところに、二人目までもがA組に配属された。


それだけでも注目が集まるのは当然の理なのだが、おまけにどちらも才色兼備の秀才ときた。

学校中の視線が集まるのも無理はない。



「雅人さん、すごいです。総合で二番目だなんて」

「ありがとう。でも、雪姫さんも四位じゃないか。ほとんど琴音に並んでるんだから、すごいと思うよ」

「あ、ありがとうございます」



………。



「雅人」

「あ、凛。凛もベスト二十に入ってるね。おめでとう」

「二位のあなたに言われても、嫌味にしか聞こえないのだけれど……。まあ、ありがとうと言っておくわ」



………………。



彼女たちには相当の注目が集まっていると、たった今説明したばかりだと思う。

そんな状況に対して、火に油を注ぐ形になっているのが今のような一幕だ。


二人の転入生は、あの蒼井雅人といつも一緒にいる、と――。









さて、諸君。

初めまして、と言っておこう。


なにせ、こうして俺が語り部となるのは今回が初めてだからな。


思えば俺も、物語当初から冷静な指摘役として登場しておきながら、ここまで語り手として諸君に接する機会はなかったわけだ。


雅人の天然ジゴロっぷりの所為で女性ばかり出てくるこの物語において、俺の果たす役割は重要なものだと自負しているのにな。


それにしても雅人の奴ときたら、放っておくと本当にあちらこちらでフラグ建てしてしまうからな…。

それでいて本人には自覚がないというのが厄介だ。


好意に鈍くなってしまう人間がいるのはわかるが、あれだけ鈍すぎるとなるといっそ女に興味がないのではないかと疑いたくなる。


まあそんなことはありえないというのは、中学時代のあいつを知っていればわかることだが。



……ああ、すまない。

ただの愚痴になってしまったな。

こんなことを語るために来たのではなかった。

話を戻そう。



とはいえ、こういった場合まずは自己紹介から入るべきなのか?


なにぶん初めてのモノローグなもので、どうやって進行していくのがいいのか、まだよくわかっていないのだ。


だが、まあ、そうだな……。


やはり俺自身が何者なのか、まずはしっかりと名乗っておくのが筋というものだろう。

ここで俺が誰なのか判ってもらえなければ、以後の俺の話すこともほとんど理解できないだろうしな。

察しのついている者もいるだろうが、そんな鋭い君にもどうか聞いて欲しい。



俺の名前は堺仁之助。


私立秋鷹高等学校2年A組に所属する、世間一般で言うところの優秀な人間だ。


おっと、ナルシストだとか思わないでくれよ?

これは現在俺が位置する状況を、客観的に見たうえで言っていることなのだからな。


なにせ俺は、全国トップクラスの学力を誇るこの秋鷹高校でベスト20に食い込む成績を常にキープし、強豪ひしめく西東京地区で甲子園常連校と呼ばれる秋鷹高校野球部の現エースの座に着いている。


このことからも予想される通り、スポーツでは何をやっても大抵は上手くこなせる自信がある。

また幼い頃よりの研鑚の甲斐あってか、容姿もいい方だ。


そんな自分でもわかるほど他人より優秀な俺は、当然のごとくモテる。

どこぞの超人な親友には及ばないが、校内校外の女性からたくさんの好意を向けられる。

日本全国で見れば、一度甲子園のマウンドに立ち、全国のお茶の間に姿を晒している分、俺の方が勝っているかもしれない。



そして、俺は超絶鈍感な親友とは違い、好意に敏いのだ。

俺に向けられる好意も、他者が人から受けている恋慕の視線も、すぐに気がつくことができる。

挙動や表情、視線の動きなどで、人が人へ向ける好意がわかるのだ。





人から人へ向けられている好意がわかる―。

それは雅人が大なり小なり関わった数多くの女性が、あいつに向ける視線にいち早く気がつくことができるということだ。

羨ましいやつと思う反面、俺は心配もしていた。


だからこそ、俺は今まで雅人に近寄る無粋な輩を排除してきた。

あいつの見た目や表に出る性格だけに惹かれて寄ってくる、浅はかな人間を排斥してきたのだ。


もちろん、雅人の思わせぶりな態度から女性を守るという側面もある。

しかしそれ以上に、俺が唯一敵わないと認めたあの親友を、煩わせる人間を近づけたくなかったのが一番だ。

あいつは良くも悪くも優しすぎるからな。


それに、あいつが中学時代、恋人のように親しくしていた幼馴染を亡くしたというのはよく知っている。

なにがあってそんなことになったのかは知らないが、あいつの当時の落胆さを見るに、ただの病死や事故死ではなさそうだ、ということくらいは予想がつく。


それでもどうにか立ち直り、くさることなく邁進し続けてきたあいつだからこそ、俺は助けてやろうと思えるようになったのかもしれない。

 




さて、大分長くなってしまったが、そろそろ本題に入ろうか。


俺は持ち前の鋭い洞察力を活かし、二人の転入生、二条と弓月が来てからの雅人の様子を観察していた。



転入した当日から早々に話題を作り上げてしまった二条と雅人。


転入以前から知り合っており、既に並々ならぬ仲であることを窺わせた弓月と雅人。


そして二人の転入生の登場を皮切りに好意を隠さなくなった柊と雅人。



三人の美少女に囲まれ、誰もが羨む日々を送る雅人を、俺は具に観察していたのだ。


そして二条がこの学校に来てからおよそ一月が経った現在、俺は雅人の変化を感じていた。




それは一時的に意気消沈していた雅人が、数日後に立ち直ってからのことだ。


耳に挟んだ情報を頼りに推測と考察を重ねた結果、試験前週間直前の土曜日、雅人のやつは、どうやらまたも厄介事に巻き込まれたらしい。


まるで四年前に戻ったかのように落ち込んでいた雅人だったが、今度は立ち直りも早く、翌々日の朝にはいつもと同じあいつになっていた。



いや、正確にはいつものあいつではない。


非常に細かい、かつ微妙な変化ではあるのだが、元気を取り戻した雅人は少しだけ変わっていたのだ。


それは今現在目の前で繰り広げられている光景からも察することができる。



「また雅人に勝てなかった……」

「でも、前よりずっと差が縮まってきたじゃないか。この分だと、すぐに追いつかれちゃうな……」

「まだ百点近く差があるじゃない。追い付ける気がしないわよ、まったく……」

「あはは……」

「雅人さん、数学二つと家庭科で満点だったんですね。すごいです」

「ありがとう、雪姫さん。どれも得意科目だから」

「それなんだけど。数学ならまだしも、家庭科が得意な男子ってどうなのかしら」

「えっと……別に男だから家庭科できちゃいけないわけじゃないでしょ?」

「それはそうなのだけど……。なんだか女としてのプライドがね」

「弓月さん……。その理論でいくと、一人を除いたこの学校に通っているすべての女子生徒は、女として立つ瀬がなくなってしまうわよ……?」

「そうなのよね……」

「で、でも、家庭科の得意な男の人って素敵じゃありませんか?」

「うーん……。『家庭的な』とか、『料理の出来る』とかのフレーズは、確かにいい男みたいに聞こえるけど……」

「『家庭科が得意』っていうのは微妙ね」

「あはは……」





ふむふむ。

やはり僅かながら以前と違うな。

どうやら俺の見立ては間違っていなかったようだ。


えっ?

どこが変わったのか、だって?


そうだな……。

なんと説明するべきか……。


強いて言うならば距離感だろうか。

音声だけでは判らないとは思うのだが、先程の彼ら四人の会話、その間の彼らの距離感が、以前とは少し違っている。


二条と弓月、そして柊の三人と雅人の間の距離感が、物理的にも精神的にも近づいているようなのだ。


先日の勉強会のときにあった一幕や、それ以降の会話の調子から察するに、どうやら雅人は彼女ら三人を特別に意識しだしたようなのだ。


それがあいつの中学時代の想いと同じものになるのかはわからない。


だが、これから先、あいつがどのような想いを抱くようになるのか見物なのは確かだ。





ひいては週明けから始まる合宿。


心境の変化があったらしい雅人と、ようやくスタートラインに立てたらしい三人の女生徒が繰り広げる光景は、心配且つ羨ましいのは当然の如く、今からもう面白そうに思えてならない。


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