2章 私立秋鷹高等学校
僕の通う私立秋鷹高校は東京都八王子市の、神奈川県との県境近くに位置している。
都心部から程よく離れた郊外の、新宿まで電車でおよそ40分程の場所にある。また、この辺りは周囲に山が多く土地もたくさんあるために、秋鷹高校は大学並みの広大な敷地面積を有している。
その広大な敷地を活かし、いくつもの専用グラウンドやトレーニング施設を抱えていて、強豪と呼ばれている部活も多い。
また、中高一貫教育を採用していることと、文武両道を掲げているだけあって学力レベルもかなりの高さを誇っている。
県外からの入学希望者にも対応できるよう、学校から徒歩10分くらいの場所に男女別の学生寮があり、最大収容人数は300人とも言われる。
極めつけはその学費の安さ。OBやOGの寄付がかなりの額に上るため、在学生の学費は世間一般の私立高とは比べられないほどに低額になっている。
以上のような理由から、秋鷹高校は全国的にも非常に人気が高く、高校から入学するためには偏差値68と倍率15倍前後の試験を勝ち抜かなくてはならない。
まさに同年代トップクラスの人材が集う場所なんだ。
「そんなエリート高校に“家から近いから”という理由で来たのはお前だけだよ、雅人」
朝、教室の自分の席に着くなり中学時代からの友人、堺仁之助に言われてしまった。
「えーと、仁。連休明けの朝からどうしたのさ…。なんか元気ないけど」
「はぁ…気にするな。ただの八つ当たりだ」
「いや、気にするだろ。っていうか八つ当たりですか…」
ぶっちゃけすぎな友人は、どうやら愚痴りたいようなので聞いておくことにしよう。
「俺は自分のことを割と優秀な人間だと思っていたんだが…」
「仁は優秀じゃないか」
「……お前に言われても嫌味にしか聞こえん」
「あははは…そんなことないだろ」
「はぁ…。身近にこれだけのやつがいると、俺がどれだけ頑張っても霞むわな…」
仁は野球部の2年生エースで、それほど大きくないが締まった体つきをしていて、顔も爽やかなスポーツ少年という印象だ。
それに加え、昨年の甲子園決勝戦3回2点ビハインドで当時エースの先輩に代わって登板し、以降相手の攻撃をシャットアウト、一躍注目を浴びた経歴を持っている。
また成績もよく、常に学年トップ20にはランクインしている。
間違いなく優秀な人間だと思うんだけどなぁ…
「僕は仁をとても頼りにしているよ」
と言うと、友人はジト目で睨んできたあと、目をそらしなんだかぼそぼそと言った。
「………これだからあちこちでフラグが建つんだよな」
「何か言った?」
「なんでもねぇよ。邪魔したな」
そう言うと、仁は自分の席に戻って行ってしまった。
いったい何を言いたかったんだろう…?
矛盾点修正しました。