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契約者でフラグ職人な高校生  作者: 高城飛雄
1部 二人の転入生編
19/51

18章  チームメイト

特殊諜報戦闘部隊、SEFUは英語表記の"Special Espionage Fighting Units"の略だ。

その名の通り、他国での諜報活動や、警察権力などの対処できない危険分子の排除などの任務にあたっている。スパイから暗殺まで、国家の安全のために汚れ仕事までをもこなすマルチエージェントの集団なんだ。

その存在を知っているのは、部隊の人間と極一部の限られた国のトップのみで、公にされることはない。


かくいう僕もエージェントの一人で、階級は少尉だ。

SEFUでは、隊員全員に階級が与えられている。現役高校生にして将校の僕は、部隊内の最年少将校の一人なんだ。

でもまあ、部下を持って指揮を執るなんてことはできればやりたくないんだけどね。






リフトを降りた僕は、多くの隊員が現在進行形で各国の動向を監視している中央モニタールームを抜けて、第4作戦室と書かれた表札のある部屋に入った。

音もなく開く自動ドアの入り口をくぐり部屋の中に入った僕を、3人の人物が迎えてくれた。


「よお雅人。いつものごとく、15分前行動か?律儀な奴だな」

最初に声をかけてきたのは、この本部常駐の本郷政宗ほんごうまさむねさんだ。

24歳と若くして階級は少佐という実力者。

剣道、柔道、合気道ともに5段で、特に剣道に関してはインターハイで2連覇した経歴を持つ、近距離戦闘のスペシャリストだ。

とても気さくな人で、年上なのに大きな態度とかはとらない。

頼れる人だ。


「こんにちは。雅人君」

次に僕を呼んだのは、安部那智あべなちさん。

22歳の女性で、実家は陰陽師の家系らしく、幼い頃から人には見えないものが見えているとか。

そんな生来の能力を活かして、遠くのものをみたり、周囲の気配を探ったりと、後方支援的な役割を担うことが多い。

性格的には穏やかでいつも柔らかな雰囲気を纏っているといった感じかな。

階級は准尉だ。


「久しぶり、雅人」

そして三人目が弓月凛ゆづきりん

彼女は僕と同じ現役高校生で同い年の女の子だ。

小中学時代をアメリカで過ごし、高校入学と共に日本に帰ってきた帰国子女。

常に状況を分析する冷静さと、スナイパーライフルを用いた狙撃の腕を買われて部隊にスカウトされた英才で、僕と同時期に入隊した同期でもある。

階級も僕と同じ少尉。つまり彼女が2人目の最年少将校ってことだ。


「皆もう到着されてたんですね。待たせてしまってすみません」

僕が頭を下げると、政宗さんが側に寄って来て肩を叩いた。

「おいおい、お前は15分前行動してるだろう?謝る必要はない」

「そうそう、私たちが早く着きすぎてしまっただけよ」

「気にしないで。あなたは悪くない」

「ありがとうございます」

皆口々に宥めてくれた。本当にいい仲間たちだよ。



そうやって僕たち4人が再会に盛り上がっていると、僕が入ってきた扉の反対側にある扉が開いた。

「よお、お前ら。もう全員揃ってるようだな」

入ってきたのは先日援軍に駆け付けてくれた藤宮大佐だった。

「大佐!お久しぶりです」

政宗さんがビシッと敬礼する。政宗さんは大佐をすごく尊敬しているらしく、大佐の前では気合が違う。

「おう、政宗か。久しぶりだな。那智も凛もな。凛はまた一段と美人になったじゃねえか」

「あ、ありがとうございます」

「もう、大佐。私には何もないんですか?」

赤くなって恥じらう凛と、可愛らしく頬を膨らます那智さん。

「那智、お前はそれ以上人目を引くようになったら仕事にならんだろう」

「あら、そうかしら。そう言われると悪い気はしませんね」

大佐は相変わらず、人を褒めて乗せるのも宥めるのも上手いな。


そんなことより…

「大佐、先日はありがとうございました」

「おう雅人。いや礼には及ばねえよ。こっちも奴を始末する手間が省けたからな」

「そうですか。お役に立てて光栄です」

僕たちが先日の事件について語っていると、3人が興味深そうに件の事件について訊いてきた。

「ああ、5日前のことだ。部隊が目を付けてた女子生徒連続誘拐事件の犯人、実はこいつ影付きだったんだが、そいつを雅人があっさり始末しちまったんだよ」

大佐の言葉に3人とも驚きの表情を浮かべる。那智さんが大げさ、凛が控えめなどと程度の差はあったが…。

「まあ犯人を始末できても、被害者達を全員雅人が保護するのは無理があるからな。3人を駆けつけた俺が保護した、というわけだ」

「なるほど、そういうことでしたか」

「しかし雅人、相変わらずお前の周りでは事件が多いな」

話を聞いた那智さんと政宗さんが笑う。

「冗談じゃないですよ、政宗さん」

僕も自らの巻き込まれ体質っぷりに苦笑いを浮かべる。

これまでの人生で、今回のように事件に遭遇したのは1回や2回どころじゃないんだ。


「ちょっと待って」

と、一人だけ未だ腕を組んで納得のいかないといった表情をしていた凛が切り出した。

なんだか怖い顔をしているように見えるのは気のせいだろうか…。

「大佐、少し違和感を感じたのですが」

「お、おう。なんだ?」

大佐もいつもより萎縮しているように見える。

「雅人が犯人を始末した後、大佐は被害者全員を保護したのですか?」

こ、これはマズイ!

大佐をちらっと見ると、僕と同じように微妙に狼狽えているように見えた。

「そ、そりゃあ…」

「嘘を吐いてもわかりますよ。後で隊長にも訊いておきますので」

「………」

大佐は苦虫を噛み潰したような表情になった。そして僕の方をちらっと見る。

僕は小さくため息を吐いて頷いた。

別に口止めをしていたわけではないけど、話せば面倒なことになるのは大佐も解ってくれていたようだ。

「……実はな、俺は全員を保護したわけじゃねえ。被害者は全部で4人いたんだが、俺が保護したのは3人。あと1人は雅人が連れ帰ったのさ」

「………やっぱり」

凛はじとーっとした目で僕の方を見てきた。

僕は苦笑いを浮かべるしかなく、大人しく事件の全貌を語った。


その間、政宗さんと那智さんがニヤニヤ笑いを浮かべていたことは言うまでもないよね。





「それで、その女の子を家に運んで目を覚ますまで面倒を看たのね」

被害者がクラスの女の子の雪姫さんであること。彼女が気を失って目を覚まさなかったこと。そして彼女は転校してきたばかりで彼女の家の所在もわからなかったことなど、事情を事細かに説明する間、僕は何故か正座させられていた。

「はい、そうです」

なんか同じようなことが前にもあったような……。

「なるほど。それじゃあそれが真実か、あなたの相棒に訊いてみようかしら。出てきて頂戴」

凛がそう言うと、これまで大人しくしていたルーナが僕の隣に姿を現した。彼女もまた、出てきたそばから正座をしている。

以前からどういう訳か、ルーナは凛を苦手としているようだ。

「あ、ルーナちゃん久しぶり~」

空気を読まない那智さんが彼女に呼びかけるが、彼女はちらっと那智さんを見ることしかできなかった。

「それで?」

凛が再度ルーナに問いかける。

ルーナは一瞬ビクッと身を震わせた後、おずおずと答えた。

「え、ええ。雅人の言うことは本当よ。彼女に手を出したりはしていないわ」

「そう、わかったわ。ありがとう」

ルーナから言質を取った凛はまたも僕の方に向き直った。

「これで一応あなたの潔白は証明されたのだけど、何か言いたいことはあるかしら?」

凛が少し声を和らげて訊いてくる。

凛に言いたいこと……。


「そういえば、凛はどうして僕のことをそんなに気にするの?特に女性関係について」

今までずっと抱いてきた疑問をぶつけてみた。

そもそも僕は、今回のことに関しても、どうして凛に問いただされているのかわかっていないのだった。

「お前、それは……!?」

「雅人、本気なのか……?」

「あらあら、雅人君は相変わらず鈍感なのね」

ちなみに今のは順に、大佐、政宗さん、那智さんの言葉だ。

………?

鈍感……?

どういうこと?


「そ、それは………どうでもいいでしょ!」

凛は突然赤くなってそっぽを向いてしまった。

「いや、どうでもよくないでしょ。僕のことなのに…」

「うう……」

凛の顔はどんどん赤みを増していく。それでも答えは返ってこない。

「凛…?」

「………」

「熱でもあるの?」

「ひぅ!?」

ちょっと心配になった僕が彼女の額に手を当てると、ついに彼女の顔が真っ赤に染まった。そのまま動かなくなる。

「ねえ、凛。大丈夫?」

「そっとしておいてやれ、雅人。そうなっちまったらしばらくは戻らない」

政宗さんに肩を引かれた僕は、凛から離れた。

凛は那智さんに頭を撫でられているが、未だに固まったままだ。

大佐もやれやれといった風に肩をすくめている。

ルーナは凛が大人しくなってやっと緊張を解いているだ。



そう、いつもこんな感じの大佐、政宗さん、那智さん、凛、そして僕とルーナの6人が、この部隊の「非科学事象及び事件」を担当するチームだ。

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