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契約者でフラグ職人な高校生  作者: 高城飛雄
1部 二人の転入生編
13/51

12章  第一次二姫決闘…?

「彼女はルーナ。ルーナ・ラプリネ。この世界の裏側にある、影の世界の姫君だよ」

僕はパートナーのルーナを、雪姫さんに紹介した。

あまり気は進まないんだけど、こうして見られてしまったからには話さないわけにもいかないよね。

案の定、雪姫さんはぽかんとした表情をしている。

にもかかわらず隣でルーナは腕を組み、誇らしげにしている。

ため息をつきたくなる衝動を何とか抑えて、僕は構わず話を続けることにした。

「10年くらい前かな。イギリスで凶悪な連続殺人事件が起きたんだ。犯人はすぐに割り出せたんだけど、抵抗が激しくてなかなか捕まえられなかったんだ。記録では犯人一人に対して、80人の警官隊でも手の打ちようがなかったらしい。」

雪姫さんの表情がだんだんと険しいものになっていく。

「犯人に手が出せないまま、1か月ほどたったある日。突然犯人が倒れて、そのまま息を引き取ったんだ。犯人の亡骸を司法解剖しても、抵抗できた理由はおろか死因すらもわからない始末だった」

隣のルーナが昔を懐かしむように遠い目をしていた。

「それからかな。世界中で不可思議な事件が起こるようになったのは。誘拐や失踪、殺人や強盗、どれも犯人を割り出すことまではできるのに、どうしても捕まえられなかった。そして、最後にはみんな原因不明の死を迎えていた」

雪姫さんが話についてこれているか、少し心配に思いながらも続けた。

「その理由が、犯人たちは人ならざる者たちの力を受け取っていたからなんだ。人ならざる者たち、それが影の世界の住人たちなんだ」

雪姫さんは真剣な表情のまま、少し眉をひそめた。

「もともと影の世界っていうのは、この世界と重なって存在していて常にすぐそばにあるんだ。でも人間がそれを視認することはできない。影の世界の住人達も知識としては知っていても、認識はできていないらしいんだ。そもそも、この世界と影の世界は、互いに干渉できないはずなんだよ」

『でも、10年前のある日。一人の人間の男が私たちの世界とこちらの世界を繋いだ。その繋がりによって、私たちはあなたたち人間に声を送ることができるようになった』

ルーナが途中で話を引き継いだ。雪姫さんはそのままルーナの方に目を向けて、話に聞き入っていた。

『そのことにもっと早く気がついていればこんなことにはならなかったんだけど…。とにかく、どういう理由かはわからないけど、このことを知った影の住人達は人間にコンタクトをとろうとしたの。まあほとんどが失敗だったんだけど』

「それに話はできてもお互いに干渉できないのは変わらなかったんだ。“契約”に気がつくまでは」

「“契約”?」

それまでじっと聞き入っていた雪姫さんが久々に声を出して、聞いてきた。

『そう“契約”よ。私たち影の住人は、あなたたち人間の寿命を頂戴することで、この世界に干渉できるようになるのよ。もちろん、もらった寿命が長ければ長いほど大きく干渉できるの』

「っ!?」

雪姫さんが声にならない驚愕をみせる。

「そして、影の世界の住人の力を受けた人間が、残り少ない生涯を自分の欲望のままに生きたのが、世界中で起きた不思議な事件なんだ。そして、昨日雪姫さんを襲ったやつもその一人なんだよ」

雪姫さんが信じられないといった顔をしていた。

無理もない。一般人からしたらまったくナンセンスな話だもんな。

「あ、あの…」

そんな雪姫さんが質問、といった風におずおずと手を挙げた。

「雅人さんも、その…“契約”をしてるんですか…?」

うん?なんか予想していた質問とちがうな…。

そしてこの質問には、何故かルーナが真っ先に答えた。

『ええそうよ。雅人は、わたしと“契約”しているの。だから雅人にとって私は大切な存在なのよ』

……なんだかすごく気になる言い回しだな。ニュアンスもちょっと違う気がするし…。

「や、やっぱり…」

ほら、雪姫さんも驚いてるじゃないか。それになんでか目が据わってる気が…。

「あのさ…ルーナ?」

『雅人は少し黙っていて』

怒られてしまいました。なんで…?

「あの……雪姫さん?変な誤解はしな」

「雅人さんは静かにしていてください」

………なんなのさ。いったい…。

そのまま二人は無言でにらみ合っている。視線の間に火花が見えそうだよ…。

ていうかどうして対立してるの?

考えてもわからないので、直接聞いてみようと思います。

「あ、あのー……?」

『うるさい!』

「うるさいです!」

「ご、ごめんなさい…?」

同時に怒られてしまいました。なんでよ…?

僕が一人でビビッていると、

『どうやら簡単にあきらめてはくれないようね』

「はい、あきらめません。たとえルーナさんの方が現状有利だとしてもです」

『うふふ、可憐な見た目なのに気が強いなんて…。気に入ったわ』

「ルーナさんも、大人っぽいのに一途なんですね。素敵だと思います」

『これからよろしくね。ゆきちゃん』

「こちらこそよろしくお願いします。ルーナさん」

そう言って握手する二人。

いい話だ、とか思ったそこのあなた。目の前で見たら恐怖に震えますよ。

このやり取りの間二人は顔は笑っていても、目は全く笑っていなかったんですから。

っていうかルーナ、握手痛いの我慢してるみたいなんですけど……。

雪姫さんって握力強いんだ……。


そうして、二人を見つめていた僕はこの先の二人の戦いを思い、一人ため息をついた。

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