「お前を愛するつもりはない!」と言った夫の人が「何でご機嫌取りに来ないんだよ」と言った
あれ?また愛するつもりはないの話じゃん…
「お前を愛するつもりはない!」
初夜。夫の人が言った。
「かしこまりました」
私はそう言うと、夫婦の寝室から出て、自分の寝室へ戻った。
「ちょ…ちょっと待てよ!」
夫の人が何か喚いていたが、気にしない。
面倒な夫の相手をしなくて済むなんて、なんて幸せなの!
私はルンルンでベッドに潜り込んだ。
政略結婚なんだから、それなりに夫婦の役割をすれば、あとは自由かな。
夫の人に気を使わなくて良いなんて。
使用人は、とくに何事もなく、普通に仕事してくれるし。
面倒な夫の人に気を使わなくて良いし。
領主夫人としての仕事はきちんとこなしているし。
私は毎日楽しく暮らしていた。
それから、夫の人と会わずに1ヶ月経った。
「何で来ないんだよ!」
夫の人が言った。
「何ですか?」
意味が分からなくて首を傾げた。
「普通なら、夫のご機嫌取りに来るもんだろ!」
知らんがな。
愛するつもりはないって事は、愛されるつもりもないって事だろ。
「妻としての仕事はしています。何か問題でも?」
私は澄ました顔で言った。
「夫のご機嫌取りに来いよ!」
夫の人が怒鳴った。
「何故『愛するつもりはない』と言った人のご機嫌を取らなければいけないんですか?」
私は笑いたいのを堪えていた。
お子ちゃまが駄々こねている。
これが、成人男性なのか。
領主の仕事ちゃんとできてるのかな?
大丈夫かな?
「妻の役目だろう!」
当然と言わんばかりに胸を張っている。
妻は『愛するつもりはない』と言った人を愛さなければいけない決まりはないんだが?
「『愛するつもりはない』と言ったのだから、当然愛されるつもりもないのでしょう?」
「そんなわけあるか!妻は夫を愛するものだ!」
夫の人は、地団駄を踏んだ。
駄々をこねる幼児。
そのうち、床に寝転がるかもしれない。
面白そう。
「『愛するつもりはない』と言いながら、愛されるつもりだったんですか?」
「当たり前だろ!何を言われても妻は夫を愛するものだ!」
それは、お前の中でだけだろ。
現実を見ろ。
「では、あの時に『俺はお前を愛するつもりはないが、お前は俺を愛せ』と言うべきでしたね」
「言わなくても分かるだろ?」
分かるかボケ。あら、口調が悪くなってしまったわ。
「赤の他人が分かるわけありませんね」
「お前は俺の妻だろ?」
政略結婚だからって、婚約中に会いにも来なかっただろ?お前。
それで愛されると思ってたのか?
結婚したら、無条件で愛されると思ってたのか?
頭の中がお花畑だねぇ。
令嬢でも、そんな夢を見る事なんてないのに。
「政略結婚に愛を求めるのが、そもそもの間違いです」
「何だと!?お前とは離婚だ!」
夫の人がドヤ顔をした。
「かしこまりました」
私は礼をして、実家に戻る準備をして、さっさと実家に帰った。
そして、さっさと離婚の手続きをした。
その後、夫の家は没落した。
私の実家に借金を肩代わりしてもらっていたのに、離婚したから、借金を自分で返さなければいけなくなったからだ。
私は、再婚して幸せに暮らした。
元夫の人が、平民になって苦労してようが、知った事じゃないからね。
新しい夫は、『愛するつもりはない』などと言わない、まともな人だった。
良かった。
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