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「お前を愛するつもりはない!」と言った夫の人が「何でご機嫌取りに来ないんだよ」と言った

作者: 井上さん
掲載日:2026/04/25

あれ?また愛するつもりはないの話じゃん…

「お前を愛するつもりはない!」


 初夜。夫の人が言った。


「かしこまりました」


 私はそう言うと、夫婦の寝室から出て、自分の寝室へ戻った。


「ちょ…ちょっと待てよ!」


 夫の人が何か喚いていたが、気にしない。



面倒な夫の相手をしなくて済むなんて、なんて幸せなの!


 私はルンルンでベッドに潜り込んだ。



政略結婚なんだから、それなりに夫婦の役割をすれば、あとは自由かな。

夫の人に気を使わなくて良いなんて。


使用人は、とくに何事もなく、普通に仕事してくれるし。

面倒な夫の人に気を使わなくて良いし。

領主夫人としての仕事はきちんとこなしているし。


 私は毎日楽しく暮らしていた。




 それから、夫の人と会わずに1ヶ月経った。




「何で来ないんだよ!」


 夫の人が言った。


「何ですか?」


 意味が分からなくて首を傾げた。


「普通なら、夫のご機嫌取りに来るもんだろ!」


 知らんがな。

愛するつもりはないって事は、愛されるつもりもないって事だろ。


「妻としての仕事はしています。何か問題でも?」


 私は澄ました顔で言った。


「夫のご機嫌取りに来いよ!」


 夫の人が怒鳴った。


「何故『愛するつもりはない』と言った人のご機嫌を取らなければいけないんですか?」


 私は笑いたいのを堪えていた。

お子ちゃまが駄々こねている。

これが、成人男性なのか。

領主の仕事ちゃんとできてるのかな?

大丈夫かな?


「妻の役目だろう!」


 当然と言わんばかりに胸を張っている。


妻は『愛するつもりはない』と言った人を愛さなければいけない決まりはないんだが?


「『愛するつもりはない』と言ったのだから、当然愛されるつもりもないのでしょう?」


「そんなわけあるか!妻は夫を愛するものだ!」


 夫の人は、地団駄を踏んだ。

駄々をこねる幼児。

そのうち、床に寝転がるかもしれない。

 面白そう。


「『愛するつもりはない』と言いながら、愛されるつもりだったんですか?」


「当たり前だろ!何を言われても妻は夫を愛するものだ!」


 それは、お前の中でだけだろ。

現実を見ろ。


「では、あの時に『俺はお前を愛するつもりはないが、お前は俺を愛せ』と言うべきでしたね」


「言わなくても分かるだろ?」


 分かるかボケ。あら、口調が悪くなってしまったわ。


「赤の他人が分かるわけありませんね」


「お前は俺の妻だろ?」


 政略結婚だからって、婚約中に会いにも来なかっただろ?お前。

それで愛されると思ってたのか?

結婚したら、無条件で愛されると思ってたのか?

頭の中がお花畑だねぇ。

 令嬢でも、そんな夢を見る事なんてないのに。


「政略結婚に愛を求めるのが、そもそもの間違いです」


「何だと!?お前とは離婚だ!」


 夫の人がドヤ顔をした。


「かしこまりました」


 私は礼をして、実家に戻る準備をして、さっさと実家に帰った。

そして、さっさと離婚の手続きをした。




 その後、夫の家は没落した。


私の実家に借金を肩代わりしてもらっていたのに、離婚したから、借金を自分で返さなければいけなくなったからだ。



 私は、再婚して幸せに暮らした。


元夫の人が、平民になって苦労してようが、知った事じゃないからね。


新しい夫は、『愛するつもりはない』などと言わない、まともな人だった。

良かった。

読んでいただきありがとうございます

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