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勝つたびに君を忘れる  作者: ナオ


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3/12

3話「誰が、誰を…」

 静寂が嫌になるくらい、静かだった。


『結果を開示します』


 その声は特に、クリアに響く。


 ナオは息を止めた。


 隣に、サチの気配。


 近い。


 なのに――遠い。


 画面が、浮かび上がる。


 名前。

 矢印。

 誰が、誰に入れたか。

 全部、出る。

 逃げ場はない。


『開示します』


 次の瞬間。

 線が表示された。


 


 ナオ → 男A

 サチ → ナオ

 男A  → サチ

 女  → ナオ


 


 空気が止まる。


 ……は?


 ナオは、一瞬理解できなかった。


 そうじゃなくて、理解したくなかった。


 サチが。


 自分に、入れてる。


「……おい」


 男Aが低く言う。


「お前、サチに入れたのか」


 ナオは動かない。


 視線だけ、サチに向ける。


 サチは、何も言わない。


 ただ、こちらを見ている。


 ……なんだその顔。


 驚いてもいない。


 焦ってもいない。


 まるで――


 最初から分かってたみたいな顔。


「ナオ」


 女が言う。


「なんでサチに入れてないの」


 ナオは、ゆっくり口を開く。


「……分散させるためだ」


「全員バラければ、最多は出ない」


「だから――」


「でも」


 サチが、遮る。


 静かに。


「バラけてない」


 一拍。


「結果、見たでしょ」


 ナオは言葉を失う。


 ……そうだ。


 バラけてない。


 ナオに、二票。


 最多。


 つまり――


『最多票を確認』


 無機質な声。


『対象者を排除します』


 ナオの心臓が、跳ねる。


 ……俺か。


 ここで終わりか。


 こんな、くだらないミスで。


 クソが。


 ナオは、息を吐いた。


 ……仕方ない。


 そう思った、そのとき。


『――条件を再確認します』


 空気が、わずかに揺れる。


 ナオは目を細めた。


 ……?


『最多となった場合、その者は排除されます』


 ゆっくり。


 区切るように。


『ただし』


 全員の視線が、天井に集まる。


『最多が複数存在する場合』


 一瞬の間。


『該当者全員を排除します』


 凍る。


 空気が、完全に止まる。


「……は?」


 誰かが、かすれた声を出す。


 ナオは、画面を見る。


 ナオ 2票

 サチ 1票

 男A 1票


 ……いや。


 違う。


 違う。


 これ。


 “複数”じゃない。


 ナオは、息を詰まらせる。


 サチを見る。


 サチも、こちらを見ている。


 そして――


 ほんのわずかに、笑った。


 その瞬間。


 ナオは、理解する。


 こいつ。


 分かってた。


 最初から。


「……お前」


 ナオの声が低くなる。


「やったな」


 サチは、何も言わない。


 ただ、視線を逸らさない。


 逃げない。


『排除を実行します』


 ナオは、目を閉じた。


 ……終わりか。


 そう思った、その瞬間。


 違和感。


 ――来ない。


 何も起きない。


 ナオは、ゆっくり目を開ける。


 全員、立っている。


 誰も消えていない。


「……は?」


 男Aが声を上げる。


「なんで……」


『条件未達成』


 声が落ちてくる。


『排除は実行されません』


 沈黙。


 数秒。


 意味が、遅れて理解される。


 ナオは、眉をひそめた。


 ……条件未達成?


 じゃあ。


 このゲームの“本当の条件”は――


 サチが、ぽつりと呟く。


「ねえ」


 全員がそっちを見る。


「これ」


 一拍。


「“誰かを殺すゲーム”じゃないよ」


 空気が、変わる。


「“誰かを選ぶゲーム”でもない」


 ナオは目を細める。


 サチの声は、静かだった。


 でも、確信があった。


「“選ばないこと”が条件」


 沈黙。


 ナオは、ゆっくり息を吐く。


 ……なるほどな。


 だから。


 自分は、間違えた。


 “選んだ”時点で。


「……最初から、分かってたのか」


 ナオが聞く。


 サチは、少しだけ考えてから答えた。


「半分くらい」


「残りは、確信に変わった」


「お前の動きで」


 ナオは苦笑する。


「利用されたってことか」


「そうなるね」


 あっさりだ。


 ナオは視線を落とす。


 ……やられた。


 完全に。


 でも不思議と、嫌じゃない。


 むしろ――


 少しだけ、安心してる自分がいる。


 ……なんでだよ。


『第二ゲーム、終了』


『生存者、四名』


 声が響く。


 ナオは、サチを見る。


 サチも、こちらを見る。


 その目。


 やっぱり、どこかおかしい。


 知りすぎている。


 慣れすぎている。


 ナオは、小さく呟く。


「……お前、何回目だ」


 サチは、少しだけ目を細めた。


「さあ」


 一拍。


「何回だと思う?」


 ナオは、答えなかった。

 答えられなかった。


 ただひとつだけ、分かる。

 このゲーム。

 思ってるより、ずっと深い。


 そして。


 サチは――


 その“奥”を知っている。

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