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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter6 約束
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4 夕焼けの海

 ざぁっと、穏やかで力強い音が聞こえた。風に揺られた波が、今度はゆったりと浮かぶヨットをゆりかごのように優しく揺らしている。

 真っ赤な光が、海もヨットも公園の木々も、色んな色をすべて茜色に染めていく。海辺に並んで立つ、私とナオヤくんも、真っ赤に染まっていた。

「すみません。散歩に付き合ってもらって」

「いいよ。ここ……好きだし」

「僕もです」

 加地くんと弓槻さんが帰る間際、ナオヤくんは私だけ呼び止めた。一緒に行ってほしいところがある、なんてもじもじして言われたら断れるわけがない。断るつもりなんて毛頭ないけど。

 なんだか照れくさいながらも、二人で並んで歩いていった先は、あの海浜公園。

 私とナオヤくんが出会った、あの場所だ。そして時間も、出会ったあの時と同じ夕暮れ時。

 神様が用意してくれたように思ってしまった。

「綺麗ですね」

「うん」

「今日は、動画は撮らないんですか?」

 出会ったあの時撮っていた、あの自己紹介動画のことを言ってるらしい。

「今撮っても……もう必要ないし。私はもう、愛になる必要はないから」

「そうですね。でも、もう一度、撮ってみませんか?」

「え、今?」

 ナオヤくんは頷くと、自分のリスト端末を操作して、画面を調整し始めた。

「尚也は……船が好きでした」

「……うん」

「船に乗っていると、街や陸地から離れて、空と海しか見えなくなる。自分が一番、あの夕日に近くにいる気がする……そう言っていました」

「深海くんらしいね」

 確かに、深海くんは眩い存在だった。きっと誰よりも太陽に近い人だった。愛も、その眩さに惹かれていた。

「でも、僕はここから見る夕日が好きです。ここにいると、太陽が皆を照らしているのだとわかる。独り占めはできませんが、皆と共有できる……そう、感じることができるんです」

「そっか……そうだね」

 なんとなく、わかる気がした。だから私も、ここに来るのが好きだったんだ。ここなら、一人の女の子としていられたから。

 そう感じると、いつも、愛の笑顔が思い浮かぶ。

「……愛はね、星が好きだった」

「はい」

 深海くんにも、何度も星のことを話していた。深海くんが星空の写真集を持ってきてくれて、二人で眺めていたのを覚えている。

「愛は、あんまり遠出とかできなかったけど、代わりに星が動いてくれるんだって言ってた。車や電車でも行けないような遠い場所の光なのに、病院のベッドからでも見られるって」

 今の世界の空は、すべてスクリーンによる作り物。大昔に見えていた星の位置や動きを再現して映し出しているだけなんだとか。

 でも綺麗に見えるなら、むしろ作り物の方がいいかもって、愛は言っていた。

「ヒトミさんも、星が好きですか?」

 少しだけ考えて、首を横に振った。

「実は、よくわからなかった。綺麗だとは思うけど、光の粒にしか見えなくて」

「……確かに」

「私は、この夕日の方が好き」


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