16 ナオヤの身体
「尚也のことを、覚えているでしょう? とても元気で、活発で、体も丈夫だった」
「はい。なんていうか……ヒーローでした」
「でも、ナオヤは……わかっていると思うけど、病弱なの。あらゆる臓器が不全気味で、筋力も骨も弱い。それに加えて、脳に人の倍以上の負荷をかけている」
不思議に思わなかったわけじゃない。深海くんはあれだけ元気だったのに、と。別荘の管理人の時田さんも驚いていた。
だけど同時に、病弱な愛に対して頑丈な私という例もあるから、あり得ない話ではないと、無理矢理納得していた。
よく考えれば、そんなはずがないじゃないか。息子の復元を望んだおばさんが、オリジナルと同じことをするななんて言うはずがない。させないなら、何か重大な理由がある。
嫌な予感が、次々湧いてくる。聞きたくないという思いと、聞かねばという思いがせめぎ合う。
そんな中、おばさんが意を決した面持ちで、顔を上げた。
「あの子は……ナオヤは、過度な成長促進と、過激なラーニングを施された。その結果、通常の十五倍もの速度で成長した。そして今もずっと、同じ速度で成長を続けているの」
おばさんの言ったことが理解できなくて、一瞬、頭から離れていきそうになった。だけど、必死に考えた。
「同じ速度で成長……ということは……」
「他の人の十五倍ほどの速さで年を取るということよ」
十五倍……それがどれほどか想像もつかなくて、何度も瞬きとあえぎ声を繰り返していた。
他人の十五倍……それはつまり、一年で十五歳ほど年を取るということ。だからナオヤくんは今、十七歳くらいになっている。
だけどこれからは? その速度のままということは、二年経てば三十歳くらいということ? 三年経てば? 四年経てば? 十年後は……そう考えて、思考を止めた。
考えたくない。十年後には、いなくなっているだなんて。
「そんな……それって……」
「人の老化を自由に操る技術なんて存在しない。一年で人間を十六歳にするなら、遺伝子情報を操作して、寿命および老化速度を変えるしかなかった。そして一度変えたものを元に戻すことは不可能……だそうよ」
頭の中がガンガン打ち付けられているみたいだった。
昔、お父さんの会社の人が家に来て打ち合わせていた会話を聞いたことがある。ちょうど、おばさんの話した技術者の言葉と同じような物言いだった。
だけどお父さんたちが扱っているのは、あくまで玩具や機械。おばさんが聞いたのは、人間の……ナオヤくんの話のはずなのに。
「それに加えて、さっきも言ったいくつもの臓器不全の併発、筋力や骨の疾患も……あの子は、生まれながらにしてたくさんの不幸を背負ってしまった」
「でも毎日学校に来てました。放課後には寄り道までして……」
「メディカルチェックを綿密にして、医師の許可が下りているからよ。それだって、奇跡的な状態と言われたわ。いつ学校生活に耐えられなくなるか、わからないって……」




