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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter5 あなたたちとは違う
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14 夕焼けの空の下

 おばさんは、病室に顔を出すことなく、そのまま駐車場に向かった。ナオヤくんはお母さんが来ていたことを知らないままだ。

 だけど、おばさんは急いでいる風もなく、車を走らせている。

「あの、家は……」

「わかってる。さっきの道を曲がった方がいいんでしょう。場所ならわかってるから」

 やっぱり、と思った。

 あれだけ私たちに厳しい視線を向けていた人だ。きっと友人関係もきちんと調べて、把握しているんだろうと思った。

 お父さんですら、やっていたことだ。

「ごめんなさいね。親馬鹿でも卑怯でも、何でも言ってくれていいわ。ただ……今は、少しだけ話に付き合ってほしいの」

 それは、きっとナオヤくんに関することだ。私に頼む声が、最後に少し詰まっていた。

 何かの、覚悟を感じる声だった。

 私はただ、車の向かう先へと従った。おばさんも、私も、何も話そうとしなかったから、車の中は静かだった。

 気付けば、さっきのナオヤくんの顔が頭の中に浮かんでいた。

 泣きそうな顔だった。

 心配していたはずなのに、また傷つけてしまった。謝らせて、もらえるんだろうか。

 そんなことを考えていると、車は停止した。見るとおばさんはシートベルトを外している。

 慌てて同じようにして外に出ると、思わず目を瞑ってしまった。視界いっぱいの夕焼けに、瞼が焼かれそうだった。

 真っ赤な日差しを少しずつ受け入れて、目を開けると、そこは見覚えのある風景が広がっていた。大きな空と、大きな海。そしてそれらを繋ぎ止めるように、大きなヨットがいくつもゆらゆら揺れている。海の手前には広い広い自然公園。まだ、かろうじて人が行き来している。

 ナオヤくんと、出会った公園だ。

 夕焼けと、その色に染められた海を眺められる東屋に入って、どちらともなく腰掛けた。水面が、ルビーを散りばめたように輝いている中、声がした。

「昔、家族でよくここへ来たの」

 おばさんは、ぽつりと呟いた。

「夫がヨットを持っていて、ナオヤもよく乗りたがった。あの子は、やんちゃですぐ走り回って……危なっかしいったらなかった」

「……そう、でしたね」

「あなたは、尚也を知っているんだったわね」

「はい。私よりも、姉の方が仲が良かったですけど」

「愛さんね。あなたのオリジナルの……?」

「はい」

 不思議と、隠そうとか、言いたくないとか、そんなことは思わなかった。おばさんの声音があまりにも堂々としていたからだろうか。

「さっき話していたことだけど……」

「さっき?」

「あなたと愛さん、それに尚也とナオヤについて話していたでしょう」

「……え、聞いて……!?」

 病室は防音のはずなのに、廊下にいたおばさんに聞かれていたのか。

「私は母親よ。何かあった時の為に、室内の音声を聞く許可を得ているの。申し訳ないけど、さっきの会話は聞かせてもらったわ」

「え、ええぇ……あの、すみません……」

 おばさんは静かに、首を横に振った。

「こちらこそ、ごめんなさいね。要領を得ない話ばかりして」

 どうやら、本当に全部聞かれていたらしい……。なんだか恥ずかしさと、申し訳なさとで、顔を向けられない。

 おばさんもまた、私の方は見ず、海を眺めながら、告げた。


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