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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter5 あなたたちとは違う
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12 僕とあなたは違う

「愛が……私にとって?」

 ナオヤくんは静かに頷いて見せる。

 聞いていいよ、と言った手前答えないといけない。だけど、言葉が浮かばなかった。

 そんなこと、考えるまでもない。そう思って来た。だけどいざ聞かれてみると、わからない。考えてこなかったのだと、わかった。

 戸惑う私に、ナオヤくんから言葉が重ねられる。

「『姉』ですか? それとも『もう一人の自分』でしょうか?」

「……どっちでもあるし、どっちでもない……でも、じゃあ……あれ?」

 私が答えあぐねていると、唐突にナオヤくんまでが、その答えを口にした。

「僕にとって『尚也』は、完成体……いや、見本です」

「見本?」

「授業なんかで何かものを作るとき、先生が見本になる完成品を見せてくれますよね。あれと同じです」

 戸惑いながら曖昧な返事を返す私に、ナオヤくんは続けた。

「僕にとっては、いつまでたっても近づけない見本そのものです。だけど、それでも僕は投げ出してはならないんです」

「……うん」

 あの時言っていたことと、同じだ。だからそれ以上はもう言う必要はない、と押しとどめた。

「初めて会った時から、本当はそんな気はしていました。だけど先日、お父さんから連絡をもらって、確信したんです」

「……何を?」

「あなたは、愛さんにはなれない。そうする必要もない人だ。何故なら、愛さんはあなたの見本でも完成体でもない。『家族』だから」

――家族

 その一言が、急に、頭の中に刻まれた。そして一瞬のうちに、体の中を駆け巡っていく。

「家族とは、限りなく近しい別個体だ。心の底から愛して、存在を受け入れることはできても、その人自身になれるわけじゃない」

「じ、じゃあ……私はどうすれば……」

「『天宮ヒトミ』でいて、いいんです。僕と違って、あなたは愛さんの死を悲しんで、ご両親と悲しみを分かち合うことができるんです。いや、そうするべきだ」

「そんなの、今更……」

 無理だ、と言おうとした。だけど、阻まれた。ナオヤくんは私の手を握って、離さなかった。

「あなたは、あんな『実験』をする必要はなかったんだ。あれは、僕一人だけでよかった。あなたを巻き込んでしまって、すみません」

 か細い声でそう言うと、白くて細い手が、離れていった。

「あの時、あなたに怒鳴った理由は、以上です。僕こそ身勝手で申し訳ない。軽蔑されても、仕方がない」

 今にも消え入りそうな声で、ナオヤくんは言う。そんな声にいたたまれず……気付けば、私はするすると離れていく手を、もう一度掴んでいた。

「まだ、私が聞いてない」

「あの時言った言葉の理由でしょう? 今お話しした通りですが……」

「ナオヤくんが私を突き放したいってことは、わかった。でも、あの時話していたことまではわからない。どうしてあんな……悲しい生い立ちのことまで話して、離れようとしたの?」

「だから、僕とあなたは違うから……」


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