8 再現
思わず声が跳ね上がった私を、ナオヤくんは「静かに」とジェスチャーで咎めた。
「ごめんなさい。でも、それは……」
「ええ。法で認められていません」
あっさりと、言ってしまった。
クローンに関する法で厳命されているのは、クローンも一人の人間個体として扱うこと。出生の経緯、方法如何を問わず、誰かの代わりには決してしないということ。
そのための実子登録であって、それ以外の目的でのクローンの生成は一切認められていない。クローンとしての生成管理番号はついているけれど、オリジナルと同じ人権を持っている。そのはずなのに、彼は一人の人間としてじゃなく『深海尚也』として生み出された。
驚きで、何て言ったらいいかわからない。
だけど、そんな話を平然として、少しも悲しそうじゃなく、怒ってもいない……そんな目の前の『ナオヤくん』に、何よりも一番、驚きを隠せないでいる。
「表向き、尚也は死亡していません。一年以上入院し、静養のためそれまで住んでいた土地を離れ、ここに越してきたということになっています」
「うそ、でしょ……」
知り合いの死、そのクローン、更にその違法な秘密……立て続けに聞いてはいけないことを聞いてしまった。私の耳は、これ以上の情報をシャットアウトしたいと叫んでいる。だけど、ナオヤくんはそれを許してくれない。
まだ、何か言おうとしている。
「この公園には、尚也の記憶との照合のために来ました。ラーニングでは尚也の脳内チップに残っていた生前の記憶、それらと各機関に残っていた公的記録とを合わせた尚也のデータをインプットしましたが、やはり実際にこの目で見ると、データ上の情報との融合率が上がります。ここには昔、母と父と一緒に来たようでした」
「そう、なんだ……」
かろうじてとらえた言葉でなんとか情報を整理してみる。
つまり……私の知っていた深海尚也くんは事故死して、その代わりになるようにクローンのナオヤくんが生み出された。ナオヤくんは急速成長させられて、一年の間に十七歳の尚也を再現した形でここにいる。そして、その再現度を上げるために、少しでも深海くんの思い出を辿っていたところだった……ということらしい。
「なんていうか、その……」
「はい」
「努力家……だね」
それ以外の言葉が、咄嗟に思いつかなかった。変なことを言ってしまった自覚はある。波の音が幾度も流れる間に、妙な沈黙が流れていく。
そして……遂に、ナオヤくんは答えた。
「ありがとうございます」




