7 友達
そこに浮かんだ笑みは、今まで見たことがないような、悲しげな笑みだった。笑っているけど、悲しみが溢れて隠しきれない……そんな顔をしている。
「俺は今、こうして元気に楽しくやってるけどさ。この心臓の持ち主はどうだったんだろうって、考えずにいられないんだよね。事故は仕方ないにしてもさ……当然のようにオリジナルに体を渡されて、挙げ句知らない他人にまで……同じように生きてたはずなのに、その違いは何なんだろうって」
そして、そっとボタンを閉じて、まっすぐな視線を向けた。
「でも……どれだけ考えても、わからない。本人はもう、いないからさ。だから俺は、目の前にいるクローンだっていう人の力になりたいって思ったんだ。俺は人生まるごと救われたんだから、それくらい当然だろ。……って、何ができるのか、全然わかんないけどさ」
加地くんはそう言って、照れ隠しのように笑う。
笑って誤魔化すのに、その言葉の、なんて力強いんだろう。なんとなく確信めいたものを感じていた。この人はきっと、たくさんの人を勇気づけて、大勢の人を助けていくんだろうって。
今、私が胸を熱くしているように。
「だからさ……ヒトミがクローンだから、オリジナルの影だからって、自分から引っ込んじゃうのは、ダメだ。友達として、そんなことしないでほしいって……そう思う」
加地くんも弓槻さんも、まっすぐに私を見つめてくれる。二人の心からの言葉なんだと、わかる。
こうまでまっすぐに言葉を向けてくれる人が二人もいる。なんて、幸せなんだろう。二人の優しさが胸に染み渡り、全身を温かく駆け巡っていく。
同時に、同じ言葉でも両親の顔が浮かぶと、その温かさが急激に冷えていくのがわかった。
(加地くんと弓槻さんに言われると嬉しい。でも、お父さんには、言われたくない……!)
その思いだけは、どうしても拭い去ることができずにいた。




