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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter5 あなたたちとは違う
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4 ヒトミの思い出

「……え?」

 弓槻さんは、まっすぐに私の目を見て、震えながらそう言った。私が怒りを堪えるのと同じくらい、勇気を持って、言ってくれているのだとわかる。

 わかるけれど……

「どうして、お父さんの味方するの? そんな勝手なこと……二人は知らないかもしれないけど、私に影でいろって言ったのは、他でもないお父さんなんだよ? それを……」

「わかってる。お父さんの自己満足な部分がかなり大きいって思うよ。でも、ごめん……私自身が、ヒトミちゃんに日なたで前を向いて堂々と歩いてほしいって、ずっとずっと思ってたから……」

「『ずっと』って?」

 弓槻さんと出会ったのは高校に入ってから、それも二年に進級してからのはずだ。つまり、たった数ヶ月程度のはず。『ずっとずっと』というには、短い気がする。でも弓槻さんは首を横に振って、否定した。

「知ってたよ、ヒトミちゃんのこと……中学の時から」

「……え!?」

 驚きのあまり声が裏返って、道行く人が振り返った。だけどそれよりも、私がどこで弓槻さんと会っていたのか、記憶を探る方が優先だった。

 結局わからずにいると、弓槻さんはクスッと笑った。

「わかんないよね。中学の時って、めっちゃ存在感薄かったから。今も大したことはないけどさ」

「そ、そんなこと……」

「まぁ今はともかく……中学の時、私は取り柄も何もなくて、誰かに話しかけるのも苦手で、とにかく邪魔にならないことだけ目標にしてたのね。そしたらさ、なんか私と同じような人がいるなぁって、気付いたの」

「それが、私?」

 弓槻さんは、曖昧な笑みで応えた。

「成績いいし、スポーツもできるし、静かで大人しくて、でも気遣いができて……なのに誰とも友達になろうとしないし、目立とうともしない。存在感を消してるなって思った」

 それは少し、違う。消していたんじゃなくて、私には存在感なんてなかっただけ。私は『影』で、愛より前に出てはいけないから。

 ずっと、そう言われていたから。

「クールなのかなって思ってた。クラスの人よりずっと大人で、きっと周りがお子様に見えて、仲良くなんてできないんだなって……でもね、転機っていうのかな? そういうのが、来たの」

「そんな目立つこと、何かあった?」

「体育祭だよ。覚えてない?」

 私は、首をフルフルと横に振った。弓槻さんは少し寂しそうに「そうかー」と苦笑いしている。

「ヒトミちゃん、当然走るのも速かったから、自然にリレーの強化選手に入ってたじゃない? で、アンカーだったわけだけど、よりによって前の走者が転んじゃって、ヒトミちゃんのチームが最下位になってたの。だけど、なんとかバトンを繋いだらさ……ヒトミちゃん、もう速いのなんのって」


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