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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter5 あなたたちとは違う
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3 父のコール

「悪いことじゃ、ないんだよ。本当に」

「俺も、そう思う」

 弓槻さんがそう言う。つられて加地くんも、頷きながら言った。でも、それだと何かおかしい。

「……たぶん、ナオヤくんも同じだよね。でも朝コールを受けてから、ナオヤくんは何か悩んでた。最後には、あんなこと言ってた……悪いことじゃなくても、三人を悩ませるような内容?」

 弓槻さんと加地くんが顔を見合わせて、迷っている。

「できれば、教えてほしい。悩ませるようなことだったの?」

 我知らず、詰め寄っていた。できれば、なんて言ったけど、教えて欲しい。

 私に詰め寄られて、弓槻さんは観念したように肩を落とした。そして、深呼吸してから、ぽつりと呟いたのだった。

「ヒトミちゃんがクローンだって、はっきり教えてくれたんだよ」

 昔ならいざ知らず、今はパーソナルデータを開示さえしなければ、クローン生成番号の有無を知られることはない。その義務もない。

 誰がクローンであるか、知っているのは教職員と一部の生徒くらい。それでも『番号』を持っていると噂になると、途端に距離を置かれる。そんな状況だ。

 私が既に話していたとはいえ、家族が勝手に話していいようなことじゃない。

「お父さん、どうしてわざわざ……!」

「違うよ、ヒトミちゃん。ヒトミちゃんを悪く言うようなコールじゃなかった。絶対にそうだって、私は思う」

「弓槻さん……だったら、他に何を言ったの?」

「色々難しいこと言ってたけど……要約するとたぶん、これからも仲良くしてやってくれってこと……だと思う」

「……え?」

 ますますわからない。どうして、わざわざ?

 首を傾げていると、加地くんがその言を継いでくれた。

「俺たちはヒトミがクローンだって知ってたけど……ヒトミの父さんはさ、不安だったみたいだぜ」

「不安? 何が?」

「そりゃ、側にいるのがクローンだって知っても仲良くしていられる友達かどうか……じゃね?」

「……え? ちょっと待って、わからない。なんでお父さんが、そんなことを?」

「落ち着いて」

 困惑する私の手を、弓槻さんが優しく捕まえて、両手で包み込んだ。

「あのね、言われたことをできるだけ思い出したまま話すね。まず最初に、うちの娘と仲良くしてくれてありがとう……ってお礼言われた。でもすぐに、娘はクローンとして生まれた身だということは知っているかって、聞かれた。あと、お姉さんが生きてた間、どんな風にしてたのかも、言われた」

 クローンの証明を身につけないようになったことでもわかるように、やっぱり偏見を持つ人は未だにいるのだ。こんなことを、わざわざ聞いてしまうほどに。

「その後、お父さん言ってたよ。娘は影に潜むように生きてきて、それが自分の役割だと信じ切っている。だが、もう日なたに出なければいけない時なんだって」

「日なた……?」

「俺も同じこと言われた。要するに、普通に仲良しの友達同士やるよりもずっと大変だけど、ヒトミが日なたに出られるように手伝ってやってほしいって……そう言ってた」

 昨日、私に言ったことと同じだ。

 それを、わざわざ連絡先を調べて、大事な友達三人にまで言ったんだ。

「なに、それ……」

 胸の内に、また、ぐつぐつと熱い何かが煮えたぎってきた。だけど、それを留めるように、弓槻さんは私の手をきつく握った。

「私は……お父さんに、賛成」


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