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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter4 つくりものの私たち
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10 鏡

「あの……どうぞ」

 見ると、ナオヤくんが私にスプーンを差し出している。

「この項目を達成しましょう」

 項目、と聞いてはたと思い出した。そういえば『はい、あーんをする』という目的のためにここに来たんだった。

 おずおずとスプーンを受け取り、クリームとフルーツをすくう。そして、真正面に座る尚也くんに向けてずいっと突き出した。

「はい、どうぞ」

「もう少し前に出して頂けますか」

「……こう?」

「もう少し、もう少し……」

 私がスプーンを押し出すと、ナオヤくんの顔が近づく。いつも無表情だけど、何故か今はそこに冷たい感情が見えてしまった。

 深海くんが、私を邪魔だと思っていたんじゃないか。本当はこんな風に、いつでも私に冷めた視線を向けていたんじゃないか。深海くんも、愛も、そうだったんじゃないか。

 ナオヤくんの静かな目を見ていると、心臓がきゅっと締め付けられるようだった。思わず息を忘れて、気がついたらスプーンを取り落としていた。

「……大丈夫ですか?」

「だいじょう……ぶ、と思う。でも……うっ」

 息が詰まって、嗚咽になりかけた。咄嗟に口を塞ぐけれども、ナオヤくんは見逃さなかったらしい。私の顔を深く覗き込んでくる。

「僕は、また何か余計なことを言いましたか? 尚也のことでしょうか?」

「違う……私が、考えすぎなだけだから」

 ナオヤくんが言ったのは、ただの事実。何も足してないし削ってもいない、起こったありのままのことを言っただけなんだ。

 気付けば、ナオヤくんの瞬きが増えている。ああ、ほら、考え込んでしまってる。彼の思考は深海くんのために使うべきで、私のことなんかに使わなくていいのに。

 それなのに、彼はハンカチを差し出してくれる。そして、ぽつりと呟いた。

「そうか……そう、だったんですね」

「何が?」

「あなたは……いえ、何でもありません」

「なに? 気になる」

「……」

 ナオヤくんは黙り込んで、私のことをじっと見ている。時々視線を逸らし、ちょっとだけうなり声が聞こえる。また何か考えているらしい。それも言いにくいことを。

 ウェイターロボットが落としたスプーンを拾って、替えのスプーンを置いてくれた。その時に、ようやくナオヤくんは意を決したように声を発した。

「僕にできることは、ないでしょうか?」

「で、できること?」

 神妙に頷くナオヤくんは、いたって真剣そうだ。

「僕は……中身は尚也とは遠くかけ離れていますが、顔は同じです」

「だ、だから?」

「その……尚也にしてほしかったことなどがあれば僕が代わりに……」

 徐々に声がすぼんでいく。ナオヤくんにしては珍しく、端切れが悪い。必死に考えてくれたんだろうとわかる。私の気持ちに、気付いてしまったからだろう。


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