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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter4 つくりものの私たち
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4 渾身の冗談

「何故ですか?」

 間髪入れずに、そう返って来る。不思議そうな視線と共に。

「何て言うのか……息苦しそうに見えるから」

「今のところ、呼吸に支障はありません」

「そうじゃなくて! 精神的にって言うか……?」

「……『精神的に』『息苦しそう』……」

 はて、と言ってナオヤくんは考え込んでしまった。また難しい思考回路を巡らせているんだろうか。しばらく沈黙が流れた後、急にナオヤくんはこちらを向いた。

「もしや……昨日僕が言ったあなたの状況と同じだと言いたいのですか?」

「えぇと……まぁ、そうかな」

 昨日、ナオヤくんは言ってくれた。私が実験を続ける必要はないんじゃないかって。私たちにとって実験を続けるということは、オリジナルに近づくこと。だけどオリジナルに近づいて喜ぶのは自分じゃなくて、愛とヒトミを取り違えているお母さん。

 ナオヤくんたちはお母さんの態度に憤慨していた。お母さんのためだけにオリジナルを目指すなら、それで私が傷つくなら、実験なんてやめていい。そう、言ってくれた。

 だけどそれは、ナオヤくんにだって当てはまるんじゃないだろうか。

 オリジナルの深海くんとの差にあんなにも苦しむくらいなら、いっそ近づこうとしなくていいんじゃないか。そう思ったのだけど……目の前のナオヤくんは、首を横に振っていた。

「それは無理な提案です」

「無理ってことはないんじゃ……」

「いいえ、無理です。それは僕の存在意義に関わることなので。『深海尚也』ではない僕には、何の価値もない」

 尚也くんは、きっぱりと、そう言い切った。

「価値って……」

「僕のクローン管理番号はAS655112-708。下三桁をとってナオヤと呼んでくださいと、言いましたね」

「え?」

 確かにその話は覚えているけれど……なんだろう、いきなり?

「僕はこの番号で良かったと心から思っています。だって『ナオヤ』になれるのですから。そして、一〇〇番違いだったとしたら……僕は『808』の『ヤオヤ』になってしまいます」

「ぶっ!?」

 思わず噴き出してしまった。お腹の底からこみ上げてくる笑いを堪えきれなくて、くつくつ笑ってしまい、結局大声で笑ってしまった。

「アハハハハ! やめてよ、何いきなり!?」

「渾身の冗談です。笑ってもらえて良かった」

「こ、渾身て……」

 まさか、いつこのネタを言おうかとずっと抱えていたんだろうか。真面目な表情の裏でそんなことを考えていたのかと想像すると……ダメだ、また笑いが止まらなくなる。

「そんなわけで、僕は『ナオヤ』以外ではありえないのです。気遣って頂いてことには感謝しますが、それ以上の提案は無用です」

 なんだか、こじつけみたいな言葉であっさり幕引きをされてしまった。そう言われてしまうと、それ以上の追求はできない。

 更には、私の笑い声をききつけた弓槻さんが駆けつけて、何が起こったのか話すことになった。するとナオヤくんの珍しい『冗談』に話題が移って、完全にそれ以上を聞く事なんて、できなくなってしまったのだった。


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