3 やめてもいい
皆を沈ませてしまった罪悪感を抱いているんだ。そして、私が思うよりもずっと、彼は『深海尚也』を背負っている。
皆のいる前で話せることが、なかった。だから、別のことを言った。
「あ、あの……帰る前にきっちりお掃除しようね。ものすっごく汚しちゃったから……ね?」
「あらあら、お掃除なんて私がやっておきますよ」
「いえいえ、後片付けくらいやらないと。急に泊めてもらっちゃったんですし」
私がそう言って、加地くんと弓槻さんも、おずおずと頷いていた。
「お、おう……そうだな」
「一宿一飯の恩てやつだね。本で読んだよ」
「……別にお気遣い頂かなくても結構ですよ。母ももてなせと言っていたんですし……」
そう言うナオヤくんの腕を、横から小さく小突いた。
「違うでしょ。深海くんなら、こう言う時なんて言う?」
そう、小声で問うと、ナオヤくんは瞬きと共に記憶を探っていた。そして……
「そうですね。立つ鳥跡を濁さず……きっちり綺麗にして帰りましょう」
ナオヤくんのそんな言葉に、全員が頷いて、決定した。
次の行動が決まれば、皆の動きは急にきびきびし始めた。加地くんも弓槻さんもぱくぱくと残りのご飯を平らげて、お皿をシンクへと運ぶ。言い出しっぺの私が一番遅れてしまった……。
「よーし、じゃあ始めるか。俺らこのへん片付けるから、深海とヒトミはあっちの部屋担当な」
加地くんがテキパキと役割分担していく。自分たちが一番汚した部屋は自分たちで担当し、着替えなんかに使わせてもらった一部屋を私たちに任せたのだった。そっちはほとんど掃除の必要はないのだけど……ちょうどいいと思った。
「ナオヤくん、行こう」
「……はい」
私は掃除道具とナオヤくんを引っ張って、客室に向かった。
「ここは思った通り、それほど汚れていませんね」
「そうだね」
それは、なんとなくわかっていた。だから今重要なのは、きれいにすることではなく……
「あのね、聞きたい事があるんだけど」
「何ですか?」
「さっき、こんな雰囲気を変えられない僕は『尚也』ではないって、言ってたよね」
「ああ……聞こえていたんですね」
ナオヤくんは、そっと目を逸らせた。
「気にしないでください」
「聞いちゃった以上は無理。私には、そう思う気持ちもわかるから」
たぶん、ナオヤくんの気持ちを理解できるのは、私しかいないと思う。だから、言わなきゃいけない。
「ナオヤくんは、私に実験をやめてもいいって言ったけど、ナオヤくんも、じゃないの?」




