5 違和感
すると、深海くんらしきその人は、ぴくんと体を震わせた。
「そう、ですね。はい。僕は『深海ナオヤ』です」
「やっぱり……えっと、久しぶりだね」
彼は小学校でのクラスメイトだった人だ。中学に上がる前に私たち家族が引っ越したことで離ればなれになったけれど、『姉』の愛と仲良くしていたのを覚えている。明るくて、頭の回転が速くて、スポーツも得意で、男女問わず人気者だった。愛は、そんな深海くんに密かに憧れていた。よく、覚えている……。
転校してからはメッセージのやりとりすらなかった仲だけど、やっぱり知っている人だとわかって、ほんの少し安心した。だけど、緊張を和らげた私とは対照的に、目の前の深海くんは、どうしてか顔を強ばらせていた。なんというか……笑顔が、固い。
その、貼り付いたような笑みのままで、深海くんは首を傾げ、尋ねた。
「それで、僕の質問ですが……あなたは『天宮 ヒトミ』か『天宮 愛』……どちらなのでしょうか?」
やっぱり、答えないといけないんだ。少し、がっかりした。本当に深海尚也くんなら、答えなくてもいいんじゃないかって、期待した。
深海くんに気付かれないように小さくため息をこぼしてから、私は、顔を上げた。
「天宮……『ヒトミ』の方だよ。深海くん」
深海くんは、瞬き一つせずに、「そうですか」と小さく答えただけだった。
あまりにも淡泊な反応に、なんだか不安になった。
「あのぅ……深海くんだよね?」
尋ねたけれど、何故か答えはなかった。深海くんは、すんと黙り込んだまま、ピクリとも動かない動き方を忘れてしまったかのように。
もう一回声を掛けようとした、その時だった。
「照合できました。お久しぶりです。天宮ヒトミさん」
「……へ?」
恭しく右手を差し出すその人が、本当に私の知っている『深海尚也』と同一人物なのか、怪しく思えてきた。
そろりと右手をさきっちょだけ握り返すと、深海くんはあっさりと手を引っ込めた。
「あの……どうしたの? 深海くん」
「どうした、とは?」
「なんか、その……」
尋ねようと思ったけれど、いざとなると気が引けた。本人を前にして言いづらい。まるで機械みたいだ、なんて……。
「『機械みたい』ですか」




