19 ヒトミの気持ち
「私は、続けたい……というのとは違ってきてるかも」
「どういう風に?」
弓槻さんがぐぐっと顔を近づける。
「ええと……『実験』はもういいかも。でも、リストは、続けたい……です」
何とかそう言うと、加地くんと弓槻さんは飛び上がっていた。
「よっしゃ! リスト続行だ!」
「これからもよろしく! ヒトミちゃん!」
名前の呼び方を変えただけなのに、あと別に課題でも何でもないリストを実行していくだけのことなのに、二人は喜んでくれた。ちらっと視線を移すと、ナオヤくんも、静かに頷いていた。これは……二人と同じ気持ちだってことなんだろうか?
そう思うと、胸の奥に何だかよくわからない、火が灯った。たき火のように温かいのと同時に、マグマみたいに熱くうねる。急に湧き起こった熱が、胸の奥から体中を駆け巡って暴れ回っているみたいだ。
これは、いったい何なんだろう? すごく落ち着かなくて、すごく皆の手を握りたい衝動に駆られる。……とてもできないけれど。
「よし、じゃあ着替えたら、皆でここでパーティーやろうぜ!」
「ぱ、パーティー?」
「いいね、それ! 私たちの友情が芽生えて、確固たるものになった記念パーティーだ!」
「そ、そんなことでするの?」
「するよ。大事なことじゃん」
「いや、でも……」
会場主になるナオヤくんやご家族に何の許可もなしに言っていいんだろうか。そう思っていると、ナオヤくんがリスト端末からお母さんにコールしているのが見えた。
「あ、母さんですか? さっき言った友人たちと、明日までこの家に滞在してもいいですか?……ええ、はい。わかりました。ありがとうございます」
もう許可取りが終わってる……! 仕事が早すぎてついていけない……。
ナオヤくんの電話を聞いていたらしい二人は、通話が終わると同時にあれこれ予定を立て始めている。
「よしよし。じゃあお菓子を調達しないとね。もちろん夕飯は別腹で……」
「母に頼んで、見繕ってもらいましょうか?」
「ありがてぇ! でも自分たちで選びたいよな。食べものと飲みものと、あと何かゲームも」
「わかりました。ではもうすぐ管理人が来るので、車を出してもらいましょう」
本当に、加地くんと弓槻さんの勢いが凄い。いつも愛の影にいた私は、何を言ったらいいのかすらわからない。
おたおたしていると、今度はゲート認証があったと通知が入った。ナオヤくんの言っていた管理人さんらしい。
「よし! 一気にリストの項目、実行できるぞ」
「ついでに、また書き足そうよ」
そう、楽しそうに話しては、その度に嬉しそうに笑いかけてくれる二人。
さっき胸の中で渦巻いていた業火のような熱は、まだ冷めやらない。だけど、不思議とこの焼かれそうな熱さが、今は心地良いって思うのだった。




