13 訪問者
彼がケンカの仲裁をした後みたいな、朗らかな空気が辺りを取り巻いている。
凄い。やっぱり、ナオヤくんは深海くんと同じだ。わざわざ、近づく必要なんてないんじゃないか。
今度、二人だけで話せる機会があったら、そう伝えよう。
「……何ですか?」
「ううん、何でもない」
妙にめざといところも、実は深海くんと同じだと言ってあげよう。
そう思ってニヤニヤしてしまっていた私を、ナオヤくんは怪訝な顔で見つめた。そして何か追求しようとしたのだろう、その時――
――未登録ノ訪問者ガイマス。未登録ノ訪問者ガイマス。
そう、アラートの声が鳴った。
予定外の訪問者が数分ゲートの前に立っていると、こうしてアラートが鳴る。
「……管理人でしょうか?」
でも管理人ならセキュリティ登録されているので、指紋認証できるはず。
首を傾げながらナオヤくんがゲート前のカメラをモニターに映し出した。すると、そこに映っていたのは……
「お母さん……!?」
私の……愛の、お母さんだった。
「あのぅ……こちら、どなたのお家ですか?」
ナオヤくんが中からゲートを開けて、お母さんをエントランスに迎え入れてくれた。そのナオヤくんに向けて放った第一声が、これだ。訪ねてきておいて、それはないだろう。
普段表情を変えることのないナオヤくんが、戸惑っているのがわかった。加地くんも弓槻さんも、驚きを隠せないようだった。
「お母さん……何でここまで?」
私が顔を出すと、お母さんはぱっと顔を綻ばせて、ぎゅっと抱きしめてきた。
「ああ、愛! 良かった、無事だったのねぇ」
「……え?」
その声は、後ろにいた加地くんたちから漏れたものだった。
言葉のどこに対して疑問を持ったのか、明らかだ。だけどお母さんを前にして、否定するわけにはいかなかった。
「海浜公園に行くって言ってたのに、すぐに公園を出ちゃって、どなたかのお宅に入っていくじゃない? いったい何があったのかと思って心配で……」
「ちょっと待って、お母さん。私がどこに行ったとか、知ってるの?」
「当たり前でしょ」
そう言うと、お母さんは自分のリスト端末から地図を呼び出した。誰かの私有地である場所に『Ai Amamiya』の文字とポインターが浮かんでいる。
私のリスト端末の居場所を特定できるGPS……位置追跡機能による表示だ。
「お母さん……私の位置を追跡してたの?」
「ごめんね。でも、いつ何があるか、わからないから」
「でも、これは……」
このGPSは、愛に対してつけていたものだ。その証拠に、ポインターの名前表記が愛のものになっている。
今、私が身につけているのは私……ヒトミの端末であるはずだ。
それなのに、どうして私の位置情報が愛のものとして追跡されていたんだろう。




