表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter3 『愛』と『ヒトミ』
42/114

12 面影

 四人でリビングに戻ったものの、さっきの話の続きを改めて始めるのは気恥ずかしくて、誰も何も言えずにいた。

 コーヒーをすする音だけが、リビングに響く。これを飲み終えると、きっとナオヤくんはおかわりを淹れに行く。すると今の均衡が崩れてしまう。

 なんとか、その前に何か話し始めないと……!

「……先ほどの話ですが」

 口火を切ったのは、なんとナオヤくん。しかも、一番気にしている話題だ。

「さ、先ほどの話って何だよ?」

「天宮さんと普通に友達でいる……と言っていた件です」

「深海くんも聞いてたの?」

「お二人は声が大きいので」

 それもあるけれど、ナオヤくんの気配が薄すぎるのも原因の一つだとは思う。

 そして動揺する空気を切り裂くように、ナオヤくんは続けた。

「お二人は、天宮さんがクローンか否か関係なく友達でいると、そういうことですよね?」

「え、あぁ……うん」

 こうもはっきり言われてしまうと、肯定してもらってるのにお互い目を合わせられなくなる……。不思議な空気だ。

「そこに、僕は含まれるでしょうか?」

「……へ?」

 目を逸らせていた私を含む三人が、全員、一斉にナオヤくんを見た。自分が不思議なことを言った自覚がないらしいナオヤくんは、まじまじと三人を見つめ返している。

「えーと……当たり前っていうか……」

「深海くんのことは、話題に上がってなかったから、言うまでもなかったっていうか?」

 と言うより、どうして今までの話で、自分だけのけ者にされると思ったんだろう。

「そうですか。ありがとうございます。これからも、どうぞよろしくお願いします」

「こ、こちらこそ」

 加地くんと弓槻さんが、きょとんとしながら恭しく頭を下げた。何でお辞儀をしているのか、よくわかっていないみたいだ。

 私も、よくわからない。

「何でいちいちそんなこと聞くんだ?」

「……先ほどの会話の中で、僕の名前が挙がっていませんでしたので」

 その声には、なんだか拗ねたような響きが紛れている気がした。

「のけ者にするんだったら、むしろ『深海くんは違う』って言うよ。当然、含まれてるから言う必要がなかったって言うか……」

「そうなのですか」

「そうなの」

 加地くんと弓槻さんにきっぱりと言われて、ナオヤくんは戸惑っていた。その様子を見ていると、困惑していた空気がほわんと和らいで、自然と、笑みが浮かんだ。

「僕は、何かおかしなことをしましたか?」

「したよ。めっちゃした」

「深海くん、見かけによらず寂しがりなんだね」

 軽い笑い声は、やがて大きな笑い声に変わっていく。

 ナオヤくんは二人に両側から肩を組まれて、真ん中で縮こまっている。

 それを見て思った。ああ、この人は凄いって。

 あんなに声にも表情にも抑揚がないのに、それでもこんなにも人の心を動かすことができるんだ。

 ケンカしていたわけじゃないとはいえ、あんなに固まっていた加地くんと弓槻さんを、ほんの少しの言葉で笑わせてしまった。

 まるで、あの人みたいだ。

「……深海くん……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ