11 友達続行
その声は、何故か胸の奥の奥の、更に奥にまで、響いてきた。
「そっか……そうだな。変に気遣うとかより、普通に友達でいる方がいいんだよな」
加地くんの声も、まるで砂漠の砂に水が落ちていくように、すぅっと、どこまでもどこまでも、染み入る。
どうしよう、何か言いたいけれど、何も言葉が出ない。それどころか、声も出ない。怖いわけでも苦しいわけでもないのに、胸に何かが詰まって、どうしたらいいかわからない。
「決まり。友達続行!……まぁ本人に言ったわけじゃないけどな」
「本人はあくまで今まで通りなんだろうけどね」
そんなことない。立ち聞きしてしまったからではあるけど、私こそ、これからどう接すればいいかわからなくなってしまった。
だけど一つ、胸の奥がじんじんと熱くなることがあった。二人は私を『クローン』と言ってくれる。『ナンバーズ』じゃなく『クローン』と。
他の人にとっては取るに足らないことかもしれないけれど、私にとっては違う。涙が出そうな程、嬉しいことだ。
どうしよう……普通に友達って、どうやればいいんだっけ?
そう思って、一人あれこれ頭を抱えていると……
「何をしてるんですか?」
「ひゃああああ!」
背後から急に声が聞こえてきた!
振り返ると、ほんの少し目を瞬かせているナオヤくんだった。手にはコーヒーカップの載ったお盆を持っている。
「いつまでも戻ってこないので、全員分のコーヒーを淹れてきました。リビングに入らないんですか?」
「え、いや……」
心臓が、跳ね上がって飛び出すかと思った。まだ大きな音がしている。
懸命にそれを抑えようとしていると……
「あ! 天宮さんに深海!」
「え、うそ! 今の聞いちゃった?」
ああ、気付かれてしまった……。せっかく隠れてたのに。
今更口を塞いでしゃがみ込む私のもとへ、加地くんと弓槻さんがバタバタと駆けてくる。ダンゴムシみたいになった姿を、見られてしまった。
二人は二人で、聞かれていたとわかった気恥ずかしさか、何も言えずにじっとしていた。
そんな私たちを交互に見て、ナオヤくんはしばし考え込んで……
「もしや、僕は今、空気を読まない行いをしたのでしょうか?」
誰もがふるふると首を横に振るけれど、それ以上は言えなかった。
ナオヤくんは何かを察したようで、持っていたお盆を私に預けると、踵を返した。
「砂糖とミルクをとってきます。どうぞ続きをお話してください」
「待て待て待て! ここで三人に戻すなよ」
「かえって気まずいよ! もう全員ブラックでいいから、皆でお話ししよう! ね!」
結局、キッチンに戻ろうとするナオヤくんを引きずって連れて、四人でリビングに戻ったのだった。




