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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter3 『愛』と『ヒトミ』
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10 クローンと人間

 クローンもオリジナルも、同じ人間だ。見た目に何の差があるわけでもない。

 昔は遺伝的欠陥が多かったりと問題もあったそうだけど、今は、オリジナルの遺伝情報を九〇%以上の精度で再現できるほどになっている。

 だけど、やっぱり時々こんなことを聞く人はいる。

 勝手な印象だけれど、加地くんも、そうだったと思うと、少しショックだ。

「ていうか、もしそうだったら何? 友達やめんの? 実験も?」

「どっちもやめないって。別にクローンだから悪いって言ってるんじゃなくて……」

 弓槻さんは、なんだか庇ってくれている。それに加地くんも、差別的発言だったんじゃないみたいだ。だけど……聞いていてもいいんだろうか?

 そう思っているけど、下手に動けず、会話はどんどん進んでいく。

「逆で……クローンだって奴、何人か見たことあるけど、なんか普通と違うっていうか?」

「……どう違うと思うの?」

「言いたくないけどさ、なんか……オリジナルの手下とか下僕とか……そんな扱いされてる奴らが多かった」

 胸の奥が、思い切り熱くなった。ナイフで切り裂かれた痛みのように。

「ちゃんと実子登録されてるから、兄弟って扱いのはずなのにさ。対等なはずなのに、オリジナルもクローンもないはずなのに……見てると、なんとなくどっちがオリジナルでどっちがクローンなのか、わかるんだよ」

 それは、まさしく愛と私の関係だ。

 私たちは『姉と妹』として登録された主従関係にあった。愛はそんなことは思っていなかっただろうけど、周囲の大人たちはそう思っていた。

『お前は愛のために作られたんだから、愛のために尽くせ』

 面と向かって、そう言われたこともある。そう言った親類に父は怒ってくれた。だけどあの時、私は自分の『身の程』を知ったのだった。

「それ……なんとなく、わかる」

 弓槻さんの声は、さっきまでの加地くんに対する苛立ちとはまた違う、憤りに近い空気を含んでいた。

「なんで、あんな感じなんだろうね。だって、私たちと同じじゃん」

「天宮さん、一人でいるだろ。オリジナルはどうしてんだろな? 天宮さんとこは仲良くやれてるってことかな?」

「……どうかな」

 今度は弓槻さんの声が、なんだか沈んでしまった。なんとなく、心が痛む。私のことであって、弓槻さんや加地くんが悩む必要なんてないのに。

 そう、言おうかと思った。だけどそれより前に、弓槻さんの強い声がした。

「でもさ、天宮さんは少なくとも学校ではオリジナルの人と一緒じゃないじゃん。だったら、学校ではそういうの関係ないんじゃない? 誰かのクローンとか、そんな肩書きのつかない普通の高校生ってことだよね。私たちがそう接してれば、つまりはそうなるってことだよね」


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