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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter3 『愛』と『ヒトミ』
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9 傷跡

 私のいる場所からは見えないけれど、弓槻さんは加地くんの胸のあたりを指していた。

「え? ああ、これ? 手術の痕。昔、ちょっと病気して、臓器移植してもらったんだ」

 私も、思わず息を呑んだ。医療技術が進んだといっても、臓器を入れ替えるなんてただ事じゃない。だけど加地くんは、いつも教室で話す時と同じように、笑っている。

「……聞いていいか、わかんないけど……クローン? ドナー?」

「ドナー。クローン生めるほど金持ちじゃないし。多少リスクがある他人の臓器でも、やらないよりはマシってことで……さ」

「そ、そっか……今はもう……いいの?」

「おう。移植しておらったおかげで、この通り!」

 そんな、元気いっぱいな声がした。思わずこっちまで笑顔になってしまう声だけど……次に聞こえたのは、どこか沈んだ声だった。 

「なぁ、天宮さんについて、何か知ってる?」

 加地くんが、弓槻さんにそう尋ねている。弓槻さん方は首を傾げていた。

「なに、突然?」

「いや、ごめん。何でもない」

 二人は私に背を向ける形でソファに座っている。私が近くにいるとは気付いていないみたいだ。だけど、加地くんの声音は、なんだか神妙で、重かった。

「なになに? コイバナ? もしかして加地やんて、天宮さんのこと……」

 弓槻さんの声が、ふわふわ軽やかで、ニヤついているのがわかる。だけど加地くんの方は、到底同じ雰囲気とは言えない。

「まぁ……気にはなってる」

 そんな重い空気を察したのか、弓槻さんはため息で答えていた。

「何? なんかひっかかってることでもあるの?」

「ひっかかってるって、いうか……その……」

 加地くんが、珍しく口ごもっている。何だろう。私、そんなに困らせるようなことをしていたんだろうか。

 少し苛立っている風の弓槻さんと違い、自分が何をしたのかっていう心配を抱えて、加地くんの言葉を待っていた。

 たっぷり呼吸をしてから、加地くんはおずおずと、話した

「あの子、さ……クローンだよな?」

「クローンかどうかなんて、知るわけないじゃん。本人に聞いてみたら? まぁ……直接聞くのはけっこう無神経だけど」

「そうだよな、やっぱ」


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