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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter3 『愛』と『ヒトミ』
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8 深海家の別荘

 ナオヤくんが『僕の家』と言ったのは、正確には別荘だった。

 有名な別荘地で、普通の住宅地のお家よりも大きな別荘が並ぶ中、ひときわ大きな建物を前にして、ナオヤくん以外の三人は唖然としていた。

「なぁ……深海の親って……」

「ホテル・外食業を営んでいます。チェーン展開もいくつかしていたかと……」

「なるほど」

 こともなげに言うナオヤくんを見て、弓槻さんがぽつりと呟く。

「深海くんがちょっと浮世離れしてる理由がわかったかも……」

 その発想は少しズレているのだけど……まったくの見当違いでもない気がした。

 茫然とみている私たちを置いて、ナオヤくんは認証を済ませてゲートを開けた。

「どうぞ。今日は誰もいないので、もてなしはできませんが……」

 さらりとそう言う。私たちはおどおどしながら、門をくぐった。

 普段は週に何度か人が来てハウスキーピングをしてくれているらしい。一年ほど来ていないと言っていたのに、家の中は掃除が行き届いてピカピカだった。

 私たちをリビングに案内すると、ナオヤくんはどこかへ消えたかと思うと、すぐにタオルを持って戻って来た。

「どうぞ。あと、管理人に連絡を入れました。全員の着替えを持ってきてくれるそうです。ここにはそういった用意がないので」

「ありがとうな。その……家の人には、言ったのか?」

 加地くんは、あのお母さんのことを想像したらしい。電話越しでも怒られると思ったのか、ビクビクしている。

 だけど、予想に反してナオヤくんはサラッと答えた。

「もちろん。そのままゆっくりもてなすようにと言われました。管理人に連絡を入れてくれたのも母です」

「そ、そう……なんだ」

「はい。とりあえず、何か飲み物を入れてきます」

「私、手伝うよ」

 私がタオルを置いてそう言うと、ナオヤくんは少し悩んだ末に、「お願いします」と言った。

 ナオヤくんについてキッチンに入ると、それはそれは大きな冷蔵庫とパントリーが目に入った。一年以上来ていないというのに、中身はぎっしり詰まっている。きっと、いつ来てもいいようにとしっかり管理されているんだろう。

 だけど棚を眺めて、そこで止まってしまった。

「コーヒーがいいんでしょうか。紅茶がいいんでしょうか。それとも緑茶? いやホットミルク……」

「聞いてくるよ」

「ではまず、コーヒーを淹れておきます」

 そう言って棚からコーヒーとマシンを引っ張り出したのを見て、私はリビングに戻った。二人は、まだタオルで体をゴシゴシしていた。もの凄い雨量だったから、拭いても拭いても足りないんだろう。

 加地くんなんてきていたシャツを脱いでしまっていた。それについてもの申す弓槻さんの声が聞こえてくる。

「ちょっと、レディーの前で半裸とかやめてよ」

「いいだろ別に。着てたら拭いたって意味ないんだし。ビーチにいたら、どのみちこうなってたんだしさ」

「それもそう……かな? なんか納得いかないけど」

 気付けばケタケタ笑っている。なんだか仲良し……というか、雨に濡れた子犬同士がじゃれ合っているみたいだ。

 だけど突然、弓槻さんの声音が変わった。なにかに気付いたように、はっと息を呑んでいる。

「加地やん……それ、どうしたの?」


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