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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter3 『愛』と『ヒトミ』
33/114

3 楽しいこと

 そう思わずぽろっとこぼしてしまった。加地くんも弓槻さんも、きょとんとして目を見合わせている。

「あ、いやその……」

「楽しいって……なんかこう、やってたら気分が良くなって、ふわふわして、もっと続けたいって思ったり……そういうことじゃねえの?」

「うん。凄いときは徹夜もできちゃう……とか」

「もっと続けたい……」

 ますますわからない。今までに、そう思ったことが何かあったっけ?

 はたと、手元に広げたリストを見つめてみる。

 このリストを、一つ達成して、マーカーで塗りつぶした、あの瞬間を思い出した。

「このリスト……やってくの、続けたい……かな」

「え、いいの? それで?」

「ダメ……かな」

「ダメじゃない、全然ダメじゃない。もっとやろう!」

 弓槻さんが嬉しそうに言ってくれる。自分だけじゃないとわかって、ちょっとホッとした。

「ま、続けてるうちにもっと楽しいこと見つかるかもしれないしな。じゃあ目的もハッキリしてるし、コレがサークル活動ってことでいいんじゃね?」

「コレって?」

 加地くんも弓槻さんも、ニヤリと笑って、リストを指さした。

「『青春実験サークル』……どうよ?」

 二人の会話についていけず、何度も瞬きした。

 要は、この実験リストを試していくのがサークル扱いで、二人ともそれに付き合ってくれるっていうこと?

「え、でも……二人とも、忙しいんじゃ……」

「サークルのかけもちはよくあるし」

「じゃあ、リストに追加しといてくれよ。うちの店の手伝いとか、バイトとか」

「それ、めちゃくちゃ作為的……」

「バレた?」

 楽しげに、話は進んでいく。私は、二人の会話を止められない。止めたいと思っていない。

「い、いいの……?」

 しつこいようでも、尋ねてしまう。そんな私に、二人とも特大の笑みを浮かべて、大きく力強く、頷いてくれた。

 私は「ありがとう」と小さく返すので、精一杯だった。胸の中が熱くて、風船が一気に膨らむような……そんな思いが溢れていた。

「じゃあさ、そのリスト、私たちも共有していい?」

「たぶん、いいと思う」

 発起人のナオヤくんの意見を聞いていないけれど、きっと許してくれるだろう。昨日、あの時までは楽しそうだったから。

 ファイルの編集権限に加地くんと弓槻さんを加えると、早速二人ともファイルを開いた。

 三人が並んで同じファイルを開いているのは、なんだかおかしな光景だ。だけど、嬉しかった。

 そして私がニヤニヤするのをなんとかこらえていると、弓槻さんがリストをしげしげと見て、さっきの『サークル活動をする』に線を引いていた。

 もう、そういうことで、いいんだ。

 続いて加地くんまでが、何やらマーカーを引いていた。

「え、何かやったっけ?」

「やったっていうか……これはもうできてるかなって」

 そう言って加地くんが指さしたのは……

『友達をつくる』……ナオヤくんが足した項目だ。

 また、目を瞬かせて加地くんを見返し、弓槻さんのことも見た。二人とも、ニコッと笑って、ただただ私を見つめている。

「えっと……つまり……そういうこと?」

「違う?」

「ち、違わない……と思う」

 そうか、これが『友達』なんだ。いつの間にか、そうなってる。それが嬉しい。

 そう思えるのが『友達』なんだ。


『実験』を始めてから、私は驚いてばかりのような気がする。

 ふいに、それを始めたあの人に、そう伝えたくなった。


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