3 天宮ヒトミ
『ナンバーズ』……『番号持ち』とも言われるその言葉は、公にはあまり言われることがない。いったい何の番号なのか? それは『生成番号』のこと。
世界が大変革して、すべてがシェルターに収められた頃から、人類はその数を減らしていった。人口激減の危機に瀕した人類は、地球に現存する生命を守るため、様々な種子やDNAを保管しておく施設を各所に設置した。
そこには、希少種の種子や遺伝子のみならず、希望した人間の体細胞サンプルまでも寄せられるようになる。事故や病気で四肢切断、もしくは臓器移植等が必要になった際の再生手術に利用するためだ。
現在は研究機関も併設され、『生命の牧場』とまで呼ばれるようになる。その研究機関が、クローン事業を打ち立てたからだった。
『クローン』とは同じ遺伝情報を持つ生物集団をそう呼ぶ。生物個体のコピーと認識されていることが多い。正確には違うのだけれど。人道的、生物学的観点から、法律上はながらく生成を認められてこなかった。
だけどクローン技術の進化と人口の減少をくい止める目的を鑑みて、各国政府はそれまでのクローン技術に関する法を一斉に改定し、ヒトのクローン生成を許可した。
現在は子どもが1人以下の家庭においては、2人までクローンを生成し、実子として養育することが認められている。
だけど生成されたという事実は生涯残る。パーソナルデータにしっかりと番号が記載されるのだから。当然、その番号は、普通の人間には付与されない。
『ナンバーズ』という呼び名は、そういった環境でひそかに生まれたものだった。
普通の人とは違う『生成番号』を付与された存在……というわけだ。
先生たちだって、表だっては言わない分別はある。それでも、ああして呼ばれてしまうと、抉られたように胸が痛む。
そんな時はいつも、夕日を見る。
学校と家の中間地点にある海浜公園は、絶景の夕焼けスポットだった。
四月一〇日、午後五時十五分。空は朱色と山吹色を混ぜ合わせたような色を描き出している。今日の日の入りは午後六時。そう決まっている。決まった時刻に向けて空も色を徐々に変えていくように設定されている。
ちょうど、こんな色合いになるのを待っていた。
空の茜色と海の深い青が交わる曖昧な色。まるでパレットの上のような光景だ。二つの色を背景にして、私は腕につけたリスト端末からカメラを起動させ、構える。
手首の小さなカメラに向けて微笑み、自分の顔が真ん中に映っていることを確認したら、そっと録画のボタンをタップする。すると、まるで時間が止まったみたいに、何も聞こえなくなる。
「私は……私は『天宮 ヒトミ』。高校二年生になりました。好きな食べ物は担々麺とショートケーキ。趣味は……とくにありません。得意教科は体育と現代文。将来の夢は……えっと……」
そこまで話して、止まってしまった。だって、本当にわからないから。




