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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter2 『実験』の始まり
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16 グラブジャムン

 あと残るは……ケーキの皿たちの中央に鎮座していたもの……そう、グラブジャムンだ。

 そこには四人分の楊枝が刺さっていて、いつでも手を伸ばしていい状態になっている。だけど、誰も手を伸ばそうとしない。いざとなって、怖じ気づいているらしい。私もだけど。

「ここは、レディーファーストで」

 加地くんが、しれっと私たちに皿を差し出した。

「加地やん、それはズルいでしょ」

 呆れたように言う弓槻さんに同調して、私もぶんぶん首を縦に振った。 

「いや弓槻がノリノリで食べたそうだったし。甘いものは女の子の方が好きなこと多いだろ」

「尚也……僕は、甘いものも好んで食べていたようですが……」

 ナオヤくんが加地くんに言ったことで、加地くんは劣勢になったのだった。

 そういえば深海くんはよくアイスとかシュークリームとかの甘いお菓子を食べていた気がする。そうだ、だから愛がよくお菓子を作っていた。私も、よくそれに付き合わされたんだった。

「あの、譲り合いをしていても埒が明きません。今日は実験のために来たので、四人同時に食べるのが最適かと思いますが、どうですか?」

 加地くんも弓槻さんも、そして私も、その一言に否を唱えられるはずもない。三人で目を見合わせて、三人同時に小さく頷いた。

 そしてそれぞれが楊枝にグラブジャムンを一つずつ刺して、持ち上げる。さっきまで浸かっていたシロップがしたたり落ちそうになる。

 小皿で受けたりしながら、互いに視線を交わし、ナオヤくんの合図を待った。

「では、いきます……三、二、一、〇」

 カウントがゼロになると同時に、私たちは、世界一甘いボールをぱくんと口に放り込んだ。

「……むぐ!?」

 甘さが、口いっぱいに広がって、混乱する。加地くんも弓槻さんも、動揺して言葉をなくしている。

 口の中は、とにかく甘みに支配されていた。

 とんでもなく甘く作ったドーナツを、これ以上ないくらい甘く作ったシロップにつけ込んで、包み込んで、浸透させたもの。それが圧倒的甘さの正体……らしい。

 正確に言うと、甘みを作り出す調味料は当時と同じものは手に入らず、今では化学調味料がほとんど。砂糖より甘い砂糖が主流……と言った方がいいだろうか。

 まぁ、つまりは……同じ材料で作っていても、昔より格段に、劇的に、ものすごく、甘みが増している。

 人類が、その限界に挑んだ甘さに耐えられるほど進化したかと言うと……現状の通り。

 四人中三人が悶え苦しむという結果に終わっている。

「な、何コレ……甘いなんてもんじゃないんだけど」

「水飲んだら、飲んだだけ砂糖水に変わってく感じがする」

「つ……疲れてる時なら、なんとか……いや無理」

 口々に感想を言う。心なしか、加地くんも弓槻さんも私も、顔色が悪くなっていた。甘いもので青ざめることがあるなんて、知らなかった。

 そんな中、顔色が一切変わっていない人がいた。言わずもがな、ナオヤくんだ。


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