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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter2 『実験』の始まり
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15 パティスリー『アリス』

 パティスリー『アリス』は学校近くの大きな通りにあった。他の店の二倍くらいの広さと間口で、その広さに見合うほど、お客さんがたくさん来ていた。その様子に少したじろいでしまった。

「ここって世界の色々なスイーツがあって『スイーツ万国博覧会』なんて呼ばれてるのは知ってたけど……」

「なんか、予想以上だな……」

 弓槻さんと加地くんが怯むのも当然だ。店に着くと、まず取り揃えているスイーツの豊富さに驚いた。普通のパティスリーのざっと五倍はある。その分、どれも一口サイズだ。

 そして迷わず「すべて一つずつください」と言ってのけるナオヤくんにもっと驚いたのは、言うまでもない。

 店員さんまで驚いていたけれど、数分後にはすべて取り揃えてくれた。私たちの席には、店で並ぶすべてのスイーツが……つまり、万国のお菓子が集まっていた。

 お菓子だけど、ここに世界が並んでいると思うと、なんだか恐れ多く思ってしまう。

 そんな中でも、特別『スイート』なお菓子が、存在感を放っていた。

「えーと……これ、『グラブジャムン』だっけ?」

 弓槻さんが指さしたそれは、ひときわ甘そうだった。香りから、甘さを主張している。

 ナオヤくんが自分の端末で手早く調べてくれる。

「『グラブジャムン』……二十一世紀では世界で一番甘いと言われてきた、アジア圏インドのお菓子。濃縮した牛乳と小麦粉を混ぜて油で揚げ、大量の砂糖とローズウォーター、カルダモンなどのスパイスで味付けされたシュガーシロップに漬けて作られると聞いたことがある……と書かれています」

「その文章だけで、ものすごく甘そうだね」

 それが今、他のスイーツがずらりと並ぶ中でも特に異彩を放って置かれている。小さな果実のような、一口大のボールのような形のお菓子で、たっぷりとシロップに浸かって、全体的にしっとりしている。

 そして何もしていなくても、『私は甘いです』と主張する香りがする。

「みなさん、食べないんですか?」

 ナオヤくんがフォークを握っている。早く食べたいようだ。

 私たちもフォークを手に取ると、ナオヤくんは早速、色とりどりのスイーツを一つをぱくっと食べた。

「うん、美味しいです」

 私たちは視線を交わし、各々フォークを伸ばした。食べてみると、皆、思わず同じ言葉が飛び出す。

「美味しい!」

 一度味わったら、もう泊まらない。

 なかば競争になっていたかもしれない。ナオヤくん含め、私たちは小さなケーキを奪い合って食べる。それを繰り返していくうち、大きな皿から小さなケーキは姿を消した。一つ残らず。いや、一つだけを残して。


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